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投稿者:KZ
今週の『東京歌壇/俳壇』から  (東京新聞) ☆コンクリートのビルが欠片になってゆく こどもがほしい、ほしい、と思う             川崎市  山田香ふみ ⚫︎見慣れたビルが むなしい瓦礫の山にかわってゆく。    こういう時に 人は何かでこころの欠落を埋めたくなるものらしい。下の句の思いが痛切に響く ☆正確なルールを把握しないままトランプをする、適度に笑う             渋谷区  岩松ぽむ ⚫︎この「適度」さが この常連さんの捨てがたい(優れた)持ち味なんですよね  品のいい軽みなのです。 ☆コピー機に挟まれていた獣肉のレシピ アスタリスクにまみれた             北区  土居文恵 ⚫︎コピー機の前で見つけた光景…。不思議な おもしろさを醸しだす歌。   これもこの常連さんの特質(天性の 独特な間合い)によるものなんですよね。この人が出て来ると 歌壇の奥行きが少し深まるような気がします。 ☆時給より高いランチのれんこんの穴までつよく噛みしめている             世田谷区  小原史子 ⚫︎ちょっとくやしい  そんな気持ちが 蓮の穴まで噛みしめさせるわけですね ※(もっと時給上げろよな K田さんよ  集団で脱税ばかりしてんじゃあねえよ!) ☆馥郁と書道教室にぎはひて「冬」の一字が並んでをりぬ              国立市  水面叩 ⚫︎教室に漂っているのは 墨の香でしょうか  子どもたちの温かな髪の匂いでしょうか 壁にはいろんな「冬」がたくさん並んで ……… ☆迎春の肥後の赤酒これの香は亡き父母(ふも)四人をかたはらに呼ぶ              鹿井いつ子  『夢』  角川書店刊から ⚫︎作者は1944年 熊本県生まれ。四人とは 自分とご主人のご両親よったりのことでしょうか かつての懐かしい家族のなごりを 元旦の赤酒の香が呼び戻してくれるのですね ……… ☆ふいに来る下り急坂老いの冬              世田谷区  石川昇 ⚫︎よくわかります! じつに いきなり やつばらは足元にやって来るんですよね おたがい 寒さに負けずに… どうぞお元気で! ☆裸木の晒せる傷の光かな              杉並区  田中耀 ⚫︎向こう傷は じつは樹木たちもたくさん受けているんですよね    澄んだ冬の陽光が 静かなひとを慰めるように木肌に射している ☆お揃いのカップに注ぐココアかな              前橋市  木下美樹枝 ⚫︎定型中の定型 ではありますが(笑) 温かいココアはとてもおいしそうだし なかよしのご夫婦はのんびりと美しいし ☆熊笹に熊笹の影十二月              渋谷区  山口照男 ⚫︎一転 これは手だれのまなこが見つめた鋭い句ですね  あざやかな熊笹の影  最後のくっきりした体言止めが 効いてますね ☆落ち葉敷く熊はガサゴソうさぎカサコソ              沼田市  戸丸雅代 ⚫︎子どもが大好きな絵本みたいな 優しさあふれる秀句です。   冬籠りのこういう音が 山では本当に聞こえてくるんでしょうね ☆独居してカニカマ食ふやクリスマス              千代田区  岩佐なを ⚫︎お見事な一句だと思います カニカマとクリスマス! 脱帽です  (人生と詩と 長年の修練なしには出てこないうただと) ☆ちくわぶののさばつてをりおでん鍋              大田区  菊間きん子 ⚫︎これまた とびきりキレのいい女流の一句  ちくわぶの盛り上がる 熱々のおでん鍋が目の前に!   ……… 少女たちよ!
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