近畿植物同好会 掲示板
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盛夏の巨椋池干拓地から
伊吹寛子 投稿日:2023年08月02日 20:37 No.772
日中の暑さに閉口して、最近は時々朝6時過ぎから巨椋池干拓地の田圃や、その近くの公園を徘徊しています。すでにイネが背丈40-50㎝になった田圃には水がない時もあり、田植えのころに見られた水中の生き物も姿を消しましたが、代わりに時々小さなカエルに道を遮られます。畦ではヒレタゴボウが鮮やかな黄色の花をつけ始め、エノキグサに小さな穂が見え、幸か不幸かクラピアの花が去年より広範囲で見られます。目の覚めるように鮮やかな青いツユクサの花に混じって、マルバツユクサも早朝には控えめな花を咲かせています。私の力では、なかなか珍しい植物は見つけられませんし、歩く範囲も600ha余の干拓地の田圃のホンの一角ですが、出会った中の数点について記したいと思います。

去年、この干拓地で田中光彦さんに教えていただいて初めて知ったニセシマニシキソウに、今年は干拓地内の別のところで一株だけ出会いました。巨椋池干拓地に詳しい方によると、その方がニセシマニシキソウを最初に同干拓地で見られたのはおそらく私が今回出会った場所の近くで2012年ということで、しかもたくさん見られたとのことです。もっとも当時はニセシマニシキソウが認識されておらずシマニシキソウと誤認されていたそうです。これからもあちこちで見られるのでしょう。気をつけて観察していきたいと思います。

珍しくはないですが、去年、この干拓地でコナギを見たときに、アメリカコナギもずいぶん探したのによう見つけませんでした。ところが、今年はアメリカコナギを何カ所かで見かけています。7月末の午前7時前に、数十個の蕾の中に白い花が一個だけ咲いているのを見て、1-2日で全部咲くだろうなと思ったのですが、同じ日の1時間後に再度見ると、蕾だった物がイネの足元に白い星を散りばめたように一斉に開いていて驚きました。開花時刻が7時から8時の間のようです。尚、この干拓地内で去年の観察会でお世話になった坂東忠司先生はミズアオイも見ておられますので、気をつけたいと思います。

キクモ?コキクモ?は、この春「近畿植物同好会々誌」第46号でご報告させていただいた経過で去年出会う幸運をいただき、その後、他の数カ所でも出会って観察に夢中になりましたが、今年もやはり気になって、去年の生育地を再訪しています。ところで、キクモとコキクモについて、角野康郎先生はキクモの果実が「無柄であることが…コキクモとの識別点」とご著書『日本の水草』に書いておられますが、続けてキクモに「稀に短い柄をもつ果実が混じる」と記しておられます。その「稀に」の存在はなかなか私には難題で、観察していたものがどちらか判断できませんでした。それが今年1月に大阪市立自然史博物館の横川昌史氏のお世話で角野康郎先生に標本を見ていただくことができて、コキクモと同定していただけました。とても感謝しています。

昨秋のイネ刈り後に、霜がおり始めても紅葉した葉をつけて健気に花も咲かせていたそのコキクモですが、流石に年末には枯れ、田植えまでには何度も耕作機に踏みつけられ土ごと混ぜ返され、畦作りのためにペタペタ叩かれたにも拘わらず、7月12日には水中葉がチラホラ見られ、現在、8月初めには見える範囲の10mほどに亘って、数多く生育しています。昨秋、無数に落ちた種子から芽生えたと思われますが、抜いてみた物の根のようすから、耕作機による土の撹拌を生き残った、去年の茎から芽生えた物もあるようです。

干拓地と共に近くの人工の向島中央公園も私がよく通う場所ですが、そこで見慣れないツユクサの仲間と思う植物を見ています。節から根を出すのはミドリハカタカラクサと同じですが、葉は大きく、先端で長さ7-8㎝、長く地を這う茎の葉は10㎝を越えています。日当たりが悪いからか葉は表も裏も緑ですが色が薄く、確実にコレと思える花が見られないので待っています。

また同公園のオランダガラシについて、今年5月に角野康郎先生にムラサキオランダガラシとご同定いただきました。

去年夏に出会った花で、まだ姿を見ないものがあり、新たに出会いたい植物もあり、今後も徘徊老人と通報されないよう気をつけながら様子を見ていきたいと思います。

画像1:ニセシマニシキソウ 2023年7月15日
画像2:アメリカコナギ 2023年7月31日
画像3:コキクモ 2023年7月15日 今年は去年ここには見られなかったウキアゼナが数多く見られる。
画像4:ツユクサの仲間 根のようす 2023年7月30日
画像5:同上 葉
画像6:ムラサキオランダガラシ 2023年5月21日  花の周囲に見られる池を覆う紫色のものは、ムラサキオランダガラシの葉。 そのそばの緑の丸い葉は、巨椋池由来のアサザ。同定していただいたあと、アサザの生育の妨げにならないよう、繁茂していたムラサキオランダガラシをかなり減らしました。




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