ゴム動力模型飛行機掲示板


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輪ゴムを使ったゴム動力飛行機の3次元運動解析の結果の紹介
滝 敏美 投稿日:2023年01月23日 11:46 No.178
輪ゴムを使ったゴム動力飛行機の3次元運動解析を試行した結果を紹介します.
この解析はゴム動力飛行機の調整のしかたを検討するために行っているものです.

機体の写真を添付します.

機体の諸元は以下のとおりです.
全備重量 12.8g
プロペラ直径 170mm(解析で最適な値)
ゴムのフック間距離 200mm
主翼
・翼幅 400mm
・翼端上反角 20度
・翼面積 29100mm^2
・アスペクト比 5.50
・平均空力翼弦 73mm
・翼型 6%キャンバー折り曲げ翼
水平尾翼
・翼幅 160mm
・翼面積 8400mm^2

機体の角度を添付します.
主翼の取付角が異なる2種類のモデルを考えました.主翼の取付角によってサイドスラストとラダー舵角調整が変わります.

ゴムのトルク曲線を添付します.計測データを近似式で表したものです.


滝 敏美 投稿日:2023年01月23日 11:59 No.179
■ 3次元解析の方法について
機体の空力微係数は渦格子法AVLを使って計算しました.
全機の最大揚力係数を1.1と仮定しました.
機体の慣性データはMS-Excelを使って計算しました.重量,重心位置は実測値とよく合いました.
プロペラの特性はLarrabeeの方法を使って計算しました.
プロペラのパワー効果を考慮しています.Ribnerの式を使いました.
プロペラのジャイロ効果は考慮していません.
プロペラによる偏流の効果は考慮していません.
実験による解析方法の検証はまだ行っていませんので,この解析が本当に正しいかどうかはまだわかりません.今後検証を行っていく予定です.


■ 3次元運動解析の結果

輪ゴム4条(16本)を使い,平均破断巻き数の約90%である468回まで巻き,巻き戻す場合を解析しました.
比較のために,TAN Super Sportの3.2mm幅を使った場合も解析しました.平均破断巻き数の約80%である675回まで巻き,巻き戻す場合も解析しました.

解析結果のまとめを表にしました.

解析結果の例を添付します.

解析結果からわかることは次の投稿に書きます.


滝 敏美 投稿日:2023年01月23日 15:18 No.180
■ 3次元運動解析の結果(その2)
ゴム動力機の上昇調整の変数は,
①プロペラの直径,ピッチ比
②ゴムの断面積
③ゴムの巻き数
④ダウンスラスト角
⑤サイドスラスト角
⑥ラダー舵角
と多いので,調整は非常に難しいと言えます.
調整を簡単にするには,なるべく調整するパラメータを減らしたいところです.

前の投稿ではダウンスラストをゼロとして良い上昇をする条件を選びましたが,今回は大きなダウンスラストをつけてもよいとし,ダウンスラストを固定します.サイドスラストはゼロで固定します.調整できるのはラダー舵角です.
解析結果を添付の表に示します.


滝 敏美 投稿日:2023年01月23日 15:55 No.181
■ 3次元運動解析の結果(その3)
ダウンスラスト3度,サイドスラスト0度として解析した結果を示します.
468回巻きでは安定な上昇をしません.
430回に巻き戻す場合はきれいな上昇をして,高度もとれます(28.45m).

なお,ダウンスラスト角の定義は,プロペラの中心と機体重心を結んだ線を基準にしています.
最初の投稿の2番目の図(機体の角度)をご覧ください.


滝 敏美 投稿日:2023年01月24日 11:00 No.182
■ 解析結果からわかること
(1)巻き戻しの効果
巻き戻しをすることにより,発進初期の高トルクの悪影響を回避することができる.獲得高度の低下はあまり大きくない.
(2)ダウンスラスト
ダウンスラストは,プロペラ軸が機体重心を通る角度を基準(0度)とし,ダウンスラスト0度として調整すればよさそうである.

(3)主翼の取付角の影響
主翼取付角によって,調整が変わる.
プロペラに流入する気流の角度が,主翼取付角によって異なるため,パワー効果が異なるからである.

