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飛来したフォークめがけて

1: KZ:2024/02/18 15:45 No.453
今週の『東京歌壇/俳壇』から   (東京新聞)

☆飛来したフォークめがけて絡みつき引きずり込もうとするナポリタン
            相模原市  横浜J子

⚫︎当歌壇の鬼才・横浜J子さんによる一首。
この人にかかれば 見慣れたファミレスのテーブルも 一瞬にして華やかな(騒々しい)コロッセオに変貌するものらしい。食欲よりも、貪欲な格闘技の方をJ子さんは眺めている。

☆おにぎりのツナマヨ味をゆるせないまま人生の秋のまんなか
            千葉市  芍薬

⚫︎この方も 負けず劣らずの常連・異才  
 今回もいい歌ですねえ。
 一般には もう充分市民権を得た取り合わせだろうけれど、 私にはちがう。わが人生も はや秋の真ん中かもしれないけれど と。

☆哀しみは私一人の事だから少し陽気な日記にしよう
            伊東市  大胡惣市

⚫︎このやさしき心ばえ たおやかな意思(男気)に小さな乾杯を

☆全員がしずかな嘘つきになった日 教室内に手は上がらない
            大津市  世田夏雪

⚫︎ほんとうは 誰かがその閉塞(みんなが知っている嘘)を破らなければね。
身を捨てても外の新鮮な風を入れるのが 本当の先生

☆もう少しここに居たらと言えぬまま青へと向かう空を見ていた
            横浜市  友常甘酢

⚫︎せっかく空は晴れたのに こころは少ししずんでしまう。   
 小さな齟齬の哀しさよ

☆神様がもしも本当にいるのなら踵は少し割れてて欲しい
            国立市  佐藤建

⚫︎少し足を引きずって ゆっくり歩いて同行してくださいと。
 剣道とかをやっていた方でしょうか  踵のひび割れの痛みをよく知っている人ですね

☆祝日を旗日と祖母はいいにけり一月一日旗はほぼなし
            世田谷区  野上卓

⚫︎たしかに。元日 旗は私も見ませんでした。 でも私も ふつうにハタビと言ってしまう旧人類であります(笑)

………

☆日溜りの石のものいふ火の匂ひ水の匂ひを漂はせつつ
            時田則雄  『売買川(うりかりがわ)』

⚫︎火と水と 原初の匂いまでも含めて 日溜りの石は語っているのだと。 作者 第13歌集。

☆頬に雨あたりはじめる風のなか生きているのに慣れるのはいつ
            山階基(やましなもとい)  『夜を着こなせたなら』 (第2歌集)

⚫︎読むたびに この瑞々しい感性の発露にうたれる。 私などは未だ慣れません。 作者32歳。

☆新生姜ばりばり嚙みてながらへる
☆泥喰うて恋のはじまるむつごらう
            福島せいぎ  『箱廻し』 (第10句集)

⚫︎1938年生まれ。79〜85歳の300句を収録した句集から。
さすがの気合い。固い新生姜をばりばりと喰らう。そして 泥中のムツゴロウの活気(春気)をはたと見つめる。

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☆手袋を置いて席取るカフェテラス
            越谷市  小田毬藻

⚫︎季節のうたですね  冬の明るい日差しのなか 間もなく熱い熱いカフェオレが香る。

☆大寒や能楽堂の床の艶
            練馬区  伊勢史朗

⚫︎磨かれた鏡のような艶が むしろしんしんと寒気を誘う。 間もなく楽堂は開演、それからは静かな熱気が舞台を襲うのでしょう。

☆北窓を開き停戦祈りけり
            つくば市  小林浦波

⚫︎なお差し込む鋭い寒気に向かって つよく祈る!
 「この世の地獄」(ガザ)の 一刻も早い解放を  (いかれた戦争屋どもの完全撤退を)

☆大声が重宝されて鬼やらひ
            国立市  加藤正文

⚫︎追儺、鬼やらい。 今年も思い切りの大声で鬼退治  どうぞ世界じゅうに福を呼びこんで❗️

☆猫に問う何故それほどに温かい
            三鷹市  ユピ猫

⚫︎幸せな永遠の問いかけで 今週の句会はお開きのようです。



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プカリと 貫禄の茨木のり子さん (1926〜2006年)
 『私が一番きれいだったとき』

http://www.paw.hi-ho.ne.jp/n3tomoko/pooh/txt-wata.html


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