近畿植物同好会 掲示板
★投稿用パスワードは不要です。誰でも自由に投稿できます。
| トップに戻る | 検索 | アルバム | 管理用 |

ツチトリモチの原記載、植物画、ついでにレプリカ展
藤井俊夫 投稿日:2023年09月11日 09:07 No.844
●ツチトリモチ(Balanophora japonica Makino)
原記載
B.M.T. 16: 212 (1902), p.p., 23: 23, t.2 (1909)
Fl. Nippon: 632, f. 1896 (1940)
Makino,T.1902. Observations on the Flora of Japan. (Continued from p. 202.) . B.M.T. 16(190):212-213.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jplantres1887/16/190/16_190_210/_pdf/-char/ja

Nom. Jap. Tsuchi-torimochi, tsuchi- yamamochi, tsuchi-mochi, yamadera-bozu, shozyo-dake.
和名:ツチトリモチ、ツチヤマモチ、ツチモチ、ヤマデラボウズ、ショウジョウダケ
Hab. Prov. TOSA (T.Makino !,T. Yoshinaga !, I. Nakamura !, M.Fujita !) ; Prov. Idzu (S. Okuno!) ; Prov. Higo (M. Murakami !, T.kawakami !) ; Prov. HYUGA (Y. Tanaka) ; Prov. Etchu ; Prov. SHIMOTSUKE (T. Uchiyama !) ; Anami-Oshima (T. Uchi yama !).
***********************************************************
●ツチトリモチ(ツチトリモチ科)
雌雄異株の寄生植物。雌株のみ知られる。ハイノキ科の根に寄生する。単為生殖によって結実する。

●植物発生進化学:読む植物図鑑 Plant Development and Evolution
ツチトリモチ属
https://www.nibb.ac.jp/plantdic/blog/?p=1120

藤井注:
「鳥もち」の材料として、古くから利用されてきているので、地方で様々な呼称があったようです。
地下茎をすりつぶして「トリモチ」を作ったとしています。
団子状の塊根がツチトリモチの根。この中に寄主の根が入り込んでいる。
通常のヤドリギやラフレシアなどと言った寄生植物とは全く逆の構造です。
ヤドリギなどは寄主の根や茎の中に自分の根を侵入させて栄養を横取りしている。
ツチトリモチは自分の根の中に寄主の根が埋没している。

**************************
●Linda Hall Libraryのsiteに、牧野「日本植物図鑑:1955」から、ツチトリモチの絵が掲載されています。
簡単な牧野の紹介もあります。
ADDRESS: 5109 Cherry Street, Kansas City, Missouri, 64110-2498, USA.

Linda Hall Library → News → Scientist of the Day → Tomitaro Makino
https://www.lindahall.org/about/news/scientist-of-the-day/tomitaro-makino
上記siteに、牧野富太郎の記事と、いくつかの植物画が載っています(2018.Apr.14)。
1955年に、北隆館から出版された「日本植物図鑑(改訂版)1955」の植物画から。
以下、2枚が掲載されています。

ナラノヤエザクラ(日本版Wikipediaを参照:カスミザクラの重弁花した変種とされる)
ツチトリモチ(上記、解説を参照)

***********************************************************
ついでに、以下の投稿で紹介されていたレプリカ展を駆け足で回ってきました。
NHK京都放送局で「らんまん」の植物レプリカ展示 伊吹寛子 投稿日: 2023年08月28日 19:17:22 No.816 【返信】

1.レプリカ展示(全景)
2.らんまんで使用した、植物レプリカ
3ー6..各種植物レプリカ


「らんまん」の植物レプリカ展 伊吹寛子 投稿日:2023年09月11日 11:13 No.845
藤井俊夫先生

「らんまん」のレプリカ展についてご投稿下さり、ありがとうございました。私も8月30日に参りました。とても感動したのですが、あまりに小規模なのに驚き、同時に皆様には珍しくないかもと思ったりで、いずれにしましてもご報告をサボってしまいました。

 藤井先生が全景をご紹介下さいましたので、欲張りすぎて少しピントが甘いですが、展示物の一部の拡大写真を投稿させていただきます。私自身はこのようなレプリカを初めて見ましたので、あまりの出来栄えに感動いたしました。なぜか植物に名札はついていませんでした。

 展示物の数は少なかったですが、私が行った時は入れ代わり立ち代わり常に5-6人の方たちが見に来ておられ、番組の人気の高さを感じました。ムラサキカタバミなどに「これ、家の庭にもあるけど、そっくりやわ~」と語り合っておられました。

写真
1枚目:ムラサキカタバミ
2、3枚目:コオロギラン
4枚目:ネジバナ
5枚目:オオバコ
6枚目:ホトケノザ


植物レプリカの作成用機材、作成手順など 藤井俊夫 投稿日:2023年09月11日 13:40 No.846
●真空注型器という機械があります
金型を作らずシリコンの型を使い、真空下で液状の樹脂剤を流し込んで成形する工法をいいます。
(気泡が発生しないので、細かな形状の再現が可能です。
手順
1.レプリカをつくる原型となる植物を葉、枝、花(花弁、雄蕊、雌蕊)、果実などに分解する。
2.それぞれのパーツの型どりした外枠(シリコンなどでつくる)を作成する。
3.外枠にシリコンなどの樹脂を流し込み原型と同じ複製をつくる。
4.複製を組み合わせ、色付けをする。

パーツに分解して型どり、組みたて作業、色付けなどの作業が企業秘密(長年の技術の積み重ね)で、1点作るのに数か月かかります。
レプリカは、注文を受けて作る、1点ものなので、高価になります。

****************************

●凍結乾燥で、現物をプリザーブド・フラワーのように乾燥させる方法もあります。
こちらは、凍結乾燥する機械の容量で、できる標本の大きさが制限されます。
巨大な冷凍庫のような器械です。庫内の湿度を下げて凍結したまま水分を抜くので、一つ作るのに数か月かかります。

ラフレシアなどは、海外に採集に行く旅費が加わるので100万円単位になると思います。
ひとはくの展示を作るのに、ボルネオで採集許可を取り、スタッフ数人で現地まで行って現物を採集するので、かなりの金額がかかっていました。
1990年ごろだからできたか?
以下は、展示ができたころの写真。実物を凍結乾燥後、樹脂に封入しています。
https://www.hitohaku.jp/exhibition/permanent/muse-ex1-5.html
凍結乾燥後、着色処理をし、長期間、光にあたっても変色しないような加工をしています。

追伸
ツチトリモチの原記載時の、牧野が描いた植物画を見つけました。
植物学雑誌の別の巻号に植物画だけ載せていました。
別件にして投稿します。


伊吹寛子 投稿日:2023年09月11日 14:13 No.847
藤井俊夫先生

先生の貴重なツチトリモチのご投稿の後に拙文を続けさせていただくことに躊躇いがあったのですが、申し訳ございませんでした。でも色々お教えくださいまして、ありがとうございました。

真空注型器について、確かにレプリカ展会場に先生の2枚目の写真に写っていますようにポスターがありましたが、あれだけでは私には全く分かりませんでした。お教えいただいて良く分かりましたし、凍結乾燥のことも良く分かりました。ありがとうございました。
色々な方法で展示が行われ、多くの人たちが実物に近い物に接する機会を与えられている幸せを思います。

今後とも宜しくご指導くださいませ。




お名前
タイトル
画像添付





編集キー ( 記事を編集・削除する際に使用 )
文字色