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強風時(後)にはバルコニーアルミ手摺の固定ねじ締付け状態を必ず確認する必要がある。 1)アルミ手摺笠木両端部の固定ねじ(上向き締めタッピングビス)が長さ半分ほど抜け出ていた。 2)中央部控え柱(斜めの支え)の固定ねじ(横向き締めタッピングビス)の上1本が完全に抜け落ちて無くなっていた。 という恐ろしい事実がある。 管理会社では何か月も掛かる!(今までの対応からも明々白々)。しかし、上記2)のままでは大変危険(倒壊の恐れあり)なので、ホームセンターから一回り太い径のSUSタッピングビスを買って来てその日に固定し直した。 その後2年半以上経つが、今のところはシッカリと締まっている。 なお、この2)のタッピングビスは引張荷重に負けて抜け落ちた訳であり、1)の上向きビスが振動で緩んで抜け出てきたのとは根本的に違う。 1)のビスは剪断荷重には耐えているので、今は緩み防止対策だけすれば良い。が、2)の控え柱はタッピングビス締結軸力が“この程度※1”の引張荷重以下であるため、幾たび新たにタッピングビスを絞め込んだとしても、いずれ又ぶち抜けてしまう。 手摺支柱アルミ材の肉厚2mm分しかないネジ掛かり(1ピッチ程度)に“この程度※1”の引張荷重が働けばビス穴断面(アルミ板厚2mmの断面)など容易に破壊されてしまう。DH工業の技術力は素人レベル以下であることをこの事実がハッキリと示している。 (“この程度※1”とは・・・竣工後の最大風速17.8m/s(南南西)での正負圧。対して、静岡県駿東郡 粗度区分Ⅲの設計基準風速は34m/sである。つまり、当該手摺は設計基準風速(風速34m/s)の半分程度の風でいとも簡単に壊れてしまう建築基準法違反の欠陥手摺なのである。) 今現在、バルコニーのアルミ手摺は 「基本的な安全性」 をまったく満たしていない! |
左図の如くバルコニーアルミ手摺の固定ねじ(タッピングビス)が強風で破壊され、同ビスが抜け落ちているのを発見したのは2012年6月25日である。管理会社(当時:ダイワサービス)の対応が悪い(例:処理が遅い)ことは以前から分かっていたので、SUSタッピングビス5x16mm(既存ビスよりワンサイズUPのビス)をホームセンターで買い求めて同日中に取付し直した。以降現在までのところその部位に異状は見当たらない。 この手摺損壊事故は、数日前(2012年6月19日)の夜間に発生していた最大風速16.5m/sの強風によるものである。(数日間はその異変に気付かなかった。) この様に、当マンションのバルコニー手摺は設計基準風速※1(34m/s)の半分程度の風(風速17m/s程度)でいとも簡単に壊れてしまう。これは自明の事実であり、まさに、建築基準法違反の欠陥手摺なのである。 《 設計基準風速x50%+経年劣化▲ ⇒ 極めて危険な状態! 》 ※1:基準風速は全国の市町村別に30~46m/s、2m/s間隔で与えられている。最近の市町村合併により市町村名が変わっても、2000年改正時の全国の市町村での風速を用いる。基準風速は全国の気象官署の観測値(年最大風速)に基づいて再現期間約50年に換算された数値(10分間平均値)であり、これに√Gf(Gf:ガスト影響係数※2)をかけて最大の荷重効果を示す。 なお、当建物には「静岡県駿東郡 粗度区分Ⅲ 設計基準風速:34m/s」が適用される。 ※2:ガスト影響係数Gf ガスト影響係数とは、風の時間的変動(突風やビル風、台風など)により建築物が揺れた場合に発生する最大の力を算定するための係数であり、時折ふく最大の風が、平均風速の何倍かを表した値のこと。(Gf=瞬間最大風速/平均風速) (参考サイト) ●建築基準法の風荷重関係規定について:http://www.kinzoku-yane.or.jp/technical/pdf/261sp.pdf ●地域別基準風速(国土交通省告示1454号):https://www.kenken.go.jp/japanese/research/lecture/h16/slide/06-1/ref/No6.htm ●構造計算 > 風荷重:http://kouzoukeisann.com/entry3.html ●過去の気象データ検索 > 10分ごとの値 > 2012/06/19:https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/10min_s1.php?prec_no=50&block_no=47657&year=2012&month=6&day=19&view= |
