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今も心に棲む人へ

1: KZ:2024/01/21 13:25 No.435
今週の『東京歌壇/俳壇』から  (東京新聞)

☆水仙の花瓶のみずは濁るけど、だいじょうぶ、ここは怒ったりしない国
            杉並区  田中耀

⚫︎ほめ言葉ととりたいのですが…。
 小さきものへの愛が まだ生きている国なのだと

☆微睡と現実をゆきつもどりつし猫が死ぬのを待つ木曜日
            杉並区  半澤泉

⚫︎いずれ来るその時  わかってはいても やはりつらい別れですね。 まどろみとうつつの中で… そういう長いさよならが かつて私にもありました。

☆下り坂、ライトをつけて、自転車で どうも私が流れ星です
            川崎市  山田香ふみ

⚫︎長い坂道で いっきょに流れ星になる… 爽やかで愉しい下の句の滑走に乾杯❗️

☆ふゆの夜の管制官が空港にならべる星座を君と見ている
            八王子市  内山佑樹

⚫︎凍て付く真冬の空港で。でもそれだから 星座はなお輝く 忘れられない夜になる

☆まず、そっとあなたは栞紐を放つ ねぐらの龍を起こすみたいに
            宇都宮市  霧島あきら

⚫︎パワフルな龍…それはどんな本なんでしょうね
 ページを開く小さなときめき、胸さわぎ   読書の醍醐味 

☆両腕に娘を二人ぶら下げて父が重機となる日曜日
             横浜市  友常甘酢

⚫︎それはたしかに重そうだけど、 だいじょうぶ 日曜日のお父さん重機はとても嬉しそうです

☆剣道を習い始めし子のためにユーチューブで見る袴の着方
             北区  土居文恵

⚫︎初々しい剣士誕生のとき  今度はお母さんが嬉しそうな歌

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☆髪切つて五感全き夏に入る
              能美茅柴  『悠紬』 から

⚫︎どこからの風もしっかりと感じられる  さあ夏の準備はできたぞと。

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☆年賀状今も心に棲む人へ
              牛久市  中村榮子

⚫︎美しい句ですね  小さな熾のように今も心に棲む人へ 思いを送る  (やはりsns では できないことなんでしょうね)

☆掌の座り心地や寒卵
              横浜市  山田知明

⚫︎心地よく掌に収まる卵だなと。さてそうなると 卵の方も居心地を楽しんでいるようなのです。不思議な両者のあわい
私は かつて好きだったモーリス・メルロ=ポンティの認識論(セザンヌ論 『眼と精神』など)を思い出しました。見る・見られるという関係の中で やがて人はその実存に気づく。形式的な主語は影を潜め 世界は意味に満ちた織物となってゆく。

☆乗って来た箒で魔女が落葉掃く
              武蔵野市  相坂康

⚫︎世のアニメ好きには たまらない句なのでは。こんなふうに落ち葉を掃除してくれたら どんなに楽ちんなことでしょう!

☆来年は赤が好きかも日記買う
              国立市  水面叩

⚫︎さぞやきれいな赤(表紙)なんでしょうね  手にするだけでワクワクするような
 鮮やかな 良い年になるといいですね

☆熱燗の熱さが顔に乗り移る
              甲府市  村田一広

⚫︎凍えて辿り着いた居酒屋で ようやくありついた一献  真冬の呑助には忘れられない熱さが 喉元をゆっくりと過ぎてゆく

☆カムヒヤと犬呼ぶ男大晦日(おおみそか)
              江東区  媚庵

⚫︎特別な気分の日にふと出会った犬と男  その呼び声まで なんだか特別に聞こえる不思議

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