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投稿者:はっちん
新型コロナのエビデンス 元記事URL⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/ 岡田正彦 新潟大学名誉教授(医学博士)  テレビでは語られない世界の最新情報を独自に分析し日々更新  正しい情報を偏りなく (2022.10.10) Q ワクチンでできた抗体はなぜ無効なのか? A  2022年9月5日付の当ホームページ記事『重症化しやすい人の体質』※1で、ワクチンによってできた抗体は、感染予防にほとんど無効であることを述べました。この記述に対して、「本当なのか?」、「なぜ?」という問い合わせを多数いただきましたので、改めてエビデンスをまとめることにしました。 (※1:記事⇒ https://rara.jp/royal_chateau_nagaizumi/page3511#3512 ) 「マムシに咬まれたら抗血清をすぐ打たないと死ぬ!」という話が、都市伝説のように伝えられてきました。抗血清とは、マムシの毒液を馬に接種し、抗体ができたころ血液を採取して精製したものです。中和抗体の働きに期待したものですから、理にかなっているように思えます。 ところが、実際は違っていました。効果がなかなか証明されず、使わないことにしていると述べる救急専門医が多いのです。死亡率がそれほど高くなく、副作用のほうが遙かに深刻であることも、その背景にあります。 同じ発想で行なわれているのが、新型コロナ感染症の治療です。感染したあと、しばらく経った人の血液中には、ウイルスに対する抗体が含まれていることが期待できるため、それを治療に使おうというアイデアです。 ヒトの血液は、その45パーセンが、赤血球、白血球、血小板などの細胞成分で、残りの55パーセントが血漿と呼ばれ、いろいろな酵素や抗体、たんぱく質、塩分などを含む水分となっています。そこで、感染から完全に回復した人の血管に針を刺して血液循環装置につなぎ、赤血球、白血球、血小板などの成分を装置の中で分離して体内に戻していきます。この処理を行いながら、血漿だけを400mlほど集めて容器に保存するのです。当然、肝炎ウイルスなどの病原菌がいないかどうかをよく知らべます。 こうして安全性が確認された血漿を、感染した人の血管内に点滴として注入する方法が「回復者血漿療法」です。2020年の夏、トランプ前大統領が感染した折、この治療を受けたと自ら語っていました。 コロナ禍が始まって以降、この療法の効果と安全性を評価するための研究が、世界中で行なわれてきました。しかし、ほとんどが「効果なし」との結果に終わってしまったのです。マムシの抗血清や新型コロナの回復者血漿療法は、同じ発想に基づくものですが、なぜどちらも効果が証明できなかったのでしょうか? 免疫システムによって体内で作られる抗体は動物と人間で異なること、ヒト同士であっても個人差がかなり大きいことなどが、その一因と考えられています。免疫は簡単でありません。 コロナワクチンによって体内で作られる「抗体」に、話を進めます。ヒトの免疫システムは、体内に忍び込んでくる異物や微生物に対して、それぞれ異なる抗体を作り出すことができます。その限界は、1兆のさらに百万倍種類にもなることが、最近の研究でわかりました。以下の図(画像⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/v_region.jpg )は、抗体が異物を捉える仕組みです。 ワクチン接種によって体内にトゲトゲ蛋白が注入されると、免疫システムは直ちに「抗体」を作り始めます。ただしトゲトゲ蛋白は複雑な形をしていますから、その形状、つまり「抗原」に対応した、さまざまな抗体が手あたり次第に作られます。したがって出来上がった抗体のすべてが、ウイルスの攻撃を防ぐ力を持つとは限りません。 次の動画(GIF画像⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/antibodies.gif )は、本物のコロナウイルスが体内に侵入したとき、ワクチンによって作られたさまざまな抗体と会合するシーンをイメージしたものです。  [YouTube:yUynES59HuM:R]  中和抗体のウソ / ワクチンでできた抗体はなぜ無効なのか? このようにウイルスの侵入をブロックしてくれる抗体だけが、真の「中和抗体」です。 極小の中和抗体が、大海のごとく広大な血液の流れの中で特定の「抗原(トゲトゲ蛋白の先端部分など)」と偶然に出会うのも、奇跡的としか言いようがありません。誰かが両者を導いてくれるわけではなく、ぎりぎりまで近づいたときに初めて、凹と凸がくっつき合う「分子の力」が働くにすぎないからです。つまり、トゲトゲ蛋白だけを対象にしたワクチンで作られる抗体はあまりに儚く(はかなく)、効果が極めて限定的だということなのです。 ではワクチン接種でなく、実際に感染したあとにできる抗体(自然免疫)は、どうなのでしょうか? 2021年6月10日に発表された研究によれば、新型コロナウイルスには、トゲトゲ蛋白以外にも病原性を発揮する危険な部位がいくつかあり、それらに対する免疫システムの反応も確認できた、とのことでした。 ヒトの免疫システムは極めて優れていて、それだけにメカニズムも複雑です。「殺し屋細胞」の挙動(Q9(4)参照)※1なども含め、まだ解明されていない部分がたくさんあります。少なくとも、現行のワクチンがそれに取って代わるほど単純なものでないことは確かです。 (※1:記事⇒ https://rara.jp/royal_chateau_nagaizumi/page3511#3512 ) さまざま調査データも合わせ考えると、ワクチンによって作られる抗体は「ほとんど無効」と断言できるのです。 「中和抗体が測定できます」との宣伝文句で、多くの簡易検査キットが発売されています。しかし真の中和抗体は「簡易」には測れません(Q12(9)参照)※2。「ワクチン接種後、中和抗体が△△倍に増加」などのニュースもよく耳にしますが、ワクチンメーカーの宣伝に、この言葉が悪用されています。 (※2:記事⇒ https://rara.jp/royal_chateau_nagaizumi/page3197#3544 ) 【参考文献】 1) 辻本登志英, ほか, 抗毒素血清投与を行なわなかったマムシ咬傷38症例の検討. JJAAM, 28: 48-54, 2017. 2) Convalescent plasma. Cleveland Clinic, accessed: Oct 3, 2022. 3) NIH study shows no significant benefit of convalescent plasma for COVID-19 outpatients with early symptoms. NIH, Aug 21, 2021. 4) Kolata G, Uncertain results in study of convalescent serum for covid-19. New York Times, Jun 10, 2020. 5) Hicklin T, Decoding the variety of human antibodies. NIH, Feb 12, 2019. 6) Janeway CAJr, et al., "The interaction of the antibody molecule with specific antigen". in Immunology: the immune system in health and disease. 5th ed, Garland Science, New York, 2001. 7) Xia B, et al., SARS-CoV-2 envelope protein causes acute respiratory distress syndrome (ARDS)-like pathological damages and constitutes an antiviral target. Cell Res, Jun 10, 2021.        
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