ゴム動力模型飛行機掲示板


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新刊2冊の紹介
松本@GPF 投稿日:2023年01月22日 23:03 No.177 【Home】
2022年11月発行の岡本正人: 紙飛行機の空力データー低レイノルズ数の風洞実験

2022年12月発行の小池勝: フリーフライトF1Bー滞空時間を伸ばす技術と科学
です。
どちらも本の名前が内容を良く現しています。

添付写真は2冊をA4版コピー用紙の上に置いて撮影しました。
大判でどちらも内容のほぼ半分が図表や写真になっており内容が大変豊富です。

著者のご両人の経歴は似ていろところがあって
岡本正人さん:
1955年生まれ、和歌山工業高校教師ー秋田工業高等専門学校教授ー金沢工業大学教授(現職)
小池勝さん:
1952年生まれ、三菱自動車の開発エンジニアー明石工業高等専門学校教授ー大阪工業大学教授ー引退後はF1Bフライヤー
です。

岡本先生は和歌山工業高校時代から現在に至るまで紙飛行機や昆虫に相当する低レイノルズ数の翼の特性を風洞実験で研究しています(レイノルズ数RN=10000前後)。
小池先生の方は三菱自動車時代のF1Bの上昇パターンの研究もありますが風洞試験を使った研究は高専、大学教授時代で対象はF1Bに相当するRN=40000前後。
両方を合わせるとフリーフライト機のほぼ全域の翼特性をカバーしています。

両先生の少年時代からの趣味が研究の原動力になっているようです。

続くページでは小池先生の本の内容を紹介します。
岡本先生の本は別スレッドで。


松本@GPF 投稿日:2023年01月30日 19:06 No.195 【Home】
小池勝: フリーフライトF1B
の目次を添付しました。
前書きに相当する「この本につて」(全6ページ)に小池先生の執筆姿勢が良く分かる部分があるので引用します:
「大阪工業大学を2018年3月に定年退職した後、幸い愛知工業大学で非常勤講師として空気力学の授業を担当することができた。授業のために 「模型航空工学」の概要をまとめて3回ほどの授業で解説したが、十分には伝わらないと感じた。改めて今まで知りえたことや研究成果 を詳細に書いてみようと思った。 書き始めると意外に内 容が盛りだくさんであることに気が付いた。 また書いて いる中で新しい発見もあった。
 類書は存在しない。 従来の模型飛行機の本で学者の書 いたものは、理論が中心で、 技術的な情報が不足している。模型飛行機をやっている人は論文や書籍をあまり書かない。 模型飛行機を学問の対象として研究した人は1942年のドイツのSchmitz ぐらいである。 その内容は今でも有用で、本書でも引用しているが、その後の技術の進歩も大きなものがある。
 そこで情報を系統的に整理して1冊の本にしてみよう と思い立った。 末尾には入門用のライトプレーンも加え た。フリーフライト人口は減少しつつあり絶滅危惧種となっているので、この本を出版すれば競技人口を増やせ るのではないか、という気もしてきた。
 フリーフライト模型飛行機の競技がラジコンや自動操 縦技術が出現した現在でも継続しているのは、新たな技術の出現が続いていることが大きな要因だろう。 その技術を記録するのは私の使命だと感じるようになった。ネットが発達した現在、海外からも技術情報が伝 わり、日進月歩の感がある。 しかし新技術に取り組んでいる模型飛行機屋はその内容を文章にして発表したがらない。それより競技会で勝つことに努力を集中する。私 は新しい技術を開発するのが好きであり、競技会に参加 している現役選手でもあるので、最新の技術内容を文書や図にして記録し、広く伝えたいと思い本書を執筆した。 本書は専門外の人にも理解できるように配慮したが、わ かりやすくするために厳密な説明を省略するのは避けたい。つまり論文としても成立するような内容とした。 そ のため微分方程式や積分も出てくるが、高校レベルの数 学・物理で理解できるだろう。」

執筆の意図が良く分かります。
副題の通り国際級ゴム動力機F1Bの技術と科学の全域がカバーされていて「類書はない」ことになります。
執筆の姿勢は「わかりやすくするためにげんみつな説明を省略するのは避けたい。」です。