【図1】 一般にベランダ手摺に作用する風力Wは、外側に作用する風圧力P1と、内側に作用するP2との差圧によって表すことができます。 一方、ベランダ内側に作用する風圧力P2は、外壁面に作用する風圧力P3と高い正の相関があるため、P2の代わりにP3を用いてベランダ手摺に作用するピーク風力係数を推定できます。 【図2】 隅角部以外の中央部においては、平均風力はベランダの外側と内側で等圧となると考え、図2の式(3.2.2.1)で算定されるピーク風力係数が妥当だと考えられます。 隅角部以外の ベランダ手摺のピーク風力係数Cf,b = Cpe × {(Gpe-1)/Gpe } Cpe ・・・・・ 近接する外壁面のピーク外圧係数 Gpe ・・・・・ 平12建告第1458号で規定される帳壁の正圧部のGpe 下記1)表の数値や計算式から解かるように、CpeはMaxでも1.0ゆえに、仮にCpe=1.0として上式に代入し、 次に、地表面粗度区分Ⅲの当該地域※1でのGpeは下記2)表から3.1~2.3の範囲になるので、仮にGpe=3.1、Gpe=2.3を上式に代入した場合、 Cf,b = Cpe × {(Gpe-1)/Gpe } Cf,b = 1.0 × {(3.1-1)/3.1 } ≒ 0.68 ・・・ (※2 Max値) から、 Cf,b = 1.0 × {(2.3-1)/2.3 } ≒ 0.57 の範囲となります。 なお、Cpeが1.0未満となる中間階の場合は更にCf,bは小さくなります。 Hが5を超え且つZが5を超える場合のCpeは、Cpe=(Z/H)^2αで求めます。 仮に、Ⅱ番館のH:25m、6階帳壁のZ:19m、を上式に代入した場合、(なお当該地域※1は、α=0.2です。) Cpe=(Z/H)^2α Cpe=(19/25)^0.4 ≒ 0.89 となります。 この場合のCf,bを改めて求めますと、(ここでのGpe≒2.8は、下記2)表での補間値です。) Cf,b = Cpe × {(Gpe-1)/Gpe } Cf,b = 0.89 × {(2.8-1)/2.8 } ≒ 0.57 となります。 繰り返しますが、これは隅角部以外(中央部)のベランダ手摺の場合です。隅角部は別の計算で求めますが、当マンションに隅角部且つRC以外のベランダ手摺は存在しませんので省略します。 風圧力W(N/m2)は、W = 0.6×E^2×V^2×C で計算されます。 [W:風圧力、V:基準風速、C:風力係数、E:平均風速の鉛直分布を表す係数 ・・・ 当該地域※1で建物H≦31mならE≦1.0となる故、当建物ではE=1.0と設定。] 当該地域※1のV:34m/S、ベランダ手摺Cf,b:0.68 (※2 Max値)、E:1.0、で計算した場合のベランダ手摺風圧力W(N/m2)は、 W = 0.6×34^2×0.68 ≒ 472N/m2 ・・・・・ 設計風圧力(A) となります。一方、 先日の強風で固定ネジが破壊した際の日最大風速は17m/Sでしたので、この時の風圧力W(N/m2)は、 W = 0.6×17^2×0.68 ≒ 118N/m2 ・・・・・ 破壊時風圧力(B) と考えられます。 故に、当該ベランダ手摺の風荷重に対する安全率は(B)÷(A)=0.25 です。 ※なお、上式の通りに設計されたベランダ手摺の内側に作用するP2が突然無くなった場合(例:暴風でサッシガラスが大破した際など)には、当該ベランダ手摺は忽ち崩壊します。(これは、ベランダ手摺のピーク風力係数がCf,b = Cpe × {(Gpe-1)/Gpe } から(例:ピーク風力係数C=0.68などから)、Cf,b = Cpe × Gpe に(例:ピーク風力係数C=3.1~2.3などに)突然変わるからです。[当該地域※1で隅角部以外且つ正圧部の場合]) 1)■帳壁(正圧部)のピーク外圧係数Cpe 帳壁の正のCpe ・Hが5以下の場合:1.0 ・Hが5を超える場合: Zが5以下の場合:(5/H)^2α Zが5を超える場合:(Z/H)^2α この表において、H、Z及びαは、それぞれ次の数値を表すものとする。 H 建築物の高さと軒の高さとの平均(単位 m) Z 帳壁の部分の地盤面からの高さ(単位 m) α 平成12年建設省告示第1454号第1第3項に規定する数値(地表面粗度区分がⅣの場合にあっては、地表面粗度区分がⅢの場合における数値を用いるものとする。なお、当該地域※1[静岡県駿東郡 粗度区分Ⅲ]のαの値は0.2である。) 