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投稿者:KZ
今週の『東京歌壇/俳壇』から   (東京新聞) ☆飛来したフォークめがけて絡みつき引きずり込もうとするナポリタン             相模原市  横浜J子 ⚫︎当歌壇の鬼才・横浜J子さんによる一首。 この人にかかれば 見慣れたファミレスのテーブルも 一瞬にして華やかな(騒々しい)コロッセオに変貌するものらしい。食欲よりも、貪欲な格闘技の方をJ子さんは眺めている。 ☆おにぎりのツナマヨ味をゆるせないまま人生の秋のまんなか             千葉市  芍薬 ⚫︎この方も 負けず劣らずの常連・異才    今回もいい歌ですねえ。  一般には もう充分市民権を得た取り合わせだろうけれど、 私にはちがう。わが人生も はや秋の真ん中かもしれないけれど と。 ☆哀しみは私一人の事だから少し陽気な日記にしよう             伊東市  大胡惣市 ⚫︎このやさしき心ばえ たおやかな意思(男気)に小さな乾杯を ☆全員がしずかな嘘つきになった日 教室内に手は上がらない             大津市  世田夏雪 ⚫︎ほんとうは 誰かがその閉塞(みんなが知っている嘘)を破らなければね。 身を捨てても外の新鮮な風を入れるのが 本当の先生 ☆もう少しここに居たらと言えぬまま青へと向かう空を見ていた             横浜市  友常甘酢 ⚫︎せっかく空は晴れたのに こころは少ししずんでしまう。     小さな齟齬の哀しさよ ☆神様がもしも本当にいるのなら踵は少し割れてて欲しい             国立市  佐藤建 ⚫︎少し足を引きずって ゆっくり歩いて同行してくださいと。  剣道とかをやっていた方でしょうか  踵のひび割れの痛みをよく知っている人ですね ☆祝日を旗日と祖母はいいにけり一月一日旗はほぼなし             世田谷区  野上卓 ⚫︎たしかに。元日 旗は私も見ませんでした。 でも私も ふつうにハタビと言ってしまう旧人類であります(笑) ……… ☆日溜りの石のものいふ火の匂ひ水の匂ひを漂はせつつ             時田則雄  『売買川(うりかりがわ)』 ⚫︎火と水と 原初の匂いまでも含めて 日溜りの石は語っているのだと。 作者 第13歌集。 ☆頬に雨あたりはじめる風のなか生きているのに慣れるのはいつ             山階基(やましなもとい)  『夜を着こなせたなら』 (第2歌集) ⚫︎読むたびに この瑞々しい感性の発露にうたれる。 私などは未だ慣れません。 作者32歳。 ☆新生姜ばりばり嚙みてながらへる ☆泥喰うて恋のはじまるむつごらう             福島せいぎ  『箱廻し』 (第10句集) ⚫︎1938年生まれ。79〜85歳の300句を収録した句集から。 さすがの気合い。固い新生姜をばりばりと喰らう。そして 泥中のムツゴロウの活気(春気)をはたと見つめる。 ……… ☆手袋を置いて席取るカフェテラス             越谷市  小田毬藻 ⚫︎季節のうたですね  冬の明るい日差しのなか 間もなく熱い熱いカフェオレが香る。 ☆大寒や能楽堂の床の艶             練馬区  伊勢史朗 ⚫︎磨かれた鏡のような艶が むしろしんしんと寒気を誘う。 間もなく楽堂は開演、それからは静かな熱気が舞台を襲うのでしょう。 ☆北窓を開き停戦祈りけり             つくば市  小林浦波 ⚫︎なお差し込む鋭い寒気に向かって つよく祈る!  「この世の地獄」(ガザ)の 一刻も早い解放を  (いかれた戦争屋どもの完全撤退を) ☆大声が重宝されて鬼やらひ             国立市  加藤正文 ⚫︎追儺、鬼やらい。 今年も思い切りの大声で鬼退治  どうぞ世界じゅうに福を呼びこんで❗️ ☆猫に問う何故それほどに温かい             三鷹市  ユピ猫 ⚫︎幸せな永遠の問いかけで 今週の句会はお開きのようです。 ……… プカリと 貫禄の茨木のり子さん (1926〜2006年)  『私が一番きれいだったとき』 http://www.paw.hi-ho.ne.jp/n3tomoko/pooh/txt-wata.html
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