小池先生には類書のないこの本の英文出版を考えていただきたいのですが
上記の「この本について」部分引用はGoogleフォトのOCR機能を使ったのですが更に翻訳機能を使って英文にしてみました:
After retiring from Osaka Institute of Technology in March 2018, I was fortunate enough to be able to teach aerodynamics classes as a part-time lecturer at Aichi Institute of Technology. For his class, he summarized the outline of "model aeronautical engineering" and explained it in about three classes, but he felt that it was not sufficiently conveyed. He decided to write in detail what he had learned so far and the results of his research. When he started writing, he found it surprisingly full of content. He also made new discoveries during his time as he wrote. There are no similar documents. The scholar's writings in traditional model airplane books are mostly theoretical and lack technical information, he says. People who do model airplanes don't write many papers or books. Schmitz of Germany in 1942 is the only person who studied model airplanes as an academic subject.  The content is still useful today, and is quoted in this book, but there have been major advances in technology since then. So he decided to organize the information systematically into a book. He also added an introductory light plane at the end. The free flight population is declining and has become an endangered species. The reason why free-flight model airplane competitions continue even today, with the advent of radio-controlled and autopilot technology, is that new technologies continue to emerge.  I came to feel that it was my mission to record the technique. Today, with the development of the Internet, technical information is transmitted from overseas, and there is a sense of rapid progress.  However, model aircraft manufacturers working on new technology do not want to publish their content in writing. Instead, focus your efforts on winning the competition. I like to develop new technology, and I am also an active athlete who participates in competitions, so I wrote this book to record the latest technology in documents and diagrams and to disseminate it widely. This book has been designed to be understandable to non-experts, but he would like to avoid omitting rigorous explanations in order to make it easier to understand. In other words, the content was such that it could be established as a thesis. Therefore, there are differential equations and integrals, which can be understood with high school level mathematics and physics.

この自動翻訳の出来具合で?または間違いは
ー「3回ほどの授業で」が in three classesになっている
ー 数か所 I, my とすべきか所が he,his になっている
ー「模型飛行機屋」が model aircraft manufacturers になっている
の3点だけで後はそのまま使える出来栄えです。専門用語も正確に翻訳されています。


興味深い内容など次ページで続けます。


松本@GPF 投稿日:2023年03月06日 17:29 No.226 【Home】
前回から1か月以上たってしまいましたが
小池勝: フリーフライトF1B
の内容紹介と感想の続きです。

最初は本題から外れますが自動翻訳の続き、岡本先生の本の存在を教えてくれた飛行機仲間の平原さんから教えてもらった翻訳ソフトのdeepL (https://www.deepl.com/translator)で前ページと同じ小池先生の前書き部分を翻訳してみました。結果のWordファイルを添付しました。
Google翻訳の問題点3点の内、最初の2点は解消し
・「模型飛行機屋」は model aircraft manufacturersではなくmodel airplane makersになっている
点だけが残りましたが、これは問題点といえるかどうかも疑問なのでdeepLはほぼ完全な翻訳をしたことになります。
deepLは数回の試行は無料ですが本格利用は有料になります。

37ページ:
「ちなみに、インドアのゴム動力機(F1D)では・・・・・。一方F1Bは文字通り青天井なので、飛ばし方が大きく異なるのである。」
紙飛行機は青天井、ライトプレーンは青天井など真似ができそうです。

42ページ
「ダウンスラストを増やすと頭を下げるように思われるが、逆に頭を上げることもある。バーストやトランジェントではダウンスラスト増のより頭を下げるが、クルーズでは逆に頭を上げるのである。私は最初信じられなかったが、実際のそうなるのを目の当たりにして確信した。なぜそうなるのか?」
この事実、恥ずかしながら私は知りませんでした。
その理由として小池先生は2説を挙げています。
(a) 機体の進行方向説:推進軸が下を向く→主翼の迎角が増加→機体が上を向く
(b) プロペラ後流説:プロペラ後流が主翼の下面にあたる→主翼の迎角が増加→機体が上を向く(クルーズ時にはプロペラ後流は尾翼まで届かない前提)
私はb説に賛成です。a説では主翼のみならず水平尾翼の迎角も増加するはずです。従って機体が上向くとは思えません。
バースト時にはダウンスラストが頭上げ抑制に有効です。その理由はプロペラ後流が水平尾翼の下面にあたり揚力を増すためと思われます。プロペラ後流は主翼の下面にもあたり主翼の揚力も増加させますが、その程度は水平尾翼より小さい―その理由はプロペラ後流は主翼全体ではなく主翼の中心部(全スパンの1/3程度の揚力を増すだけだからです。
これには傍証があります。私のまともなライトプレーンでは重心位置を主翼の33%付近(風圧中心付近)にしています。この構成では重心位置が50%より後ろにある通常のFF機よりも主翼・尾翼間の取り付け角差が大きくなります。その結果通常のライトプレーンなどと同じダウンスラストではバースト時の頭上げが強くなってしまいます。理由は大きい取り付け角差のためプロペラ後流が水平尾翼の上面に当り水平尾翼の頭上げモーメントが発生するためと思われます。従って私のライトプレーンは大きなダウンスラストになっています。
クルーズ時には大きいダウンスラストが頭上げに寄与すると言う小池先生のご指摘は私には朗報です。

