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入学前なのに傷だらけ

1: KZ:2024/03/10 16:14 No.462
今週の『東京歌壇/俳壇』から   (東京新聞)

☆きな粉舞う、きな粉舞う このキッチンの灯りは寂しくてすきだった
            新潟市  砂崎柊

⚫︎思えば性に合ったキッチンだったなあと。何処かへ引っ越しの前でしょうか。
舞いあがるきな粉がいとしい

☆母の手が私の置いてきたもののすべてに一度はもう触れた頃
            柏市  遠野鈴

⚫︎お母さんは思っている。そして娘も お母さんの柔らかな手を 今思っている。

☆怒ってない、動けないだけ三月のひかりで水になりたい根雪
            横浜市  瀬生ゆう子

⚫︎いろんなものの比喩なのでしょうか
それでもやがて光は増し こわばったこころもとけてゆくような

☆一ピンだけ倒れなかった ボウリング場でふたりで春雷を待つ
            北区  土居文恵

⚫︎春雷で残ったピンが倒れる そういうこともあるのでしょうか
不思議な奇跡が二人を待ち受けているのかも

※好調なこの常連さんは 別の選者からも次の一首が採りあげられています。

☆拘(こだわ)りのオーダーメイドのランドセル入学前なのに傷だらけ
            同    土居文恵

⚫︎どうした訳でしょうね うれしくていじり過ぎたのかな(笑)
良い度胸をしているなと思います。この感興が自分の言葉そのまま(口語詠)で歌になる、そういう機微を この方は肌で知っているんですね。この天与のうたびとは

☆包まれてゐるのだらうか雪の降る夜は子どものやうにねむたい
            千葉市  小金森まき

⚫︎あのすっぽりと無音に包まれる感覚ですね。 
 雪の夜 はるか遠くの夢に ひとは呼ばれているんでしょうか

☆主語述語幼なの会話整へり修飾語など添へたりもして
            伊勢原市  佐藤治代

⚫︎かわいいですね  おしゃまな子のモノローグが すぐそこに聞こえているようです

☆老眼鏡外しベッドで過す時ぼやけた視野の心地良さ知る
            川崎市  福本よしき

⚫︎よくわかります。ひとが感じるのはこころの目。多少視界がぼやけても 心地よいのはまた別のこと

☆窓際の席に新聞捲りつつボサノヴァ聴きし駅カフェの朝
            秦野市  薄井隆

⚫︎これでもかと今の定番を積みかさね、それでも爽やかな朝の歌に仕上げた心の力

☆あけがたのささやかな雨ぬれながら輝きながら階段はある
            選者詠  東直子

⚫︎たしかにそこまで春が来ている。
 その様が外階段の小さな光からも感じられると

………

☆うつるから来るなと猫に風邪の娘は
            川口市  高橋まさお

⚫︎それでも猫は絶対行きますね  そう言う人の優しさを 彼らはよく知っているんですから

☆息吐けば弓なめらかや春のチェロ
            横浜市  鈴木綾子

⚫︎柔らかな最初の一音を 静かに耳にしたいと思います。
 その低い滑らかな弦の響きを

☆初蝶の前後上下を失へり
            世田谷区  野上卓

⚫︎目の眩むような初飛行  
 眺めていると 思わずこちらまで酔うような 素晴しい観察の一句

☆存(なが)らへし今は一人の梅見かな
            松戸市  オカザキヒデユキ

⚫︎紅梅/白梅 どちらをご覧になりましたか
 私は昨日見上げすぎて溝にはまり 付き添い人に叱られてしまいました😅

☆少しづつ枯野になつて父逝きぬ
            足立区  佐藤勝美

⚫︎夢は枯野を…
 お父上も 今は自在に広い野原を駆け巡っているかもしれません

☆険しきを上りきつたる春の海
            福岡県朝倉市  深町明

⚫︎峻険な坂を登り切ると 一挙に広がる春の海原
 なんと晴れやかな光景でしょう!

☆四つ割りの白菜買うて一人鍋
            渋谷区  羽生邑子

⚫︎美味しい春の白菜鍋ですね  今夜は大いに温まって 明日の英気を養いましょう

☆バック転出来る子となり卒業す
            調布市  大林明彦

⚫︎カッコいい子ですねえ  得意の笑顔が目に浮かぶようです。
 卒業おめでとう  Bon voyage❗️


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