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投稿者:はっちん
新型コロナのエビデンス 元記事URL⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/ 岡田正彦 新潟大学名誉教授(医学博士)  テレビでは語られない世界の最新情報を独自に分析し日々更新  正しい情報を偏りなく Q7 専門家の言うことは正しいのか? A ワクチンを促進したい人も、反対する人も、まず正しい理解が大切です。以下、専門家の意見もわかれるような複雑な問題について、最新、かつ確かな情報をまとめおくことにします。 (2021.9.25) NEW! (1) 専門家が示すデータに騙されないための心得帳 【性質の異なる集団は比べられない】  「死亡者の8割はワクチン未接種」など、人心を惑わす報道が続いています。これは、ワクチン接種を「自分の意思で受けた人」と「受けなかった人」を比べてみたら、という話です。このような比較は正しいでしょうか。 この2つのグループは公平に分けられたものではありません。たとえば接種を受けた人たちの多くが年長者で、もともと健康に関心があり、日頃から感染予防もしっかり行っていたかもしれません。一方、受けなかった人たちは、その逆だったかもしれません。あくまで、たとえ話です。 もしそうだとすれば、ワクチン未接種の人たちの死亡率が大きくなっても、不思議ではありません。このような方法は「後ろ向き調査」、あるいは「観察研究」などと呼ばれ、コンピュータ内のデータを単純に計算するだけですむため、手軽で費用もかからず、昔からよく用いられてきました。医師たちがテレビで語る「最近はワクチンの有効性を示すデータが続々・・・」は、すべて、この種のデータのことです。 しかし、ときに意図的な誘導が可能であり、また常に誤った結論を出してしまうことから、医学を混乱させる原因ともなってきたのです。後ろ向き調査のデータは、科学的根拠になりません。 【昔と今は比べられない】  「以前は高齢者の死亡が多かったが、いまはワクチンのお陰で少なくなった」というのは、どうでしょうか? いまは高齢者施設に勤務するすべての従業員に対して毎週、PCR検査が行われるようになり、施設での集団感染が激減しています。つまり「以前」と「いま」では、社会情勢が異なるため、単純に数字だけを比較することはできないのです。 【比べなければ意味がない】  「○○薬を使ってみたら、たちまち症状改善!」と、テレビのニュースで医師が語っていました。病気の多くは自然に治るものです。もし治らないなら、いまごろ人類は滅亡していたことでしょう。何もしなくても治りかけている人に薬を投与すれば、いかにもその薬が効いたようにみえます。しかし、使わなくても治っていたのでは、ありませんか?「使った人」と「使わなかった人」を比べなければ、意味がありませんよ。 【気のせいではないですか?】  昔の話です。パン屑を丸めて「血圧の新薬」とウソをつき、何人かに飲ませたところ、全員の血圧が下がった、という実験をした研究者がいました。心と体は、つながっていることを見事に示した実験でした。本物とそっくりに似せて作った「薬もどき」をプラセボと言いますが、そのプラセボ自体に意外と効果があるのです。これを称して「プラセボ効果」と言います。騙されないようにしましょう。 (2) アストラゼネカ社ワクチンの運び屋ウイルスは、DNAへの組み込みをしない?  同ワクチンでは、運び屋としてチンパンジーのアデノウイルス(風邪のウイルス)が使われています。人の風邪ウイルスは、すでに免疫を持っている人が多く、運び屋としては使えないからです。 多くの専門家は「アデノウイルスはDNAへの組み込みをしないので安心」と述べています。しかし最近の動物実験で、この説は覆されました。結論だけ言えば組み込みは必ず起こり、ワクチン接種を2回受けると、肝臓だけで96か所に組み込みが起こる計算が成り立ちます。 つまり、このワクチンに含まれるコロナのトゲトゲ蛋白を合成する遺伝子は、あなたのDNAの中に永久に残ってしまう可能性があるということです。 【参考文献】 1) Stephen SL, et al., Chromosomal integration of adenoviral vector DNA in vivo. J Viol 84: 9987-9994, 2010. (3) ワクチンで不妊や奇形児が生まれたりしない?  いま世界的に流れている噂のひとつが、ワクチンが不妊や奇形の原因になるのではないか、というものです。6月17日、それを打ち消すかのような論文が米国で発表されたことから、逆に「ワクチンは妊娠に影響を与えない」という誤った情報にすり替わってしまうという珍現象が起きています。 