近畿植物同好会 掲示板
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キレンゲショウマ
磯野久美子 投稿日:2023年08月10日 21:18 No.778
もう随分前ですが、田中光彦さんと剣山(標高1955m)に登ったことがあるという話をしていた時、キレンゲショウマは見ましたか?と聞かれ、リフトからそれらしいものは見ましたが、花は咲いていませんでしたと答えました。
あれからずっと気になっていたのですが、この8月5日にやっと念願が叶い、花を見ることができました。
しかもこの植物の学名はKirengeshoma palmata Yatabeで、命名者は朝ドラ「らんまん」の田邊教授こと矢田部教授。来週はちょうどこのキレンゲショウマの話のようで、なんてタイムリー!

5~6日の剣山(別名:太郎笈)も6日の次郎笈(標高1930m)も雨で、とりわけ5日の登りはカッパを着ていると熱中症になりそうでしたし、景色は2日間とも見事になんにも見えませんでしたし、写真もきれいに撮れませんでしたが、もうこのキレンゲショウマの花を見ることができただけで、十分満足しました。

キレンゲショウマはどこにでも生えているわけではありませんでした。大群落は主たる登山道から離れた行場近くの足場の悪い所にありました。
最初に剣山に登った時は9月で、キレンゲショウマの花期ではなかったということもあるのでしょうが、石鎚山との抱き合わせツアーだったためでしょう、剣山の方はささっとリフトで往復しただけで、この大群落のある所までは行っていなかったのだと気づきました。
改めてネットで調べてみたら、下りリフトの中腹(リフトの敷地内)にリフトの職員さんが育てたものが見事に群生していると、ヒュッテの方が書いておられ、私が初回に見たのはこれだったんだと思いました。

今回はリフトを使わず、全部歩いたので、キレンゲショウマ以外にも色々な花を見ることができました。
また、折角頂上直下で泊まったのに、満天の星も夕焼けも朝焼けも見ることができませんでしたし、なんにも見えない雨の中を一応散歩に出てはみたもののすぐに引き返して来たので、山小屋の本棚に置いてあった剣山の植物図鑑をゆっくり読む時間がありました。
登山道に沿ってずっと咲いていたのはトゲアザミ、タカネオトギリ、イヨフウロ(別名シコクフウロ)。
少し低い所にはカニコウモリの大群落やミゾホオズキ、バイケイソウ。
キレンゲショウマの群落の辺りにはナンゴククガイソウ、ギンバイソウ(ピンク色っぽい)、ヒメフウロ、キツリフネ、シコクブシ(まだほとんど蕾。紫の花は1個体しか遭遇せず)、ツルギハナウド、ゼンテイカ。
剣山山頂~次郎笈山頂ではコモノギクがポツンポツンと咲いていました。

イヨフウロの花には雨の中で遠くから見てもはっきり分かる濃紫紅色のまるで蝶の羽のような網目模様がくっきりと入っていて、パッと見た感じがハクサンフウロとは全く違いました。改めて写真を見比べてみると、ハクサンフウロはピンク色の濃淡はあるものの、どれも網目模様ではなく筋状の模様がうっすらとある程度で、イヨフウロより優しい感じに見えました。学名を見て、両者は別の種なのだと知りました。

帰りに奥祖谷の二重かずら橋に寄りました。
この「かずら」が一体何なのか気になってネットで調べると、徳島県の観光情報サイトに「高山に自生しているシラクチカズラ」と書いてあり、これは「サルナシ」の別名だと分かりました。
「サルナシ」については小さなキウイフルーツみたいな果実が生るつる植物といった程度の認識しかなかったので、こんな橋に使えるほど太く頑丈な材になるとは大変驚きました。
ウィキペディアには腐りにくいとも書いてありました。

写真撮影日 いずれも8月5日
写真6枚目は別群落。手前はツルギハナウド。


(つづき) 磯野久美子 投稿日:2023年08月10日 21:23 No.779
結構な雨で、ここに載せたのが一番マシというひどい写真しか撮れていませんが、キレンゲショウマ以外に印象に残った植物の写真です。(  )内は撮影日。
1枚目 トゲアザミ(8月6日)
2枚目 ヒメフウロ(8月5日)
3枚目 上:ツルギハナウド、下:ギンバイソウ(いずれも8月5日)
4枚目 イヨフウロ(シコクフウロ)(8月5日)
5枚目 上:コモノギク、下:タカネオトギリ(いずれも8月6日)
6枚目 サルナシ(8月6日)


キレンゲショウマなど、ソハヤキ要素の植物について 藤井俊夫 投稿日:2023年08月11日 21:54 No.780
●ソハヤキ要素の植物(wikipediaなどを参照)
キレンゲショウマ(紀伊半島、四国、九州:絶滅危惧II類)。矢田部良吉が命名(1890)。
  中学生ぐらいのとき、家族旅行で石鎚山へ行ったとき、見たいと思ったが、かなわなかった。
ギンバイソウ(関東以西:本州南部、四国、九州)マキシモビッチが命名(1867)。
コモノギク(近畿南部、四国)牧野富太郎が命名(1898)。
タカネオトギリ(四国、九州)牧野富太郎が命名(1898)
★上記植物は、ソハヤキ要素の植物。

