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投稿者:はっちん
新型コロナのエビデンス 元記事URL⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/ 岡田正彦 新潟大学名誉教授(医学博士)  テレビでは語られない世界の最新情報を独自に分析  正しい情報を偏りなく 今週の新情報 (2024.2.19) Q&A 新たなウイルスの脅威にどう対処すればいいのか? 過去、さまざまなウイルス感染症が流行し、人類を脅かしてきました。新型コロナウイルスが終息しても、ウイルスによる新たな流行がこれからも繰り返されていくと考えられます。新型コロナウイルスの発見にまつわるエピソードも交えながら、今後を占ってみることにしました。 新型コロナウイルスの遺伝子構造(塩基配列)を報じた最初の論文が、有名な科学専門誌ネイチャーに投稿されたのは、2020年1月7日でした(文献1)。しかし厳しい審査もあり、オンラインでの出版は2月3日まで待たなければなりませんでした。 この論文投稿と並行して、著者のひとりが米国の遺伝子データベース(GISAID)に完全な塩基配列を投稿したのが1月10日(文献2)。このデータは、2日後の1月12日、世界に向けて初公開された、・・・というのが定説とされてきました。 ところが米国のニューヨークタイムズ紙によれば、事実はいささか違っていたようです(文献3)。さかのぼる2019年12月28日、米国政府が管理する別の遺伝子データベース(GenBank)に、実は第一報が投稿されていたのです。中国湖北省武漢市の病院に「謎の肺炎」で入院した65歳の男性から分離した「未知のウイルスの塩基配列」との説明つきでした。 遺伝子データベースの管理者は、仮登録された未公開のデータを見つけましたが、日々、無数の投稿もあり、とくに気に留めることはありませんでした。3日後、投稿者に対し「分析方法についての説明を加え、再投稿するように」とのコメントを送りましたが、返事はありません。世界で最初の新型コロナウイルスの塩基配列は、時間切れとなり自動的に消去されてしまいました。 つまり、塩基配列決定のニュースが世界を駆け巡った1月10日より2週間も前に塩基配列は確定され、公表されようとしていたことになります。この2週間の遅れが、もしかしたら致命的な対策の遅れにつながったかもしれない、というわけなのです。 遺伝子データベースの管理者から説明を求められた中国の研究者が、返答をしなかった理由については、政府の圧力で研究室を閉鎖されてしまったためとも言われています(文献4)。一方、この情報の重大さを、データベースの管理者が気づかなかったという問題も指摘しておかなければなりません。 日々、膨大な遺伝子情報がデータベースに登録され続けているため、重要かどうかを区別するのが不可能になってきているのです。あるウイルスの専門家は「渓谷で見つかった新種のデンデン虫の塩基配列も入り混じっているデータベースから、どうやって危険なものを見つけ出せと言うのか!」とコメントしていたそうです。 人間の脅威となりうるウイルスは、無数に存在します。エボラ出血熱のように突発的に流行するものがあれば、デング熱のように数年の周期で流行を繰り返しているものもあります。 デング熱は、2024年に入り南米で大流行していますので、今後の対策を考える上でヒントになるかもしれません。この病気は、蚊、とくにネッタイシマカが媒介するデングウイルスが原因で、インフルエンザのような症状と全身の発疹が特徴です。デングウイルスは、新型コロナウイルスと同じタイプ(1本鎖プラス鎖RNAウイルス)で、なぜかオリンピックと同じ4年ごとに流行を繰り返しています。 これまではインドネシアなど東南アジア、中南米など熱帯地域が流行の中心でしたが、いま世界的に拡大しています。日本でも、2014年に東京の代々木公園で蚊に刺された人が感染し、大きな話題となったのは記憶に新しいところです。 デング熱に限れば、予防策は蚊の撲滅に尽きます。しかし流行を繰り返してきた地域では、殺虫剤の使い過ぎで、蚊のほうが耐性を獲得してしまい駆除ができない、との予想外の事態も起こっています。       では、これから続々遭遇することになるであろうウイルスの脅威に、どう対処すればよいのでしょうか? 新型コロナ感染症では、中国の科学者がわずか4日間でウイルスの塩基配列を決定し、公表してくれました。それにもかかわらず中国当局の隠ぺい体質のせいで、公開までに致命的ともいえる時間が無為に費やされました(文献5)。一方、国際社会のほうでは、危険なウイルスの情報が登録されても、それらを的確に判断する仕組みがなかったことも露呈しました。 デング熱には不活化ワクチンがありますが、昔から流行を繰り返してきたウイルスであったことから、開発にじっくり時間を費やすことができたのです。しかし、この先、もし未知のウイルスが突然、現れた場合、短期間にワクチンを作るには、いまのところメッセンジャーRNAの技術に頼るしかありません。加えて、ワクチンは、どのような作り方をしても、繰り返しの接種で免疫力にブレーキがかかり、感染者がむしろ増えてしまうという宿命も負っています。 <イラスト⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/novaccine.gif >      今後は、ワクチンに代わる新技術の開発や医療体制のあり方など、あらゆる面で発想を変えた取り組みが必要です。過去の反省と今後の努力がなければ、地震などの自然災害と同様、同じ悲劇を繰り返していくことになります。 【参考文献】 1) Wu F, et al., A new coronavirus associated with human respiratory disease in China. Nature, Feb 3, 2020. 2) Holmes EG, Novel 2019 coronavirus genome. https://virological.org/t/novel-2019-coronavirus-genome/319, Jan 10, 2020. 3) Mueller B, Before the coronavirus pandemic, overlooked clues from Chinese scientists. New York Times, Jan 18, 2024. 4) 岡田正彦, 本当に大丈夫か新型ワクチン,明かされるコロナワクチンの真実. 花伝社, 2022 5) Zhang Y-Z, et al., A genomic perspective on the origin and emergence of SARS-CoV-2. Cell, Apr 16, 2020. 6) Takeda's QDENGA (Dengue tetravalent [live, attenuated]) approved in Indonesia for use regardless of prior dengue exposure, Takeda Pharmaceutical Company, Aug 22, 2022. 7) Kallas EG, et al., Live, attenuated, tetravalent Butantan-Dengue vaccine in children and adults. N Engl J Med, Feb 1, 2024.        
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