近畿植物同好会 掲示板
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外来のオオヤマフスマ
植村 修二 投稿日:2023年06月04日 11:11 No.666
 オオヤマフスマArenaria lateriflora L.は,やや冷涼な山地や亜高山帯に多い多年草とされている在来種です。日当たりのよい草地を好み、時には明るい林の中にも生えるようです。

 近畿植物同好会の長野観察会で宿泊したホテルルートイン塩尻の近くでは、帰化植物のフランスギク、ムシトリナデシコ、ハルジオンなどが生えている路傍の最前線の路面間隙にオオヤマフスマが生えている場所がありました。おそらく、外来の系統だと思います。

 この観察会の案内をお願いした藤田淳一さんのお話だと、ナガハグサの仲間(ブルーグラス)の輸入種子に混じって入ってきたオオヤマフスマの外来系統が長野県にあるとのことです。

 大阪府でもずっと以前に、和泉市信太山で清水千尋さんがオオヤマフスマを採集され、周囲の状況から帰化と話されていました。この個体は自宅で栽培しておりましたが、大阪北部地震で絶やしてしまいました。

 私がオオミミナグサに一応あてている植物が今回の観察会で見られました。この侵入経路も同じと思われます。藤田さんのお話だと、「田んぼの畦などにあったミミナグサは絶滅寸前なのだが、この外来の「オオミミナグサにあてた植物」をミミナグサとして収蔵された標本が多いとのことで、アノテーションカード(標本にコメントする用紙)を多数書いたことがある」と話されていました。

 ただ、私は「オオミミナグサにあてた植物」のいい画像を撮ることができませんでした。もし、今回の参加者で撮影された方がおられましたら、この掲示板に載せていただければありがたいです。


オオミミナグサの写真 福島いずみ 投稿日:2023年06月04日 16:00 No.668
オオミミナグサの写真です。長野から持ち帰ったものを今写真に撮ったのですが、こんなのでは役に立たないでしょうか。

植村 修二 投稿日:2023年06月04日 19:58 No.669
福島いずみさん

 外来のオオミミナグサの画像ありがとうございました。


藤田淳一 投稿日:2023年06月07日 10:56 No.676
植村 様

 5月27日の会の際に採集した標本写真を上げておきます。
 ご参考にして頂ければ幸いです。


植村 修二 投稿日:2023年06月09日 13:40 No.681
藤田淳一さま

 外来オオミミナグサの標本画像ありがとうございました。

 藤田さんには、近畿植物同好会の長野観察会で大変お世話になりました。お陰様で、長野県のフロラについて、野外でさまざまなことを学ばせていただきました。本当に感謝しております。参加された皆さん、満足して帰られたと思っております。


外来のオオヤマフスマとオオミミナグサ(学名も混乱していた) 藤井俊夫 投稿日:2023年06月09日 13:54 No.682
両種で、学名の混乱が見られます。

●オオヤマフスマ(花弁の先端は2裂しない。種子表面は平滑)
Y-listの学名
Arenaria lateriflora L.

Plant working listでは、Moehringia lateriflora のsynonymとされている。
Kew gardenの、POWO(Plants of the world on line)では、
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30124057-2/images
Flora of China:
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=200007053
(線画あり)

●オオミミナグサ(花弁の先端が2裂する。種子表面はコブ状突起がある)
Y-listの学名
Cerastium fontanum Baumg. subsp. vulgare (Hartm.) Greuter et Burdet var. vulgare (Hartm.) M.B.Wyse Jacks

Plant working listで,accepted.
Kew gardenの、POWO(Plants of the world on line)では、Cerastium holosteoides Fr.の、synonymにされている。
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:152312-1
Flora of China:
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=242000274
(線画あり)

★両種で、種子表面の模様が違う。
(Flora of Chinaの、イラスト参照)
まず、それぞれの種が、どの学名の植物を指すのか、明らかにするところから始めないと、何を議論しているのかわからなくなります。

●ミミナグサ
Y-listの学名
Cerastium fontanum Baumg. subsp. vulgare (Hartm.) Greuter et Burdet var. angustifolium (Franch.) H.Hara
上記、オオミミナグサの変種とされている。
Flora of Chinaでは、オオミミナグサと区別していない。

原記載:Hara,1977. J. J. B. 52: 258 (1977)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjapbot/52/9/52_52_9_6785/_pdf/-char/ja
以下、原(1977)の抜粋。

