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こどもがほしい、ほしい、と思う

1: KZ:2024/01/28 16:07 No.442
今週の『東京歌壇/俳壇』から  (東京新聞)


☆コンクリートのビルが欠片になってゆく こどもがほしい、ほしい、と思う
            川崎市  山田香ふみ

⚫︎見慣れたビルが むなしい瓦礫の山にかわってゆく。  
 こういう時に 人は何かでこころの欠落を埋めたくなるものらしい。下の句の思いが痛切に響く

☆正確なルールを把握しないままトランプをする、適度に笑う
            渋谷区  岩松ぽむ

⚫︎この「適度」さが この常連さんの捨てがたい(優れた)持ち味なんですよね  品のいい軽みなのです。

☆コピー機に挟まれていた獣肉のレシピ アスタリスクにまみれた
            北区  土居文恵

⚫︎コピー機の前で見つけた光景…。不思議な おもしろさを醸しだす歌。 
 これもこの常連さんの特質(天性の 独特な間合い)によるものなんですよね。この人が出て来ると 歌壇の奥行きが少し深まるような気がします。

☆時給より高いランチのれんこんの穴までつよく噛みしめている
            世田谷区  小原史子

⚫︎ちょっとくやしい  そんな気持ちが 蓮の穴まで噛みしめさせるわけですね

※(もっと時給上げろよな K田さんよ  集団で脱税ばかりしてんじゃあねえよ!)

☆馥郁と書道教室にぎはひて「冬」の一字が並んでをりぬ
             国立市  水面叩

⚫︎教室に漂っているのは 墨の香でしょうか  子どもたちの温かな髪の匂いでしょうか
壁にはいろんな「冬」がたくさん並んで

………

☆迎春の肥後の赤酒これの香は亡き父母(ふも)四人をかたはらに呼ぶ
             鹿井いつ子  『夢』  角川書店刊から

⚫︎作者は1944年 熊本県生まれ。四人とは 自分とご主人のご両親よったりのことでしょうか
かつての懐かしい家族のなごりを 元旦の赤酒の香が呼び戻してくれるのですね

………

☆ふいに来る下り急坂老いの冬
             世田谷区  石川昇

⚫︎よくわかります! じつに いきなり やつばらは足元にやって来るんですよね
おたがい 寒さに負けずに… どうぞお元気で!

☆裸木の晒せる傷の光かな
             杉並区  田中耀

⚫︎向こう傷は じつは樹木たちもたくさん受けているんですよね  
 澄んだ冬の陽光が 静かなひとを慰めるように木肌に射している

☆お揃いのカップに注ぐココアかな
             前橋市  木下美樹枝

⚫︎定型中の定型 ではありますが(笑) 温かいココアはとてもおいしそうだし なかよしのご夫婦はのんびりと美しいし

☆熊笹に熊笹の影十二月
             渋谷区  山口照男

⚫︎一転 これは手だれのまなこが見つめた鋭い句ですね  あざやかな熊笹の影  最後のくっきりした体言止めが 効いてますね

☆落ち葉敷く熊はガサゴソうさぎカサコソ
             沼田市  戸丸雅代

⚫︎子どもが大好きな絵本みたいな 優しさあふれる秀句です。 
 冬籠りのこういう音が 山では本当に聞こえてくるんでしょうね

☆独居してカニカマ食ふやクリスマス
             千代田区  岩佐なを

⚫︎お見事な一句だと思います カニカマとクリスマス! 脱帽です  (人生と詩と 長年の修練なしには出てこないうただと)

☆ちくわぶののさばつてをりおでん鍋
             大田区  菊間きん子

⚫︎これまた とびきりキレのいい女流の一句
 ちくわぶの盛り上がる 熱々のおでん鍋が目の前に!
 

………

少女たちよ!


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