2)■帳壁(正圧部)の外圧ガスト影響係数Gpe (1) (2) (3) 地表面粗度区分 Z≦5 5<Z<40 40≦Z Ⅰ 2.2 (1)と(3)とに 1.9 掲げる数値を 直線的に補間 した数値 Ⅱ 2.6 同上 2.1 Ⅲ及びⅣ 3.1 同上 2.3 この表において、Zは、帳壁の部分の地盤面からの高さ(単位 m)を表すものとする。 【参照サイト】 ・[PDF]第3章 ベランダ手すりの風荷重算定:https://www.kenken.go.jp/japanese/contents/publications/data/142/08.pdf ・〔平成12年5月31日建設省告示第1458号〕 屋根ふき材及び屋外に面する帳壁の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件:https://www.kenken.go.jp/japanese/research/lecture/h16/slide/06-1/ref/No1.htm |
しかし、 隅角部以外のベランダ手摺のピーク風力係数Cf,bは、 Cf,b = Cpe × {(Gpe-1)/Gpe } が妥当であると言う考え方は実際の設計に於いては採用されていません。 実際には、 日本アルミ手摺工業会などの指針(左図)に基づき設計されています。 【ベランダ手摺 設計用ピーク風力係数C】 部位 中央部 部位Ⅰ 部位Ⅱ 正 1.5 2.0 3.5 負 -1.5 -2.5 -5.0 が用いられています。 風圧力W(N/m2)は、W = 0.6×E^2×V^2×C で計算されます。 [W:風圧力、V:基準風速、C:風力係数、E:平均風速の鉛直分布を表す係数 ・・・ 当該地域※1で建物H≦31mならE≦1.0となる故、当建物ではE=1.0と設定。] 当該地域※1のV:34m/S、隅角部以外のベランダ手摺C:1.5、E:1.0、で計算した場合の 隅角部以外のベランダ手摺風圧力W(N/m2)は、 W = 0.6×34^2×1.5 ≒ 1040N/m2 ・・・・・ 設計風圧力(A) となります。一方、 先日の強風で固定ネジが破壊した際の日最大風速は17m/Sでしたので、この時の風圧力W(N/m2)は、 W = 0.6×17^2×1.5 ≒ 260N/m2 ・・・・・ 破壊時風圧力(B) と考えられます。 故に、当該ベランダ手摺の風荷重に対する安全率は、(B)÷(A)=0.25 です。 ※1 静岡県駿東郡 粗度区分Ⅲ 【参照サイト】 ・日本アルミ手摺工業会 手摺強度のガイドライン(風荷重編):http://www.apajapan.org/tesuri/guideline02.pdf ・日本アルミ手摺工業会 手摺強度のガイドライン(人的荷重編※2):http://www.apajapan.org/tesuri/guideline01.pdf (人的荷重※2) ※2 なお、工業会が定める共同住宅用アルミ製墜落防止手摺の「基本強度」は、 区分 水平荷重 設置場所 ・100型 980N/m(100Kgf/m) バルコニー、階段前を除く廊下 ・125型 1225N/m(125Kgf/m) 階段、階段前の廊下 とされています。 |
左図は2012年6月にベランダ手摺の固定ネジが破壊された時の風速を示すものです。 最大風速:16.7m/S 最大瞬間風速:33.0m/S 風向:南西 前頁の式から、 隅角部以外のベランダ手摺風圧力W(N/m2)は、 W = 0.6×34^2×1.5 ≒ 1040N/m2 ・・・・・ 設計風圧力(A) 平成12年建設省告示第1454号、第1458号では、設計風圧力を求める際の風速として平均風速を用いていますが、下記では旧告示※1の風圧係数Cを用いることで瞬間風速から算出しています。風圧係数(風力係数と称する場合もあります)は、建物の形状や部位により異なりますが、正圧ではC=0.5~1.0程度になります。 ※1での風圧力W(N/m2)は、W = 0.61×C×V^2 で計算されます。 [W:風圧力、C:風圧係数、V:瞬間風速 (係数0.61は台風時以外で、台風時は0.56を用います。←大気圧により空気密度などが変化するため)] ここで C:1.0 ← 最大側に仮定※2(手摺内側に作用する風圧力P2=0とした場合と同等※2) V:33.0m/S ← 瞬間風速 として計算 固定ネジが破壊したときの風圧力W(N/m2)は W = 0.61×1.0×33^2 ≒ 660N/m2 ・・・・・ 破壊時風圧力(C) ←※2での最大値です。 となります。 この場合の、当該ベランダ手摺の風荷重に対する安全率は、(C)÷(A)=0.63 です。 ←※2での最大値 事実はひとつ、 最大風速 16.7m/S(瞬間風速 33.0m/S)で固定ネジが破壊!したことです。 |