投稿者:KZ
今週の『東京歌壇/俳壇』から (東京新聞)
☆きな粉舞う、きな粉舞う このキッチンの灯りは寂しくてすきだった
新潟市 砂崎柊
⚫︎思えば性に合ったキッチンだったなあと。何処かへ引っ越しの前でしょうか。
舞いあがるきな粉がいとしい
☆母の手が私の置いてきたもののすべてに一度はもう触れた頃
柏市 遠野鈴
⚫︎お母さんは思っている。そして娘も お母さんの柔らかな手を 今思っている。
☆怒ってない、動けないだけ三月のひかりで水になりたい根雪
横浜市 瀬生ゆう子
⚫︎いろんなものの比喩なのでしょうか
それでもやがて光は増し こわばったこころもとけてゆくような
☆一ピンだけ倒れなかった ボウリング場でふたりで春雷を待つ
北区 土居文恵
⚫︎春雷で残ったピンが倒れる そういうこともあるのでしょうか
不思議な奇跡が二人を待ち受けているのかも
※好調なこの常連さんは 別の選者からも次の一首が採りあげられています。
☆拘(こだわ)りのオーダーメイドのランドセル入学前なのに傷だらけ
同 土居文恵
⚫︎どうした訳でしょうね うれしくていじり過ぎたのかな(笑)
良い度胸をしているなと思います。この感興が自分の言葉そのまま(口語詠)で歌になる、そういう機微を この方は肌で知っているんですね。この天与のうたびとは
☆包まれてゐるのだらうか雪の降る夜は子どものやうにねむたい
千葉市 小金森まき
⚫︎あのすっぽりと無音に包まれる感覚ですね。
雪の夜 はるか遠くの夢に ひとは呼ばれているんでしょうか
☆主語述語幼なの会話整へり修飾語など添へたりもして
伊勢原市 佐藤治代
⚫︎かわいいですね おしゃまな子のモノローグが すぐそこに聞こえているようです
☆老眼鏡外しベッドで過す時ぼやけた視野の心地良さ知る
川崎市 福本よしき
⚫︎よくわかります。ひとが感じるのはこころの目。多少視界がぼやけても 心地よいのはまた別のこと
☆窓際の席に新聞捲りつつボサノヴァ聴きし駅カフェの朝
秦野市 薄井隆
⚫︎これでもかと今の定番を積みかさね、それでも爽やかな朝の歌に仕上げた心の力
☆あけがたのささやかな雨ぬれながら輝きながら階段はある
選者詠 東直子
⚫︎たしかにそこまで春が来ている。
その様が外階段の小さな光からも感じられると
………
☆うつるから来るなと猫に風邪の娘は
川口市 高橋まさお
⚫︎それでも猫は絶対行きますね そう言う人の優しさを 彼らはよく知っているんですから
☆息吐けば弓なめらかや春のチェロ
横浜市 鈴木綾子
⚫︎柔らかな最初の一音を 静かに耳にしたいと思います。
その低い滑らかな弦の響きを
☆初蝶の前後上下を失へり
世田谷区 野上卓
⚫︎目の眩むような初飛行
眺めていると 思わずこちらまで酔うような 素晴しい観察の一句
☆存(なが)らへし今は一人の梅見かな
松戸市 オカザキヒデユキ
⚫︎紅梅/白梅 どちらをご覧になりましたか
私は昨日見上げすぎて溝にはまり 付き添い人に叱られてしまいました😅
☆少しづつ枯野になつて父逝きぬ
足立区 佐藤勝美
⚫︎夢は枯野を…
お父上も 今は自在に広い野原を駆け巡っているかもしれません
☆険しきを上りきつたる春の海
福岡県朝倉市 深町明
⚫︎峻険な坂を登り切ると 一挙に広がる春の海原
なんと晴れやかな光景でしょう!
☆四つ割りの白菜買うて一人鍋
渋谷区 羽生邑子
⚫︎美味しい春の白菜鍋ですね 今夜は大いに温まって 明日の英気を養いましょう
☆バック転出来る子となり卒業す
調布市 大林明彦
⚫︎カッコいい子ですねえ 得意の笑顔が目に浮かぶようです。
卒業おめでとう Bon voyage❗️
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