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木山捷平(1904〜1968)の詩

1: KZ:2024/02/03 13:32 No.445
『木山捷平全詩集』 (1996年 講談社文芸文庫版)

  第一詩集 『野』から  (初出 1929年 自費出版)
 

腰巻

田植が来た。
オカア!
腰巻を一つ買うておくれ。
七つも八つも
つぎのあたつてゐるのをしてゐては
若い衆に見られた時
わしやはづかしいもの。
のう、オカア!
オトツツアンにたのんで
腰巻を一つ買うてもらつておくれ。

                (昭和・2年)

雀よ言ふな

野良からの帰りに
たうきび畑の中であつてゐたら
雀が見に来た。

雀よ
言ふな
誰にも言ふな。

お前が言うたら
わしも言ふぞ、
竹やぶで見たあのことを。

               (昭・3)

ふるさと

五月!
ふるさとへ帰りたいのう。
ふるさとにかへって
わらびがとりに行きたいのう。
わらびをとりに行つて
谷川のほとりで
身内にいつぱい山気(さんき)を感じながら
ウンコをたれて見たいのう。
ウンコをたれながら
チチツ チチツ となく
山の小鳥がききたいのう。
                 (昭・3)


………


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