49ページにはプロペラのジャイロ効果に関連してプロペラの慣性モーメントの式が出ています:
  ∫r^2dm
この表現はWebを検索しても出てきますが違和感があります。
積分はプロペラの回転軸r=0からプロペラの先端r=Rまで行われるので、半径rの位置の微小慣性モーメントはr^2Δmと表現するよりもr^2xm(r)Δr (m(r)は半径rの位置のプロペラ質量密度)と表現するのが自然、したがって妥当な慣性モーメントの表現は
  ∫r^2xm(r)dr
でしょう。
プロペラの慣性モーメントについては随分前に測定したことがあり、一度紹介したと思います:
http://www.ll.em-net.ne.jp/~m-m/copter/propData/15cmGreenPropMI.htm
http://www.ll.em-net.ne.jp/~m-m/copter/weightAdded.htm


ダウンロードdeepL翻訳 ( .docx / 5.6KB )
松本@GPF 投稿日:2023年03月06日 17:32 No.227 【Home】
引き続き小池:フリーフライトF1B
第7章 主翼の空気力学と第8章 乱流装置と境界層は模型飛行機領域の翼の空力データの宝庫です。その中の多くは小池先生の実際の風洞試験の結果にです。
134ページから始まる36枚の写真は煙風洞でみた境界層の剥離の様子。丁寧の見るとどの位置で境界層が剥離しているかがわかります。

平成20年度航空宇宙空力班シンポジウム、小池勝・石井満:ハンドランチグライダーの空力特性なる寄書を随分前に小池先生から送ってい頂きました(添付写真)。
改めて内容をめくって見るとほぼ上記と同様の解析がハンドグライダー翼について行われています。風洞試験はRe=15,000から100,000までとより広範です。
火星探査などにも役立つデータだと聞いた記憶があります。


松本@GPF 投稿日:2023年03月06日 18:48 No.228 【Home】
第9章 プロペラの空気力学は全6ページの短い内容です。
理由は小池勝、流体機械工学、2009年、コロナ社に詳しく解説してあるためでしょう(表紙写真添付)。
私もこの流体機械工学の詳しい解説に従ってプロペラの特性計算のExcelファイルを作ったことがあります:https://sites.google.com/site/gpfmodel/Home/fuku--gomu-douryoku-mokei-hikouki--websaito--keijiban-fairu
のプロペラ設計・評価実習版.xls
です。
3枚のワークシートで
・最適ブレード形状の計算(プロペラトルクを与えて)
・最適ブレード形状の計算(プロペラ推力を与えて)
・プロペラの性能評価
が可能です。

第11章 モーターランのシミュレーション の末尾に
「1980年代にポケットコンピュータでプロペラの空力特性を数値計算したときは1ケース10時間以上かかった。PC98を使って15分で終わった時は感動したものである。現在はノートパソコンで1秒以下である(計算の内容はもっと複雑化しているのに)。」
とありますが、手元にあるB5版全14ページの
KFC通信1986-6月特報
 F1Bにおける理想的上昇パターンのコンピュータによる計算 小池勝
(表紙のコピーを添付)
(KFCは京都フリーフライトクラブ)
(この研究報告、小池先生から頂いたのか大村和敏さんから頂いたのか記憶があいまいで申し訳ありません。)
内容は翼、機体、プロペラの空力特性の解説とそれに基づく上昇パターンの計算と評価です。100本に近いカーブか記載されていますからPC98で1ケース15分としても膨大な時間がかかったと思われます。
まとめの中の有益な結論は「主翼、プロペラともに失速しない範囲でできるだけ上を向けると上昇効率が良いことがわかった。」


小池勝 投稿日:2023年03月07日 16:48 No.229
松本さん「書評」をありがとうございます。すごくうれしいです。
「ダウンスラストを増やすと頭を上げることがある」件についてコメントします。
全ての機体がそうなるわけではありません。私の機体の中にもダウンを増やすと頭を下げる機体も、上げる機体もあります。ウクライナのスタファンさん(世界選手権で4回優勝)は、アップスラストを付けています。私は、本に仮説を書きましたが、まだよくわかりません。本には2つの仮説を書きましたが、逆に頭下げになると考えることもできて、この方が素直な考えです。ですから特定の機体で頭を上げるか下げるかは、複数のメカニズムを定量的に見積もって、大きさを比較する必要があります。しかし定量的に見積もるにはデータが足りません。データが増えても難しいです。




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