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「転機の金融政策」を考える(2)
二村 重博 投稿日:2024年03月18日 23:13 No.392
 2 3名の専門家の見解

 (1)北坂真一氏の見解
前回を参照のこと

 (2)関根敏隆氏の見解
 アメリカの経済学者のジョン・テイラーが、1993年に政策金利について一つの道標となる次のような計算式を提案した。
政策金利 = 中立金利 + 現実のインフレ率
+ a×インフレギャップ(率)+ b×需給ギャップ(率)
        (ただし、a, b はプラスの値)

関根氏はこの式を「実際の使い方としては、限界を理解しながらも、あまりに大きく、しかも長い期間にわたり、政策金利がテイラー・ルールから乖離しているときは、これでよいかどうかを政策当局者が自問自答するのに使うということ」として、日米の1985~2023年のテイラー・ルールで導かれた政策金利と実際の金利との比較を試みている。
 アメリカの実際の金利は、2010年ごろまではこのルールに沿っていたが、その後10年ほどはこのルールの値より下回っていた。2021年以降はコロナ禍、ウクライナ戦争のためインフレ率が急上昇してテイラー・ルールとは大きな乖離があったが、最近は金利が引き上げられてテイラー・ルールに近いものになっている。
 日本の場合、テイラー・ルールの金利は90年代末から2013年にかけて、さらに2020年から22年にかけてマイナスであったが、「23年以降に様変わりし、インフレ率の上昇に伴い政策金利がテイラー・ルールを下回るという方向で大きく乖離している」とし、「今後の物価動向次第ではあるが、四半世紀にわたり続けてきた『ゼロ金利との闘い』を終えるという金融政策の大きな転機を迎える可能性が高いことを、テイラー・ルールは示しているようにみえる」と結んでいる。

 (3)福井真夫氏の見解
 福井氏の論点は、日銀のマイナス金利政策によって円安になっているが、通貨安や通貨高が経済にどのような影響を与えるかについての学術的な合意がないので、それに対する提示を試みることにある。
 福井氏たちは、対ドルで固定相場制をとる国(49カ国)と変動相場制をとる国(G5を除く101カ国)に分けて1985年のプラザ合意以降の動きを比較した。そして「85年からの5年間で、固定相場制の国の通貨は変動相場制の国の通貨に比べて10~20%ほど安くなった」こと、「プラザ合意から5年後、固定相場制の国の実質GDPは変動相場制の国よりも7.5%程高くなった」ことを見出した。そして、「固定相場制の国の経済パフォーマンスが変動相場制の国を大きく上回ったのは、通貨安によりもたらされたと考えられる」と結論付けている。その後のデータとも比較して、通貨安が長期の好況をもたらし、好況を導いたのは輸出の増加ではなく消費と投資の増加でありそれに伴う輸入の増加であった、さらに産業別には、増加したのは製造業ではなくサービス業だった、と結論付けている。
 つまり、通貨安 ⇒ その国の株式や不動産の資産は割安に映る ⇒ 資本流入 ⇒ 資産価値の上昇 ⇒ 資産効果を通して消費と投資を刺激 ⇒ 輸入の増加 ⇒ 国内向け産業であるサービス業が潤う、というように「通貨安は輸出などの財の取引を通じて経済を刺激するのではなく、株や不動産などの資産の取引を通じて経済を刺激する」と主張する。そして、「日銀や政府は過去の政策検証をするなかで、為替相場が国際資本取引を通じて実体経済に与える影響にも十分見配りすべきだろう」と結んでいる。



4期生 うすい 投稿日:2024年03月20日 07:05 No.393
二村先生、ご講義ありがとうございます。
日銀がマイナス金利政策解除を発表した歴史的転換点にあり、正に絶妙なタイミングです。

通貨安 ⇒ その国の株式や不動産の資産は割安に映る ⇒ 資本流入 ⇒ 資産価値の上昇 ⇒ 資産効果を通して消費と投資を刺激 ⇒ 輸入の増加 ⇒ 国内向け産業であるサービス業が潤う、というように
「通貨安は輸出などの財の取引を通じて経済を刺激するのではなく、株や不動産などの資産の取引を通じて経済を刺激する」の主張と、

二村先生の「ミクロ理論では、企業は安く資金が調達できるので投資を拡大して利潤追求の努力をするよりも、企業の安定を目指してリスクをとらなくなり、投資等を控えようとするかもしれない。」

いづれのご意見も財の取引に資金が流れない点が共通しています。日本では資金が実物経済に向かわない為賃金分配に進みづらく、結果としていつまでもカネ(マネー)のみが天下を回り続けるが、景気全体が盛上がっていない現状が良く理解できます。



5期生 ひろせ 投稿日:2024年03月20日 21:03 No.396
 先生、ありがとうございます。

 まさにタイムリーなご投稿です。

 昨日の日銀総裁の発表周辺の情報では市場金利にすぐさま影響はないように伝えられていましたが、市場の反応は思惑とは違うことも大いに起こります。預金利息もすぐに反応しましたので、影響がないよと言われている住宅ローン金利だってジワジワ変化するのではないかと想像しています。



5期生 ひろせ 投稿日:2024年03月22日 12:34 No.398
 今日も株価は上昇傾向。

 しかし、それより大谷翔平選手の通訳による賭博・横領事件の方に世間の注目が集まっています。





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