近畿植物同好会 掲示板
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スエコザサ
相良真佐美 投稿日:2023年09月29日 11:56 No.885
NHKの朝ドラ「らんまん」も最終回になりました。
9月18日、練馬区東大泉の牧野記念庭園に行きました。1926年から終の棲家としていた旧自宅跡地を、練馬区が改修し記念庭園として公開されています。

記念庭園は、ドラマのおかげで大盛況でした。展示室や、当時の本物をそのまま使った書斎の再現などは人だかりがしていました。
本物の顕微鏡、胴らん、筆などは特に注目が集まっていました。

入口を入った左手に、牧野富太郎の銅像を取り囲むように妻・寿衛子に感謝して献名したスエコザサが植えられています。

スエコザサは、アズマザサの変種で、葉は洗濯板のように波打ち、葉表に白い長い毛があり、葉の片側のフチが裏側に折れ曲がり、葉の先端部が軽くへこみます。

主に東北地方のもので、近畿地方では、自生していませんが、大阪公立大附属植物園や、京都府立植物園では常設展示しています。

ドラマでは『槙野日本植物図鑑』が完成し寿恵子も間に合って見ることができました。
しかし、史実では、大泉に引越ししたのが1926年、スエコザサ発見が1927年、寿恵子が亡くなったのが1928年でその後スエコザサが発表されました。
残念ながら『牧野日本植物図鑑』は1940年発刊なので、モデルの寿衛子は図鑑を見ていなかったことになります。


スエコザサの原記載文です。 藤井俊夫 投稿日:2023年09月29日 12:59 No.886
Makino,T. 1928. A Contribution to the knowledge of the flora of Japan. J.J.B. 5(2).7p.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/5/2/5_5_2_555/_pdf/-char/ja

●献命したことの理由まで、記載文に書いている(以下、原文から)
I have named this new bamboo in dedication to the late my wife Suwe-ko Makino
(died at theHospiatl of the Imperial UJniversity of Tokyo, February 23,1928),
Who let me always allow to the stud yof Plants by her private aid.

牧野寿衛子が死亡したのは、1928年2月23日
植物研究雑誌の発行は、1928年4月18日

基準標本は、都立大の牧野標本館(MAK)にあるようです。
Type: Miyagi (Rikuzen), Sendai, hills (T.Makino, Nov. 1927 [actually in 1 Dec. 1927], MAK).
1991年に八王子に都立大が移転してすぐ、学芸員試験受験のついでに、視察に行った。
(どっちが、ついでだろう?)


スエコザサの線画と彩色画 植村 修二 投稿日:2023年09月30日 10:03 No.887
相楽真佐美さま、藤井俊夫さま

 このところ、録画で『らんまん』をみてたのですが、今日は久しぶりに放送時間にみました。

 最終回では、スエコザサの線画と彩色図がドラマに登場します。しかし、牧野図鑑にスエコザサは載ってなかったように思います。間違っておれば、お許しください。

 スエコザサのことは、かなり前から名前は知っておりましたが、どんな植物か知ったのは、室井 綽1969『竹・笹の話 よみもの植物記』(北隆館)に載っていた線画を見てからでした(実物はまだみておりません)。

 藤井さんが紹介された原記載にも図がないようなので、この番組のために新たに用意されたものかもしれませんね。

 ササ類の分類は、日本で発表された和名が多すぎ、私には和名を聞いただけで、種なのかそれ以下のランク(変種とか)、あるいは雑種なのか検討がつきません。

 今年の夏、近畿植物同好会の長野観察会でお世話になりました藤田淳一さんに誘われて、富山県立中央植物園で行われた植物勉強会に参加してきました。この会は、司会もいなく、やりたい人が発表するというもの。

 その中で、ササの和名について、とってもユニークな発表がありました。

 ササ類の分類の決め手となる毛の有無を4つの部位で示す命名法でした。「こんなのとても学会では発表できないな!」と私は正直思いました。この命名法でいきますと、コンゴウザサは4つすべての部位(葉の裏、節、葉鞘、稈鞘)にケがあるネザサの仲間なんで、ケケケケネザサとなるらしい。

