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投稿者:小心者
8.〔許容応力度設計〕 許容応力度設計は、予想される荷重を骨組みに作用させて、構造力学のテクニックや材料力学の知識を使って、各部材内部に働く応力を求め、危険断面での最大応力度が材料の許容応力度を超えないように、部材断面を決めていく設計法です。 しかし、本当にこれで大丈夫なのでしょうか。 〔しかし、これで本当に大丈夫?〕 建物は、ある程度までは、弾性的な挙動をします。 弾性的な挙動とは、フックの法則が成り立つ範囲です。つまり、荷重が除かれると建物はもとの状態に戻ります。 しかし、建物は、荷重を徐々に増大させていくと、少しずつ損傷を起こしていきます。コンクリート系の建物では、コンクリートの表面にひび割れが生じてきます。 さらに荷重を増大させると、鉄骨構造では、はりや柱の一部が塑性域に入ってきます。塑性域とは、降伏点を超えて歪みが進行する領域です。 一方、鉄筋コンクリート構造では、はりや柱の主筋の一部が降伏してきます。 鋼材は降伏点を過ぎると応力度の増大は小さくなり、歪みが急激に伸びます。 そして、多くの部材が降伏すると、荷重の増大は小さくなり、代わりに変位の伸びが大きくなってきます。 最後は、建物が倒壊してしまいます。この倒壊する直前の状態を終局状態と呼んでいます。このときの荷重が崩壊荷重です。 また、建物のどの部分が損傷を起こして崩壊していくのかを表したメカニズムを崩壊機構と呼んでいます。 許容応力度法の最大の欠点は、建物の終局状態、すなわち、崩壊機構がどのように形成されていくのかを設計の段階で考えていないことにあります。 〔壊れない建物を設計するには?〕 倒壊しない建物を設計するには、まず最初に構造計画をきちんと立てることです。 構造計画には、いくつかのポイント(構造計画と深い関係にある、剛性率、偏心率および保有水平耐力)がありますが、後ほど紹介します。 『一次設計』  ・常時荷重に対して、許容応力度設計を行います。このときの許容応力度には長期許容応力度を用います。  ・中小地震動に対しては、建物に損傷が起こらないことを確かめます。これも許容応力度設計ですが、このときは短期の許容応力度を用います。標準層せん断力係数 0.2で計算されます※1。  つまり、一次設計では、「応答加速度200ガル程度※1の中地震(地表最大加速度80ガル~100ガルの地震≒震度4~5弱の地震)」を対象にして、「構造体が損傷しない」ことを目標に設計(許容応力度設計 [弾性設計] )します。 <※1 建物の1階に作用する水平力を、建物の全重量の20%と考え、重量=質量×重力加速度(980ガル)から、0.2×980=約 200ガル> 『二次設計』※(一次設計で剛性率・偏心率が規定値外の場合のみ二次設計が義務化されています)。  ・大地震動に対して、建物が危険な崩壊を招かず、人命を確保できることを確かめます。ここでは許容応力度設計ではなく、保有水平耐力の確認をします。  つまり、二次設計では、「地表最大加速度300ガル~400ガルの大地震≒震度6弱程度の地震」を対象にして、「構造体が倒壊しない」ことを目標に設計(終局強度の確認を)します。 ここで大事なことは、ねばりのある(健全な壊れ方をする)建物を設計することに心がけることです。 構造計画について、もう少し紹介します。
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