その論文は、妊娠中にワクチン接種を受け、無事に出産に至った712人を調べたところ、早産や低出生体重、奇形などの割合が従前の統計値と同じで、増加傾向は認められなかった、という分析結果を報じたものでした。 しかし、分析の対象となった妊婦の大部分(700人)は、妊娠27週以降に接種を受けた人たちであり、対象者も少なく、人種や年齢層も統計値のそれとは異なっていました。発表した研究者も、「この結果は妊婦に対するワクチンの安全性を保証するものではない」と述べているくらいなのです。 政治家や専門家と称する人たちが、逆フェイクニュースを流し始めていますので、要注意です。とくに不妊との因果関係は、高度な分析を要し、簡単に答えは出せない性質のものですから、騙されないようにしてください。 【参考文献】 1) Shimabukuro TT, et al., Preliminary findings of mRNA Covid-19 vaccine safety in pregnant persons. N Engl J Med, June 17, 2021. (4) ワクチンは母乳に影響しない?  カリフォルニア大学の研究者が、なかなか適切な実験をやってくれました。ボランティア7人を募り、ファイザー社かモデルナ社のワクチンを「接種する前」と「2回接種したあと」で母乳を提供してもらい、改造mRNAが含まれているかどうかを、実際に測定してみた、というものです。 結論を先に言えば、接種後の母乳に改造mRNAは、いっさい含まれていませんでした。一見、簡単そうにみえる、この研究を私は高く評価したいと思います。なぜなら、ヒトの体液に含まれる改造mRNAを実際に測定したのは、おそらく世界で初めてのこと。誰も測ったことがない物質の測定は、非常に難しいものだからです。 「別の物質を測ったりしていないのか」「別の人が測っても同じ結果になるのか」「超微量でも測れているのか」「逆に過剰に含まれていても大丈夫なのか」「母乳などサンプルを保存する温度はどうだったのか」等など、果てしないツッコミに答えられなければ、確かに測ったとは言えません。この論文を発表した研究者たちは、測定の大原則とも言うべく、これらの課題を見事にクリアしていました。 などという難しい話は別にして、結論だけを見聞きした専門家や政治家が「ワクチンは授乳中でも大丈夫」と言い出しかねず、要注意な情報です。 8月11日、母乳に与える影響の第2報が出ました。授乳中の女性33名に協力を求め、ワクチン接種前と、2回接種の2週間後、それに4週間後の3回ずつ母乳を提供してもらって調べた結果です。対象にしたワクチンはファイザー社製のみです。 測定したのはトゲトゲ蛋白に対する抗体です。中和抗体とは限らず、(IgGと呼ばれる)抗体のすべてです。結果は明快で、2週間後も4週間後も、どちらも接種前の約240倍にも上昇していることがわかりました。もちろん上昇の程度には個人差があり、母親の血液中の抗体量が多いほど、母乳中の量も多くなっていました。 赤ちゃんは、母乳を介してお母さんから免疫物質を受け取るとされていますが、コロナワクチンの場合、良い影響を受けるのか、それとも副作用を被るのかは、いまのところ不明です。一番知りたいのは、お母さんの血液中を流れているトゲトゲ蛋白が、母乳に移行しないのかということです。しかし、それを測る方法がまだないことから、いまのところ調べた人はいません。 【参考文献】 1) Golan Y, et al., Evaluation of messenger RNA from COVID-19 BTN162b2 and mRNA-1273 vaccines in human milk. JAMA, Jul 6,2021. 2) Esteve-Palau E, et al., Quantification of specific antibodies against SRSR-CoV-2 in breast milk of lactating women vaccinated with an mRNA vavccine. JAMA, Aug 11, 2021. (5) 変異ウイルスは本当に危険なのか?  → 難しいのは、変異ウイルスの「感染力」や「致死率」をどうやって求めるのかです。たとえば、大勢の若者がスポーツ観戦などで大騒ぎをして、たまたまその中に変異ウイルスの感染者が1人いたため100人くらいに感染が広がったとします。単純に統計をとれば、この変異ウイルスは感染力が強い、ということにされてしまうでしょう。 つまり多様で、予測不能な人間の行動様式が絡み合っているため、ウイルスの性質だけをわけて求めることができないのです。 たとえば200匹くらいのネズミを用意して公平に2つのグループにわけ、それぞれを大きなカゴに閉じ込めた場面を想像してください。その一方に、変異ウイルスを感染させたネズミを、もう一つには従来型ウイルスを感染させたネズミを、それぞれ1匹ずつ入れます。