大楠先生へ質問


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無題
藤原 投稿日:2020年07月18日 15:01 No.24
大楠先生
いつもお世話になっております。臨床検査技師の藤原です。
第8回ウェブセミナーの内容に関して質問させてください。

Cardiobacteriumの尿素分解能についてなんですが
C.hominis  (-)
C.valvarum  (-)となっていましたが

臨床と微生物 2019年9月の本「検出はまれだが知っておくべき細菌・真菌」のCardiobacteriumでは
C.hominis  (+)
C.valvarum  (-) となっていました。

他の資料でも探したのですが尿素分解能だけ載ってなかったりと苦戦しております。
どちらで理解した方がよろしいでしょうか?お手数をおかけしますが、ご教示お願い致します。


大楠清文 投稿日:2020年07月20日 11:12 No.25
藤原様

 いつも細かな性状をご確認いただき、感謝申し上げます。臨床と微生物2019年9月号「検出はまれだが知っておくべき細菌・真菌」もご確認いただき、ありがとうございました。この雑誌のCardiobacterium hominisも私が執筆しましたが、こちらから雑誌社へ提出した表を確認したところ、以前に菌トレ8回目で紹介したように尿素分解は陰性で提出しており、その下のフルクトースが陽性であるべきところを陰性となっていますので、編集の段階でこれらのデータが入れ替わったようです。結論として、C. hominisの尿素分解は陰性です。このデータが記載されている論文を以下に示します。
https://jcm.asm.org/content/jcm/42/4/1590.full.pdf

 菌トレで何度かご紹介していますが、新菌種が記載されたときに何株でその菌種の性状が明示されているかをいつも注意しながら、実際の菌株の性状結果と比較することが重要です。例えば、今回お問い合わせのあったC. hominisの尿素分解が陰性とのデータは上記の論文に記載されているように、「1菌株のみのデータ」です。本来であれば、新種の登録では少なくとも約5菌株以上は必要なのですが、それだけの株数が集まるまで論文投稿できないことになるので、1株しか手元になくても新種論文の投稿が行われているのが実情です。したがって、仮に、ある性状が1株で陰性、5菌株すべて陰性、10菌株すべて陰性の3つの条件では、その菌種のその性状の結果「陰性」を反映している正確度が全く異なるということを理解して、論文を確認後に(何菌株のデータでその性状が陽性、陰性と記載されているのか?)、自分の目の前の菌株の性状とを比較・検討することが極めて重要です。さらに極端にいえば、C. hominisの尿素分解が陰性は本当に陰性かどうか1株しか試していないので本当のところはどうかか分かりませんね!というスタンスでいることも大切です。他の性状のデータとを総合的に判断することが肝要です。
 新たな菌種が提案・記載される論文は基本的にIJSEM誌ですが、上記のようにJCM論文で記載されて、後日にIJSEMで承認されることもあります。では、その論文をどのようにして参照するか?ですが、LPSNサイトを活用することがベストです。今回のCardiobacteriumでは以下のサイトです。
https://lpsn.dsmz.de/genus/cardiobacterium

 このサイトのなかで、C. hominisが最初に記載されて、その後、2004年にC. valvarumが新種記載されたことがわかるので、この新たな菌種の方の論文を参照すれば、様々な性状がC. hominisと比較されて掲載されているのでは?と考えて、このC. valvarumが登録された論文へたどり着く、そして自分が知りたいC. hominisの性状を入手するというプロセスです。
 以上のような考え方で今後、IJSEMサイトをご活用いただければ、自分のほしい情報を入手できます。
 今後もウエビナーの記載内容や性状をチェックしていただき、齟齬をご指摘いただけるとたいへん助かります。どうぞよろしくお願いします。




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