THE SUIMYAKU > 記事閲覧

研ぐ米の

1: KZ:2024/02/04 13:51 No.446
今週の『東京歌壇/俳壇』から  (東京新聞)


☆棚卸しだるいっすね、を言っていい先輩が辞めちゃってだるすぎ
            相模原市  遠藤健人

⚫︎たしかにね いやになるわなあ そんな状況!  よくあることだけど… 勤め人はつらいっすね

☆研ぐ米のシンクに落ちた数粒が悲しくさせる一人暮しは
            入間市  須田光子

⚫︎大きなことではなくて ほんの小さなその数粒こそが ひとりの悲しみを呼ぶのだと。
しかとこころのそこを詠んだ秀歌

☆母が怒鳴るときに口の中に香るバニラエッセンスがおいしかったな
            蕨市  井上稜太

⚫︎えらく怖いときに それを柔らげる心身の機制がきっと発動するんでしょうね。
バニラエッセンスがおいしかったと。人間は不思議だなあと思います

☆日没に置いて行かれて不自然な転調のある母の鼻歌
            文京区  小亀令子

⚫︎子どもは本当におかあさんの一挙手一投足まで見つめているんですよね  ああ 鼻歌まで転調したぞと。  愛しているんですよ つまりは

☆資本主義経済の中の〈すごい〉には含まれていないすごい夕焼け
            富士見市  松本尚樹

⚫︎さぞや豪奢な夕焼けだったんでしょうね🌆
私も見てみたかった そのcapitalism の外の夕空を

☆しばらくは暮らしてみるからそれらしい由来ができたら耳打ちをして
            大阪府八尾市  瀬戸口祐子

⚫︎これだけでは何が何やらさっぱりなのですが… いつのまにかその「由来」を じっくり聴いてみたくなるような不思議な歌です。 
歌全体が 心の揺れの暗喩になっているような気がします。

………

☆老人の乱歩を読むや褞袍(どてら)着て
            川口市  高橋まさお

⚫︎ほんとうに着てるかは別にして いかにも似合いそうな読書風景ではあります。
乱歩が天井裏で笑っていそう

☆的までの長き一秒弓始
            中野区  中村弘一

⚫︎年の初め 緊張の第一矢
 澄んだ寒気のなか 静かな武者震いが伝わってくるようです

☆買出しのついでに映画小晦日(こつごもり)
            港区  奈良雅子

⚫︎年の暮れのあわただしさ その隙間の小さな息抜き!   良い句ですねえ

※ こつごもり
大みそかの前日。陰暦では12月29日、陽暦では30日。《季 冬》「翌 (あす) ありとおもふもはかな小晦/蝶夢」   (デジタル大辞泉)

☆二日はや吾子は夜勤の白衣着て
            埼玉県日高市  稲子禮子

⚫︎正月も 早い始動なんですね  無事で行けよと母の声

☆歯の抜けし小学生と初笑
            練馬区  木津川珠枝

⚫︎スカスカの歯と大笑い  まあまあ 楽しそうなお正月ですねえ

☆蓆(むしろ)目の着きし丸餅届きけり
             茅ヶ崎市  清水呑舟

⚫︎田舎はどちらでしょうか  懐かしくておいしい丸餅の蓆目よ

☆思へども言はず福笑ひの空似
             府中市  佐野一郎

⚫︎言わずに我慢しすぎると苦しいでしょう(笑)
 読んでるだけでも吹き出しますからね(笑)

☆雪礫(つぶて)人気投票のごとく飛ぶ
             横須賀市  丹羽利一

⚫︎ワーワーと遊んでいるうちに ふと気付くと… ということでしょうか   不思議なものですね 雪合戦も

☆とりあへず立つてはみても冬籠
              神奈川県大和市  今関十三里

⚫︎えいやと立ってはみたが、さてこの冬をどうしよう…
 生きまどい、行き惑う姿を一筆に詠んで まさに秀逸 

………

  


Powered by Rara掲示板