近畿植物同好会 掲示板
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宇治川のヨシ焼き、今年は中止
伊吹寛子 投稿日:2024年03月11日 17:02 No.1122
宇治川の京都市伏見区内の河川敷にはヨシ原が広がっています。2022年4月の近畿植物同好会の観察会でご覧いただいた場所で、観月橋から川下に約1㎞の左岸です。そのヨシ原を守る行事としてヨシ焼きがほぼ毎年3月、風のない日に5日ほど、京都市と消防の許可を得て行われてきましたが、今年は中止され、今後再開の見通しが立っておらず、ヨシ焼きの大切さを思う者たちは危機感を募らせています。

2020年に茅葺がユネスコ無形文化遺産に登録されましたが、ヨシはその材料であるだけでなく、私などが申すまでもなくヨシ原で生育する動植物のために守られるべきで、たとえばノウルシについても「京都府レッドデータブック2015」には「ヨシの刈り取り、焼却や草刈りをしないと、遷移が進んで消えてゆく」とあります。また地域としては三栖神社の京都市無形民俗文化財である炬火まつりにも必要です。そのヨシの生育のためにヨシ刈りと焼却が行われてきたわけで、春の風物詩ともなっていました。最近では2011、2012年は、市の野焼きを禁じる「廃棄物処理法違反」で禁止・中断されていましたが、焼き方などに配慮し、市民団体の運動で「新生ヨシ焼き 住民によるヨシ焼きスタート」として2013年に再開されていました。

現在宇治川のヨシの刈り取りと焼却は京都で唯一の茅葺業者である山城茅葺株式会社が行っています。まず茅葺屋根に良いと思われる生育状態のヨシを刈り取って(写真1)、その他の場所を焼くそうです。2022年の観察会の下見の時に業者さんにちょうど河川敷で出会い話を伺えたのですが、刈り取ったヨシの上質の物は屋根の資材として用いますが、そうでない物は紙の材料としても使われていると聞いて、驚きました。

業者さんは2011⁻12年のヨシ焼き中止の間も建築資材として刈り取っていましたが「ヨシが他の植物に負けて、細くなっていくのが目に見えて感じられ、このままだと生態系に影響を及ぼし、このヨシ原が消滅するのではと危機感を募らせて」おられたそうです(「京都だより」京都府建築士会、2014年2月)。

今回の中止は、降る灰の周辺住民や農作物への影響や、国道の交通に支障をきたすことから苦情が絶えないことから、業者さんがやる気を削がれたことが大きな理由だということです。市民の中にも色々の意見があるわけですが、ヨシ原に心を寄せる住民は「宇治川のよし原を守るネットワーク」を立ち上げて、再開に頑張っています。

余談ですが、業者さんは上掲の記事によると宇治川の「ヨシは長く、3~4mの物が多い」のですが、「もう一カ所管理しているヨシ場が…淀川のずっと下流の梅田と十三と言う都会の真ん中にあり...このヨシ場は満ち潮時には半分が水に浸かります。海水の塩分がヨシにとってストレスになり大きくなれず細くて、見目細やかなヨシになり…薮内家の燕庵や光台寺の時雨亭で使われています」とのことです。

また同じ記事に「都会の川でとれた材料が、田舎に運ばれて使われている現状は、田舎の農家の人たちが茅を刈らなくなった現在の特徴的な事例ではないかと思います。…今後もヨシ焼きが毎年行われ、伝統行事として定着し…ヨシ原が守られていくことを願っております」と書いておられます。

私も地域の方たちの中で、河川敷の植物のためにも、微力を尽くせたらと思っています。

写真1,2は「宇治川のよし原を守るネットワーク」主宰者山崎洋一氏提供
写真1:ヨシの刈り取り風景:2017年2月12日
写真2:乾燥の準備:2017年2月12日
写真3:乾燥風景:2023年3月9日
写真4:乾燥風景遠景:2022年3月12日
手前がヨシの焼け跡で、観察会でゴキヅル、ショウブ、ハンゲショウ、コウヤワラビ、コバノカモメヅルなどがあった場所。この撮影後、観察会までの約1か月で、ヨシに日差しを遮られることなく、あのように色々の植物が芽生え、膝丈まで生育。
写真5::乾燥したヨシの業者による運び出し 2022年3月12日 




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