●以下は、広い意味でのソハヤキ要素と考えられる
イヨフウロ(分布:本州の東海以西、四国、九州)松村任三が命名(1901)

●他の植物について。
トゲアザミ:中井猛之進が命名(1911)。ノアザミの変種で、トゲがするどい。鹿などの草食動物に対する防衛適応と考えられる。
ツルギハナウド:本田正次が命名(1943)。絶滅危惧Ib類(分布は四国に限られる)
***************************************
●ソハヤキ(襲速紀)要素関連の文献
単行本では、少し古いが、
前川文夫。1977.日本の植物区系。玉川大学出版部。があります。

●襲速紀要素:
前原勘次郎「南肥植物誌」(1931)の前書きで、小泉源一が使った言葉。
明確に定義されていないため、様々な解釈がなされています。
上記「日本の植物区系」で、定義づけられたと考えています。

●ソハヤキ型分布をする植物は、中国大陸の温帯域(雲南省周辺)を起源とする植物が多い。
堀田満。1974.「植物の分布と分化」.三省堂。p276-p27を参照。(絶版)。

●日本の固有植物についての概説
国立科学博物館(編)2011.日本の固有植物。東海大学出版会, 3800円

●ソハヤキ要素の植物
Wikipediaの「襲速紀要素」を参照。


テンニンソウ 磯野久美子 投稿日:2023年08月18日 00:43 No.789
剣山の状態をよく知る人からこんな話を聞きました。
●以前、剣山は色とりどりの花々が咲き誇る花の楽園だったが、テンニンソウ(鹿忌避植物)の単純群落が増え、至る所で石灰岩の崩壊がおき、花畑は消失して荒野と化した。
●キレンゲショウマの群落規模も、鹿害による大きな土砂崩れがあって随分小さくなった。
私は大きな群落だと感激しましたが、以前はあんなものではなかった。
さらに今は防鹿ネットに囲まれて見づらくもなった。

そう言えば、先日雨の中でも目立つ大きな群落があちこちにあり、なんだろうと思いつつ、花もなくてよう調べ切れずにいたのですが、これら(写真1~6枚目)がテンニンソウだったのでしょうか。違っていたら教えて下さい。
写真1~4枚目 剣山にて8月5日撮影
写真5~6枚目 剣山にて8月6日撮影
なお、1枚目では群落中にナンゴククガイソウやキツリフネの花もわずかに見られました。
2~3枚目は群落中にカニコウモリが少し見られました。


天涯の花 磯野久美子 投稿日:2023年09月19日 21:17 No.862
キレンゲショウマを一躍有名にしたという宮尾登美子の小説「天涯の花」。
剣山にキレンゲショウマを見に行く前に読んでおこうと思っていたのですが、結局帰ってからしか読めず、今日やっと読み終わりました。
しかし、読書中に小説の舞台となる剣山や次郎笈の景色や咲いていた花などが思い出され、登った後でかえってよかったかもしれないと思っている所です。
作者は体が弱くて、剣山の山頂も「気高くてお月さまの色をしているキレンゲショウマ」も実際には見ていないそうですが、「山の神秘と清浄」に子供の頃から憧れ続けて来たそうで、植物図鑑が宝物という山の花が大好きな少女を主人公とするストーリーにもぐいぐい引き込まれ、自然の美しさも厳しさも体験したかのようにうまく描かれていて、一気に読めました。
図書館に文庫本を予約したつもりが、ハードカバーの重たい本を貸してもらうことになり、やれやれと思いましたが、表紙がキレンゲショウマの花だったので、誠に勝手ながら文庫本でなくてよかったと思いました。
この表紙のキレンゲショウマ、写真かと思ったら絵とのことで、あまりに写実的で驚きました。拡大して見ると確かに絵でした。
画家の方が開花の時期に現地に足を運んで描かれた絵だそうですが、この絵のおかげで作者のイメージもぐっと拡がったのだそうです。


「天涯の花」の絵は、向きが不自然 藤井俊夫 投稿日:2023年09月20日 14:18 No.863
「天蓋の花」の絵は、咲いている角度が不自然に上向きです。
キレンゲショウマの花は、うつむき加減に咲きます。
絵を50度ほど回転してみました。


「天涯の花」の表紙絵 磯野久美子 投稿日:2023年09月20日 15:10 No.864
藤井様

ホントですね!
全然気づきませんでした。迂闊でした。
上向きというだけで写真ではない(真実ではない)ことが分かりますね。
私が8月10日にアップした写真でも全部下向きに咲いていますもんね。
この絵は画家の方が現地に実物を見に行って描かれたものだと「あとがき」に書いてありましたが、ひょっとすると、小説のイメージから天に向けて描きたくなったのかもしれませんね。
単なる写実的な絵ではなく、入魂の創作なのだと気づかせていただき、ありがとうございました。




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