16) ミミナグサ 日本に古くから知られているこの雑草は分類学上の取扱いが非常に難かしいもののーである。
ヨーロッパ産の Cerastium triviale Linkにごく近縁であるが,苞が葉質であるなど少し異った点があり, これらについては原 (1941),水島(1963)が本誌上で詳しくのべた。
その結論としてミミナグサはヨーロッパ種の地方的変種として扱うのが妥当であるということになった。

★ここで、問題になるのがC.fontanum(=C.holosteoides:オオミミナグサ)と、原(1977)のいう、C.trivialeの関係です。
Plants of the world onlineでは、C.trivialeは、C.holosteoidesのsynonymにされています。

ようやく、日本在来のミミナグサ(Cerastium fontanum Baumg. subsp. vulgare (Hartm.) Greuter et Burdet var. angustifolium (Franch.) H.Hara)は、ヨーロッパ産のオオミミナグサ(Cerastium fontanum Baumg. subsp. vulgare (Hartm.) Greuter et Burdetおよび、(=C.holosteoides:オオミミナグサ)と、原(1977)のいう、C.trivialeを含む)の変種として扱い、苞葉の質が違うことで区別していることが分かった。
ヨーロッパのオオミミナグサの苞葉は、硬いのか?(変種ランクの違いを、標本で区別できるのか?)。新たな疑問がわいてきた。
葉から、苞葉へと連続的に変化しているような気がします。


「外来のオオミミナグサ」について 植村 修二 投稿日:2023年06月09日 15:50 No.684
 藤井俊夫さま

 今、思い出せないのですが、「ハコベやそれに近い属の分類をやると、迷路に入り、わからなくなるのでやめた方が良い」とどこかで聞いたことがあります。

 ミミナグサの仲間も、とても分類が難しいです。私がオオミミナグサとしたのも、「多型なCerastium fontanumで一番近いのはこれかな?」という程度で、これを発表したいと話された水田光雄さんに私が描いた図と共に伝えました。これも今私は確認できませんが、水田さんが兵庫の雑誌に報告されたと思います。

 種レベルなのか、それとも種以下のランクで違ってくるのか、最新の次世代DNA分析で明らかにしてほしいです。


藤井俊夫 投稿日:2023年06月09日 16:47 No.685
以下の文献が見つかりました
ナデシコ科の進化にかかわるサボテン科からウツボカズラ科までのRNAによる系統関係の解析

●INVITED SPECIAL ARTICLE
Joseph F. Walker, Ya Yang, Tao Feng, Alfonso Timoneda, Jessica Mikenas, Vera Hutchison, Caroline Edwards, Ning Wang, Sonia Ahluwalia, Julia Olivieri, Nathanael Walker-Hale, Lucas C. Majure, Raúl Puente, Gudrun Kadereit, Maximilian Lauterbach, Urs Eggli, Hilda Flores-Olvera, Helga Ochoterena, Samuel F. Brockington, Michael J. Moore, and Stephen A. Smith,
From cacti to carnivores: Improved phylotranscriptomic sampling and hierarchical homology inference provide further insight into the evolution of Caryophyllales.
May 2018.American Journal of Botany 105(3)。446-462.
DOI:10.1002/ajb2.1069 LicenseCC BY-NC 4.0
https://bsapubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1002/ajb2.1069

Fig.3の、右上。Centrospermae(ナデシコ目)の一番上に、Cerastium(ミミナグサ属)と、Arenaria(ノミノツヅリ属)が来ています。
Arenariaが基部近くで分かれているので、祖先に近く、Cerastiumより古い系統であることがわかります。
しかし、Arenaria sepylifoliaと、Arenaria proceraが、大きく離れた位置に出現し、その間にSchiedea, Honckenya, Scleranthus, Colobanthus, Velezia, Dianthus, Gypsophila, Saponaria, Silene, Agrostemmaなど、多くの属が挿入された形になっています。
これは、Arenariaが単系属ではないことを示しているものと思われます。
日本でよく見られるDianthusや、Sagina、Stellariaなどのサンプル数を増やして解析すれば、信頼度が上がると思います。

形態で分類した現行の属の定義自体が問題で、系統関係を反映した自然分類ではなく、人為分類になっている可能性があります。


植村 修二 投稿日:2023年06月10日 07:28 No.687
藤井俊夫さま

 いろいろご教示くださり、ありがとうございます。

 私は種内の分類が外来種も含めてこれでいいのかと、ミミナグサ属、ツメクサ属などで思っておりましたが、ナデシコ科では属のレベルで分類の再検討が必要なことは知らなかったです。

 Arenaria属が1つのまとまりではないのですね。




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