 この命名法では、スエコザサはケナナナアズマザサ(ナ:毛が無いという意味)となります。これでは、槇野万太郎さん、寿衛子さん、がっかりですよね。

 『らんまん』について、なかなかタイムリーに投稿できなかったです。藤井さんが書いておられましたが、関連する画像が未整理なんで、捜すのが大変なんです。

 これからも、『らんまん』のシーンを思い出しながら、画像を探し投稿したいと思います。


スエコザサの線画などについて:鈴木貞夫。1996.日本タケ科植物総目録。 聚海書林。に載っています 藤井俊夫 投稿日:2023年09月30日 15:18 No.888
スエコザサの線画などについて

NHKのらんまんは、ドラマです。現実とは違うことをわきまえた上で鑑賞すべきです。
図鑑に載っているかどうかを知りたければ、NHKに問い合わせればよいと思います。
または、図鑑の版元である北隆館か?
牧野が描いた図を使用したとは限りません。

以下のsiteに不鮮明だが、鈴木(1996)のスエコザサの線画が掲載されています。
鈴木貞雄。1996.日本タケ科植物総目録。 聚海書林。
http://syokubutsunote.web.fc2.com/HP14/takeakakensakuhyou.html
****************●タケ・ササ類の分類・記載●******************************************
●種の記載については、国際藻類・菌類・植物命名規約(Wikipediaを参照)に詳しく定義されています。
植物画が必要とはどこにも書かれていません。
ラテン語による記載、正式な出版物(印刷物)などの条件が記載されています。基準標本の指定なども。
最近は英語などの言語で、online出版も認めるようになりました。
牧野が記載した当時は、このような厳密な規定はなかったので、無効名や裸名などの学名が多数発表されていました。

●竹、笹の分類について
イネ科(Poaceae)には700属8000種があるとされます。(Wikipediaより)
①Pooideae(イチゴツナギ亜科)、
②Ehrhartoideae(エールハルタ亜科)、
③Bambusoideae(タケ亜科)の3亜科に分類されます。
タケ亜科には90属1400種が所属するという。(Flora of Chinaより)
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=20753
**************●日本のタケ・ササ類の属●********************************************
●タケ亜科の日本の主な属
① Arundinaria Michx.(アズマザサ属: First published in Fl. Bor.-Amer. 1: 73 (1803))
② Bambusa(Schreb.ホウライチク属:First published in Gen. Pl., ed. 8[a]. 1: 236 (1789))
③ Chimonobambusa Makino(カンチク属: First published in Bot. Mag. (Tokyo) 28: 153 (1914))
④ Phyllostachys Torr.(マダケ属: First published in Ann. Lyceum Nat. Hist. New York 3: 404 (1836),)
⑤ Pleioblastus Nakai(メダケ属: First published in J. Arnold Arbor. 6: 145 (1925))
⑥ Pseudosasa Makino ex Nakai(ヤダケ属: First published in J. Arnold Arbor. 6: 150 (1925))
⑦ Sasa Makino ex Nakai(ササ属: First published in Bot. Mag. (Tokyo) 15: 18 (1901))
★Flora of Chinaでは、東アジアに50-70種としている(分布は、中国東南部、朝鮮半島、日本)★
⑧ Sasaella Makino(アズマザサ属: First published in J. Jap. Bot. 6: 15 (1929))
⑨ Sasamorpha Nakai(スズタケ属:First published in J. Fac. Agric. Hokkaido Imp. Univ. 26: 180 (1931))
⑩ Semiarundinaria Makino ex Nakai(ナリヒラダケ属:First published in J. Arnold Arbor. 6: 150 (1925))
⑪ Shibataea Makino ex Nakai(オカメザサ属: First published in J. Jap. Bot. 9: 83 (1933))
⑫ Sinobambusa Makino ex Nakai(トウチク属:First published in J. Arnold Arbor. 6: 152 (1925) )
⑬ Tetragonocalamus Nakai(シホウチク属: First published in J. Jap. Bot. 9: 88 (1933))=synonym of Bambusa
*********●日本のSasa属の分類●*************************************************
●Sasa(ササ属)について
日本固有の植物と考えられた時期もあった。
冬季の多雪環境に適用した(雪に埋もれて冬を越す常緑性を獲得したと考えられている)、遺存固有(endemic)であり、そのような環境で新たに種が生じたとする新固有(neo-endemic)と考えられた。