(4)調整方法について
これまでに行った多くの解析結果から,次のことがわかった.
ダウンスラストを0度~4度くらいまでにし,小さいサイドスラスト角を決めると,良い上昇パターンになるラダー舵角がある.
このことを利用すると,やりやすい調整方法として次のような案があるんではないか?
・ダウンスラストは0度強にセットする.
・サイドスラストは0度程度にセットする.(サイドスラストの設定についてはもう少し検討が必要)
・巻き戻しを利用して,過大なトルクを避ける.
・ラダー舵角を変え,良い上昇パターンになるように調整する.ガーニーフラップを使えば調整しやすい.

JASCO Flash X-12の説明書(添付)では,ラダーで調整すると書いてあるので,これに通じるのではないでしょうか.


滝 敏美 投稿日:2023年01月25日 11:11 No.183
■ 3次元解析の結果(その4)
モデル2を使って解析した詳細を表にまとめました.
ダウンスラストをゼロにして,サイドスラストとラダー舵角を変化させました.
ゴムの巻き戻しを行っています.
この表の傾向が実際と合っているかを,飛行試験を実施して確かめようと思います.


滝 敏美 投稿日:2023年01月26日 16:30 No.185
長くなって申し訳ありません.解析結果はさしあたりこれを最後にします.
ダウンスラストの影響を検討してみました.
来週にでも飛行試験ができたらよいと考えています.

■ 3次元運動解析結果(その5)
ラダー舵角をゼロとし,ダウンスラストとサイドスラストを変化させて影響を見ました.
下の表がその結果です.
この表から以下のことがわかります.
①ダウンスラスト角を変化させても,獲得高度はあまり変化しない.サイドスラスト角が重要.
②右旋回上昇のほうが左旋回上昇よりも高度をとることができる.
③右旋回上昇では,サイドスラスト角の小さな変化で高度が大きく変化する.したがって,調整が難しい.ダウンスラスト2度程度は必要.
④高度では損をするが,左旋回上昇のほうが許容範囲が広いので,調整しやすそうである.

この表の現象はプロペラが気流方向に正対していない(迎角がある)ときに発生するヨーイングモーメント,ゴムのトルクによる機体のロールモーメントの兼ね合いによるものと思われます.


松本@GPF 投稿日:2023年01月26日 23:01 No.186 【Home】
滝さん、解析結果の発表ありがとうございます。
そのまとめが解析結果その5(No. 185)の表だと思いますが
ーわずかな左サイドスラスト(-5°)で最も高く上がる
ーその時ダウンスラストを増やしても獲得高度は落ちない
の2点は大変興味深い結果です。

ダウンスラストはハイトルク時の失速回避に有効とされています。
No. 2の機体はダウンスラスト0°でも3°でも468回巻きでは失速していますが
ミニマム何回の巻き戻しなら失速しないのか?
或いはダウンスラストを何度まで下げたら468回巻きでも失速しないのか?
ぜひ知りたいところです。


滝 敏美 投稿日:2023年01月27日 12:17 No.188
松本様,コメントありがとうございます.

巻き戻し有りの場合について,ダウンスラストの影響を解析しました.

■ 3次元運動解析結果 -- ダウンスラストの影響,巻き戻し有り
ダウンスラストを0度,2度,4度とした場合の,サイドスラスト,ラダー舵角と高度の関係を3つの表に示します.
ダウンスラストを大きく(4度)すると失速が起きないことがわかりました.


松本@GPF 投稿日:2023年01月27日 21:22 No.189 【Home】
No. 188の表は全て468回から430回に38回巻き戻したケースですが
私が知りたいのは巻き戻しなし或いはもっと少ない巻き戻しの場合、ダウンスラスト増で失速が回避出来るかどうか?
失速回避が出来たらその時の性能はどうなるか?
です。


滝 敏美 投稿日:2023年01月29日 21:26 No.193
■ 3次元運動解析結果 -- 巻き戻さない場合
468回巻きで巻き戻さない場合について,ダウンスラストの影響を解析した結果を示します.
ダウンスラスト5度になると,ある程度効果が出て,430回まで巻き戻したときよりも高度が増えますが,その大きさは2m程度です.
ダウンスラスト6度までは,ダウンスラストを大きくすると,サイドスラストの調整許容範囲が拡大するというメリットがあります.
巻き戻しをするならば,ダウンスラストは4度まででよさそうです.




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