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投稿者:はっちん
元記事⇒ 久留米大学医学部免疫学講座 https://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/corona.html 新型コロナ「正しく恐れ、うつさない、うつらない」ー 久留米大学医学部免疫学講座より ー ⇒ https://rara.jp/royal_chateau_nagaizumi/page3352 から 【抜粋】 [(5) 免疫力強化法は?] ● 糖分と適度な運動:免疫力を強くすることは感染症に対して有効ですが、強すぎるとアレルギー自己免疫疾患、成人病の原因ともなります。よって、免疫力は強すぎてもダメ、弱すぎてもダメでバランスを保つ事が重要です。通常、体に良いと言われる食べ物は、このバランスを保つ方に働きアレルギーや成人病発症の予防となります。一方、普段は敬遠されがちな糖分や炭水化物は免疫のエネルギー源となり免疫力の強化につながります。糖に含まれるグルコースは腸内細菌によりアデノシン 3 リン酸に代謝されます。このアデノシン 3 リン酸が免疫活性化のエネルギー源です。実際、生まれつきアデノシン 3 リン酸が利用できないと重症複合型免疫不全症と呼ばれる免疫が働かない病気になります。また、アデノシン 3 リン酸を利用できないようにする薬は免疫を抑制できるので、関節リウマチや潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患の治療に現在用いられています。すなわち、糖分は免疫強化のための重要な活力源となります。 【ここでボディーマスインデクス(BMI)を計算してみてください】 BMI の計算法:体重 74 キロで身長 176 cm(1.76 m)の場合は 74 ÷ 1.76 ÷ 1.76 = 23.88 で 23.88 が BMI です。 18.5 以下の方は痩せすぎ、18.5 から 25 は正常範囲、そして 25 以上で肥満の領域に入ってきます。BMI が 25 以下で耐糖能異常が無く、デザートを「太るから」と食べたいのに普段は控えている方は、今こそ本能の赴くままにお召し上がり下さい。ただし、摂取したエネルギー源を効率良く免疫細胞に取り込ませるには食後の軽い運動が必要です。免疫力強化と体重増加予防を兼ねて、食後の散歩(室内での 30 分程度の足踏みでも充分です)はお忘れなく。また、免疫の暴走を抑えるためにバランスを保つ事も重要で、食物繊維の摂取が手助けしてくれます。1918 年に起こったスペイン風邪のパンデミックでは、高齢者ではなく 20 歳から 40 歳までの若者に死亡者が集中する異なった様相を呈しています。サイトカインストーム(下記参照)と当時の栄養状態が働き盛りの若者を死に導いたと考えられています。ウイルスに打ち勝つためには「若くても栄養をしっかりと取らないといけない」と言う教訓かもしれません。 ● 塩分、卵・乳製品:塩分は Salt kinase と呼ばれる転写因子を刺激することにより、免疫力強化につながる Th17 細胞を活性化することが報告されています。また、卵や乳製品は、硫酸還元菌(おならが臭くなります)と呼ばれる腸内細菌を増やして、免疫力強化につながる Th1 細胞を増やす事が報告されています。高血圧、腎疾患、脂質代謝異常などがない方は、免疫力強化のため、今は多めにとっても良いかもしれません。 ● お風呂:冷えると免疫力は低下します。逆に、微熱のように体温が少し上がった状態が免疫力を強くします。よって、お風呂に入る事は免疫力強化に有効ですが注意が必要です。免疫細胞は病原体と戦う軍隊として非常に合理的に統率されています。しかし、血管が拡張すると免疫の統率機構が障害を受け、ウイルスに対して有効に攻撃を仕掛ける事が出来なくなります。 血管が拡張すると皮膚は赤みを帯びてきますから、皮膚が赤くならない程度にお風呂につかるのが免疫強化には最適かもしれません。湯冷めも禁物です。 [(6) 腸管は?] 新型コロナウイルスが咳などの飛沫やエアロゾルを介して感染することはよく知られていますが、実は腸管にも感染します。コロナウイルスが侵入するためにアンジオテンシン変換酵素 2 を必要とするので、この酵素が発現する場所に感染が起こるわけです。アンジオテンシン変換酵素 2 は腸管にも多く発現するため、腸管に感染して下痢を起こす場合もあります(Wu Y. Lancet Gastroenterol Hepatol 2020, p434)。 厄介な事に、消化器症状が無くてもウイルスが糞便中に排出されていることも報告されています(Diza A,Gastroenterology 2020 5/8)。また、新型コロナウイルスは症状の消失後も糞便から約 1 週間検出できるとの報告もあります。よって、飛沫のみでなくノロウイルスのように排泄物により感染する可能性があるという事で、頻回な手洗いが予防には重要です。また、トイレで水を流す時はウイルスが空気中に飛び散る可能性があります。公衆便所などで水を流すときは便器の蓋をするか、蓋が無ければ空気中への飛散を防ぐため便器に腰かけたまま流すのが良いかもしれません。医療関係者は感染症対策の訓練を受けたプロフェッショナルでありながら、新型コロナウイルス感染では世界的に医療従事者の院内感染が多いような気がしてなりません。あくまでも個人的見解ですが、医療従事者でも気が緩んでしまう職員用トイレでの感染の可能性もゼロではないかもしれません。 最近報告された、人の遺伝子をほぼ網羅するゲノムワイド関連解析(GWAS)によると、CCR9、CXCR6、XCR1 と呼ばれる遺伝子に異常があると、新型コロナウイルスによる重症化が起こり易い可能性が示唆されました(Ellinghaus D, N Engl J Med 2020 6/17)。