●日本産の竹・笹類の分類は、牧野富太郎に始まり東大の中井猛之進、京大の小泉源一などが多数の新種を記載しています。
以下のsiteを参照。
ひとはくのタイプ標本 その⑥:2021年3月11日
バンシュウゴキダケのアイソタイプ(副基準標本):ゴキダケ(御器竹:語源はよくわかっていない。竹簾に使われたからか?)
https://www.hitohaku.jp/blog/2021/03/post_2784/
上記siteから引用。
●日本のタケササ類の分類は、日本における植物分類学の父と称される牧野富太郎によってまず属が整備され、中井猛之進東京大学教授(当時)と小泉源一教授(当時)により体系が整いましたが、1930年代から40年代にかけて両者が競うように新種を発表し、膨大な数の分類群が生まれてしまいました。
中井先生の発表された新分類群は約180、小泉先生はなんと380もあるそうです(鈴木1978)。
室井先生の発表された分類群も併せると、1960年代にはササ属Sasaが420種、アズマザサ属Sasaellaが140種、バンシュウゴキダケも含まれるメダケ属Pleioblastus は110種といった具合で、これらを見分けることは至難の業でした。
その700近くあった日本産タケササ類の種を整理したのが、鈴木貞雄氏でした。
鈴木貞雄氏(1996)の著した「日本タケ科植物総目録」は、日本のタケササ類研究の金字塔ともいうべき一冊です。
********●タケ・ササ類の標本●**************************************************
岩手大学農学部教授であった内田も多数の笹類標本を牧野に送り、新種記載をしています。
岩手大学の内田繁太郎教授のもとで学んだ室井綽は、日本竹笹の会・会長を務め、兵庫生物学会の会長も務めていました。

●岩手大学ミュージアム本館:植物標本室
http://www.museum.iwate-u.ac.jp/muzeum_honkan/honkan_herb.html
内田繁太郎(1885~1964 測樹学・森林保護学)とその教え子:室井綽によるタケ、ササの標本が多くあります。
ササ類の基準標本がある。紀要に目録が発表されていたはずです。
以下のsiteにスエコザサの標本写真が載っています。
https://readyfor.jp/projects/Tohoku_Botanical_Gardens

●東北大学のタケ・ササ類標本
広島大の鈴木貞夫が採集研究したタケ・ササ類の標本は、東北大学に収蔵されているようです。
画像からは、岡田要之助:陸前八幡見滝温泉:1927年12月3日採集とあるので、牧野がスエコザサを命名記載した基準標本とほぼ同時に採集された可能性があります。
広大の鈴木貞夫が同定しているが、type指定は行われていない。(1982年8月6日)
この後に、鈴木貞雄。1996.日本タケ科植物総目録。 聚海書林。が出版されています。
★そういえば、2020年3月に東北大で植物分類学会が行われるので、標本を見に行くつもりだったが、新型コロナの流行で大会が中止になったような....

***********●鈴木の「日本タケ科植物総目録」以降●***********************************************
1990年代になって、ようやく竹・笹類の分類が整理されることになりました。

鈴木貞雄。1996.日本タケ科植物総目録。 聚海書林。12800円。絶版。
小林幹夫。2017。原色植物分類図鑑 日本のタケ亜科植物.北隆館。23000円。
 絵解き検索や、分類形質の一覧表が着いているので、わかりやすいが、これで難解なタケ亜科が同定できるわけではない。

加藤雅啓, 海老原淳編。2011.日本の固有植物(国立科学博物館叢書, 11)。東海大学出版会, 3800円。
小林幹夫(宇都宮大名誉教授)が、タケ・ササを分担している。巻末に固有種の分布図が載っている。
開花個体の標本が少ないため、形態的な識別点が得られにくく、茎や葉の毛の状態などで識別せざるを得ません。
地域的なまとまりを根拠に固有種としているようです。

最近はDNAを使った識別も行われているようですが、形態的特徴が少ない、識別形質が限定されるなど。いかんせん、元サンプルの同定が容易ではないこと、種内変異が不明、集団間変異、集団内変異、個体変異などの基本的な検討さえできない状態です。
基準標本産地で、サンプルを採集するとしても、本当にその種なのかという疑問が常に付きまといます。
標本の採集時期によって、同一個体で形態形質(毛)の状態がどのように変わるのかの検討から始めないと以下ません。
季節や、栄養状態、環境条件(生育地の土壌、日照など)、で、形態形質が変わるのか、移植実験なども必要かもしれません。

昼から2-3時間かかったか?




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