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景気拡大に対する自信のピークは、景気が転落する直前にやって来ることが多いと指摘した(新たな「狂騒の20年代」が話題になることが増えているものの、1920年代は良い終わり方をした時代ではない)。 これまで同様、心配すべき理由はある。民間市場でほとんど監視されることなく融資を行う「シャドーバンク(影の銀行)」の出現と急速な成長は、多くのエコノミストや保守的な規制当局を不安に陥れている。
B層ホイホイ 投稿日:2024年04月24日 05:34 No.8618
「もう不況は来ない」アメリカで広がる強気な理論 経済の常識「好況と不況の循環」は消えた?
The New York Times
https://toyokeizai.net/articles/-/748998
近代史の大部分において、最も豊かな国々においてさえも、経済の拡大と暴落はあたかも四季のごとく周期的に繰り返されてきた。

しかし、経済学者やウォール街の著名なエコノミストの多くが、自分たちが学校で学び、実際に目撃してきた手に負えない景気循環は、本質的に以前よりおとなしい野獣に姿を変えたのではないか、といった議論を提起するようになっている。
落ちることのない周回軌道「衛星」理論

投資会社ブラックロックで約3兆ドルの資産を運用するリック・リーダーもその1人だ。

「アメリカ経済がどのような着陸を見せるかに関して多くのことが語られている」。昨年夏、リーダーはクライアントに宛てた文書で、アメリカ経済はクラッシュするのか、それとも低インフレ、低成長、比較的低い失業率の「ソフトランディング(軟着陸)」を達成するのか、という問題をめぐって一般に用いられている「着陸」の比喩を持ち出して、こう続けた。

「だが、1つ心にとどめておくべきことがある。それは、衛星は着陸しないということだ。(アメリカのような)現代の先進国経済に対する例えとしては、こちらのほうが適切かもしれない」。要するに、経済の落ち込みは今後、より安定した軌道の中で起こるということだ。

外部からの混乱(経済学者が「外因性ショック」と呼んでいるもの)が起こったり、インフレ率の再拡大を受けたFED(連邦準備制度)の引き締めで景気が後退したりする展開とならなければ、現在のような旺盛な景気拡大局面が、月単位ではなく年単位で続く可能性があることを指し示す証拠もそれなりにある。



JPモルガン・アセット・マネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト、デビッド・ケリーは、3月11日の投資家向けレターで、ライダーの「衛星」論に極めて近いことを述べている。

「経済記者や市場ストラテジストたちは、私たちが景気循環サイクルの初期、中期、後期のどこにいるかを論じることが多い。だが、そのような見方は、アメリカ経済の動きに関する時代遅れのモデルに基づいている」
農業・製造業化型経済から消費主導型へ

全米経済研究所(NBER)によると、アメリカ経済は1850年代から1980年代初頭までの間に平均して18カ月間の不況を30回経験したのに対し、不況の合間の景気拡大期は平均して33カ月にとどまっていた。

このようなパターンとなっていたのは、ケリーらエコノミストたちの説明によれば、景気循環性の高い産業、すなわち現在では国内総生産(GDP)の一部にしか過ぎない製造業と農業が、かつてはアメリカ経済の主軸だったことと関係している。

製造業は現在、GDPのうち約2兆3000億ドルを占め、約1200万人を雇用し、間接的に別の分野の国内雇用を支えている(例えばマッキンゼーの試算によると、製造業の雇用1件につき関連産業で7~12件の新規雇用が生まれるとされる)。

しかし、消費主導型となった現在のアメリカ経済の大部分は、サービス業(ヘルスケア、自動車修理、ネイルサロン、カスタマーサービスなど)で構成されており、その規模は30兆ドル近くに達する。



今では、モノの生産の拡大や縮小が経済に与える影響は以前より小さくなっているということだ。家計の総支出が近年比較的安定していることは、アメリカが不況を回避できている重要な要素となっている。

リーダーは顧客向けの書簡の中で、現代のアメリカ経済は、昔ながらの好不況のサイクルにさらされにくくなっている、と論じた。豊かな消費者のサービス志向が強まり、工場や農場に対する依存度がかつてないほど下がったというのが、その主な理由だ。消費支出は経済全体の約70%を占めるようになっている。

「何らかの巨大な経済的ストレスでもない限り、消費はそこまで大きく変化しない」とリーダーは言う。

リーダーの「衛星」理論を支持するデータの1つは、新型コロナウイルスのパンデミックが世界経済の足かせとなる前には、経済の広範な弱体化は起こっていなかった、というものだ。

これは、現在のトレンドと整合性がとれている。1980年代初頭以来、景気後退は4回しか起こっておらず、平均期間も9カ月なのに対し、景気拡大局面の長さは平均して104カ月となっている。

現在の雇用の伸びも今年4月で40カ月目に入っている。
新「狂騒の20年代」? 元祖は大恐慌で幕

カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスの学部長アン・ハリソンは「余計なことを言って、この好況を台なしにしたいわけではないが」と取材に語り、景気拡大に対する自信のピークは、景気が転落する直前にやって来ることが多いと指摘した(新たな「狂騒の20年代」が話題になることが増えているものの、1920年代は良い終わり方をした時代ではない)。

これまで同様、心配すべき理由はある。民間市場でほとんど監視されることなく融資を行う「シャドーバンク(影の銀行)」の出現と急速な成長は、多くのエコノミストや保守的な規制当局を不安に陥れている。

商業用不動産業界関係者の間では、オフィス空室率の上昇が地域経済や政府予算に及ぼす悪影響は始まったばかりに過ぎない、といった声も聞かれる。

それでも、JPモルガンのケリーは、アメリカの景気拡大が今後も長続きし混乱もあまり生じない、と考えられるさまざまな根拠を挙げている。まず、大恐慌後に導入された連邦預金保険制度により、銀行の危機や破綻が激減したこと。

製造企業の在庫水準情報が大きく改善したことで在庫サイクルが「飼い慣らせる」ものとなり、大量解雇につながりかねない需給のミスマッチを防げるようになったこと。

さらにケリーは、国際貿易の拡大によって内需鈍化の影響が相殺されるケースが増えている、とも指摘する。インターネットのおかげで、企業は世界中から顧客を見つけられるようになった。そして、サービス分野の成長により「経済の安定度が増し、金利の影響を受けにくくなったことが重要だ」と結論づける。
アメリカ経済は世界経済へと化す

市場アナリストの中にはビアンコ・リサーチのジム・ビアンコのように、アメリカ経済はそのダイナミズム、多様性、規模において、世界経済そのものに似てきたと考える者もいる。世界経済は通常、生産に巨大なショックが生じたときにしか縮小しない。

世界金融危機と新型コロナ禍は、わずか10年の間隔で起こり、世界的な景気後退を引き起こした。この事実は、まれにではあったとしても、こうした大混乱が偶然連続して起こる可能性がないわけではないことを示している。

つまり、好況が長続きする保証はない。その一方で、新型コロナ禍によって記録が断ち切られるまで、およそ30年間不況とは無縁だったオーストラリアのような例も存在する。

(執筆:Talmon Joseph Smith記者)
(C)2024 The New York Times




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