これらすべては、腸管の免疫に深く関与している分子です(Mora JR. Mucosal Immunol 2008 p96; Olszak T. Science 2012 p489; Satoh-Takayama N. Immunity 2014 p776; Ohta T. Sci Rep 2016 p23505)。新型コロナウイルスの腸管への感染と重症化に、何らかの因果関係があるのかもしれませんが、今は何もわかっていません。 興味深い結果が 7 月 3 日に報告されています(Ahmad I, Clinical Gastroenterology and Hepatology 2020, 7/3)。グーグルトレンド検索で、「味覚異常」、「食欲不振」、「下痢」がトピックとして上位を占めた 4 週間後に新型コロナウイルス感染者数のピークを迎えているようです。味覚異常に加えて、軽度の消化器症状が新型コロナウイルス感染の前兆なのかもしれません。事実、新型コロナウイルス感染者の 31.9%から 61.3%の方に消化器症状が最初に出現しています(Cholankeril G, Gastroenterology 2020, p775; Redd WD, Gastroenterology 2020, p765)。消化器症状のうち最も多いのが「食欲不振」で、34.8%の感染者に認められています(Redd WD, Gastroenterology 2020, p765)。「食欲不振」は夏バテやストレスなど種々の原因で起こるため我々が頻回に経験している症状です。よって、見逃されがちなのかもしれません。「食欲不振」を感じたら、新型コロナウイルス感染も念頭にいれ、用心に越した事はないのかもしれません。特に、食欲不振により水分まで控えられると、「新型コロナウイルスのテロ行為である血栓症」の危険も増してきます。「食欲不振」を感じたら、水分補給による脱水予防、そして血液を停滞させないための適度の運動に心がけ、血栓症の予防に努められることをお勧めします。 抗体は早期に産生される IgM、その後に産生される IgG、アレルギーで増える IgE、そして粘膜で産生される IgA に分類されます。粘膜と言えば口腔粘膜や腸管粘膜が代表です。よって、IgA は唾液や便中に多く含まれます。新型コロナウイルス感染では、IgG のみでなく IgA も血液中に増える事が報告されています(Varnaite R, J Immunol 2020, 9/2; Moderbacher CR, Cell 2020, 9/16)。また、アイスランドからの報告によると IgG のみで無く、IgA の検出も可能な「pan-Ig」(ロッシェ社)と呼ばれる検査キットを用いる方が抗体の検出率は高いと報告されています(Gudbjartsson DF, New Engl J Med 2020, 9/1)。つまり、新型コロナウイルス感染では、季節性インフルエンザの様に IgG に代表される全身性の免疫ばかりでなく、IgA に代表される腸管の免疫も関与しているのかもしれません。また、新型コロナウイルス感染者の息(呼気)には、腸内細菌叢の乱れを示唆するガスの変化が認められる事も 10 月 24 日に報告されています(Ruszkiewicz DM, EClinical Medicine 2020, 10/24)。 新型コロナウイルスに感染して症状が出てしまう方では「IgA2」と呼ばれる抗体が少ない可能性が 2021 年 4 月 20 日に報告されました(Stephenson E, Nat Med 2021, 4/20)。ヒトの IgA には「IgA1」と「IgA2」の 2 種類があります。IgA1 は唾液や母乳に含まれ乳児を感染症から守ってくれます。IgA2 は腸で作られお腹から我々を感染症から守ってくれています。バランスの取れた食事を摂り腹の免疫(腸管免疫)を健康に保つ事が、新型コロナウイルスから守ってくれるのかもしれません。 新型コロナウイルスの爆発的流行に見舞われた南アメリカから、8 か国 728,282 人の感染者を対象とした調査結果が 10 月 21 日に報告されました(Ashktorab H, Gastroenterology 2020, 10/21)。国により主要症状が異なっているようで、消化器症状を伴う患者さんは 10.5%から 53%と大きな幅があります。下痢を伴う患者さんはアルゼンチンで 3.1%、チリで 10%、ペルーで 13.6%、そしてメキシコが一番多く 22%のようです。また、死亡率も国々で異なり、アルゼンチンは 3.2%で、一番高い国はメキシコで 16.7%です。下痢は脱水を起こしてしまう危険性を伴います。すると、血液中の水分量が減少するため血が濃くなり固り易くなります。新型コロナウイルス感染の症状として下痢が多いメキシコでは、新型コロナウイルスのテロ行為である血栓症が起こり易いため、死亡率が高い可能性も否定はできません。下痢を起こした方は、脱水を予防するためしっかりと水分補給されることをお勧めします。「お好み焼き」は、すぐ固まりますが、水分を多く含んだ「もんじゃ焼き」は固まらないのと一緒です。また、脱水を恐れて「止瀉薬で下痢を止めよう」とは絶対に思わないで下さい。下痢は「物理的障壁」と呼ばれ、我々の身体を守るためウイルスに対する「水際作戦」を担ってくれています。つまり、下痢はウイルスを腸から洗い流してくれています。戦闘において、敵の数が少なければ少ないほど戦いは優位に運べます。よって、下痢を止めると腸にウイルスが留まってしまい、免疫軍も苦戦を強いられる結果へとつながります。下痢になったら、体の反応にまかせて、しっかりとウイルスをトイレで腸から追い出し、脱水予防のため水分補給をしっかりとされることをお勧めします。        
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