近畿植物同好会 掲示板
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大阪市で見つかったカモノハシガヤBothriochloa ischaemum (L.) Keng
植村 修二 投稿日:2023年08月24日 19:14 No.806
 先週日曜日<2023年8月20日>、大阪市立自然史博物館で行われた同定会に藤井俊夫さんが「カモノハシガヤが見つかった」として、ビニール袋入りの植物を持ってこられました。きっと、近くで採ってこられたのでしょう、そう思いました。

 カモノハシガヤはヨーロッパ原産の帰化植物で、東京大学植物標本室(Herbarium of the University of Tokyo: TI)に1936年に福岡県で採集された標本があるようで、千葉、東京、沖縄で採集されています。

 同定会の終了後、体温を超える暑さの中、藤井俊夫さんに生えている場所に連れて行っていただきました。

 道路と舗道との間の路面間隙に多く生えていました。

 カモノハシガヤの画像が茨木 靖ら『南のイネ科ハンドブック』に載っていますが、なんとなく同じ植物とは思えないです。穂の色がいろいろあるのかもしれないです。

 藤井さんが見つけられたカモノハシガヤは、穂の形も色も在来種カモノハシIschaemum aristatum L. var. crassipes (Steud.) Yonek.のように見えます。

参考文献
 茨木 靖ら2020:南のイネ科ハンドブック、文一総合出版.
 勝山輝男2023:日本で記録されたイネ科オニササガヤ属とモンツキガヤ属、横浜植物会年俸 (52):29-35.


相良真佐美 投稿日:2023年08月24日 21:00 No.807
>カモノハシガヤの画像が茨木 靖ら『南のイネ科ハンドブック』に載っていますが、なんとなく同じ植物とは思えないです。穂の色がいろいろあるのかもしれないです。

「南のイネ科ハンドブック」のカモノハシガヤについて、「植物研究雑誌 第96巻 第2号」の128ページの書評で、米倉浩司氏が129ページに、
『p. 74の「カモノハシガヤ」はカモノハシガヤではなくむしろp. 79と同じヒメオニササガヤではないかと思われる.』と述べています。

「植物研究雑誌 第96巻 第2号」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/96/2/96_96_2_11090/_pdf/-char/ja

ヒメオニササガヤ
http://syokubutukensaku.o.oo7.jp/zusyousai012.html


植村 修二 投稿日:2023年08月25日 11:40 No.808
相良真佐美さん

 そんな報告があったのですね。どうもありがとうございました。

 植物体の画像は、米倉さんと同じ意見で、これだけみれば、私もヒメオニササガヤにしてしまいます。ただ、穂の画像でみると、オニササガヤ属Dichanthiumではなく、モンツキガヤ属Bothriochloaになると思います。『南のイネ科』にでている植物は東南アジアなどを原産とする帰化植物オオモンツキガヤBothriochloa pertusa (L.) A. Camusかもしれないです。間違っていましたらごめんなさい。

 この仲間の同定は苦手で、以前、標本を預かったまま震災で失ったことがありました。

 


小穂の構造を調べるべきです 藤井俊夫 投稿日:2023年08月25日 17:34 No.813
写真では、生育環境、季節、成熟段階で異なる印象を持つことが良くあります。変異の極端な場合の写真が載っているかもしれない。
間違った写真が載っていることもよくある。
(インターネットで学名を使って、原産地の画像を多数閲覧すべきと思います)

イネ科の仲間は小穂の構造を調べることが必須です。
イメージに惑わされずに、顕微鏡を使って解剖してみるべきだと思います。
(記載している植物の説明とは全く異なっている写真が掲載されていることもよくあります)

以下、各種siteから、解剖図などを挙げます。
efolas@orgの、Flora of Chinaが、詳しい図を描いています。
******************************************
●Dichanthium aristatum (Poiret) C. E. Hubbard:オニササガヤ
sentence
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=200025243
★Fig.846.の、10.
http://www.efloras.org/object_page.aspx?object_id=95175&flora_id=2
http://www.soilcropandmore.info/crops/Grasses/Medio_bluestem/diar5_002_php.jpg
果実の画像がある

******************************************
●Dichanthium annulatum (Forsskål) Stapf:ヒメオニササガヤ
sentence
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=200025242
★Fig.846.の、1-9。
http://www.efloras.org/object_page.aspx?object_id=95174&flora_id=2
https://keyserver.lucidcentral.org/weeds/data/media/Html/dichanthium_annulatum.htm
果実の画像がある。

******************************************
●Bothriochloa ischaemum (Linnaeus) Keng:カモノハシガヤ
sentence
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=242308849
★Fig.851の、1-7.
http://www.efloras.org/object_page.aspx?object_id=95748&flora_id=2
https://sagebud.com/yellow-bluestem-bothriochloa-ischaemum
https://sagebud.com/cane-bluestem-bothriochloa-barbinodis
(Related Plantsの、Cane Bluestemの果実写真)
果実の画像がある
******************************************
●Bothriochloa pertusa(Linnaeus) A. Camus:オオモンツキガヤ
sentence
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=200024960
★Fig.852.の1-5.
花序の分枝が鳥足状ではないので、除外される。
******************************************
護頴表面の毛の状態(護頴先端部付近の毛の長短)
芒の屈曲位置(1ケ所か、2ケ所か:芒のねじれる度合い)などが区別点になると思います。

私の観察では、花序の下は無毛、芒は1か所で屈曲、ねじれも少ない。

オニササガヤ(Dichanthium aristatum):花序の下の軸は毛でおおわれている
ヒメオニササガヤ(Dichanthium annulatum):花序の下の軸は無毛である。果実は、芒が2回屈曲している。
カモノハシガヤ(Bothriochloa ischaemum):花序の下は無毛。果実は、芒が1回屈曲、ねじれは少ない。
上記、3種の中では、カモノハシガヤに最も一致すると思います。
(カモノハシガヤは、変種も入れて、synonymが30種近くもあります。これだけの変異がある植物を、たった1枚の写真で判断するのは危険です。)
Kew GaerdenのPOWOを参照。(Synonym listがある)

他に、候補植物があるなら、挙げてください。
検討します。
******************************************
Bothriochloa:熱帯から亜熱帯に30種が分布する。
Dichanthium:アフリカから南アジアにかけて、20種が分布する。
以上、Flora of Chinaより。
http://www.efloras.org/

分布はKew Gardenの、POWO(Plants of the World online)より
https://powo.science.kew.org/
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:295954-2#distributions
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:328302-2#distributions




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