1週間後くらい経ったら、すべてのネズミを解剖して、何匹に感染が起こっていたかを調べる、という方法なら、少しはましなデータが得られそうです。ただし実験者も、感染してしまうかもしれません。 現在、テレビなどで報じられる感染力や致死率は、どれも信頼性に欠けているように思われます。それでも、世界中の研究者たちがあの手、この手で実験や予測をしてくれたデータがありますので、次の表(画像⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/variant.jpg )にまとめてみました。この表は適宜、改訂しています。 ここで、デルタ変異ウイルスについての最新情報です。と言っても、世界中で感染者が急増している最中のため、研究者も右往左往してしまっており、まだ正確なことは、ほとんんどわかっていないのが現状です。 それでも、確度が高く、国内で報じられていない情報がいくつかありますので、以下に8月9日現在の状況をまとめておきます。  ・感染力は1.5倍から2倍くらい強いかもしれない  ・致死率(病原性)の違いについては、諸説あり、まだよくわからない  ・12歳以下の子供が、とくに罹りやすいかもしれない  ・ほかのウイルスと異なり、暑い季節ほど感染が拡大する傾向がある  ・ファイザー社、モデルナ社ワクチンの効果は、最初の変異ウイルス(イギリス株)に   対する効果とほぼ同じで、数パーセントしか違わない 【参考文献】 1) Wu F, et al., A new coronavirus associated with human respiratory disease in China. Nature, Mar 12, 2020. 2) Corum J, et al., Coronavirus variants and mutations. New York Times, Jun 4, 2021. 3) Anthes E, Covid's lambda variant: worth watching, but no cause for alarm. New York Times, Jul 8, 2021. 4) Bernal JL, et al., Effectiveness of Covid-19 vaccines against the B.1.617.2 (delta) variant. New Engl J Med, Jul 31, 2021. 5) Anthes E, The delta variant is sending more children to the hospital. Are they sicker, too? New York Times, Aug 9, 2021. (6) 抗体依存性感染増強(ADE)って何?  1960年代の初め、麻疹(はしか)のワクチンが開発されました。ところが、そのワクチンを接種した子供たちが、数年後、さらに重い麻疹に罹ってしまう、という不思議な現象が起こりました。 当時、理由はわからないままでしたが、最近になって研究が進み、何が起こっていたのか、あきらかになってきました。その仕組みを言葉で説明すると、眠くなってしまいそうです。以下のアニメ(画像⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/ade.gif )をご覧ください。 このほかにも仕組みは、いろいろあり、もっと複雑です。この現象が「抗体依存性感染増強」と呼ばれているものです。問題は、これが、コロナワクチンでも起こっている可能性があるということです。ただ信頼性の高い情報がまだなく、わかりしだい追記を行っていく予定です。 【参考文献】 1) Ricke DO, Two different antiboby-dependent enhancement (ADE) risks for SARS-CoV-2 antibodies. Front Physiol, Feb 24, 2021. 2) Halstead SB, et al., COVID-19 vaccines: should we fear ADE? IDSA, in press. 3) Lovdal T, et al., Fc receptor mediated endocytosis of small soluble immunoglobulin G immune complexes in Kupffer and endothelial cells from rat liver. J Cell Science 113: 3255-3266, 2000. (7) 高齢者の死亡が減少しているのはワクチンのお陰?  → 国内でも海外でも、これまで高齢者施設での集団感染と、それによる死亡例が圧倒的多数を占めていました。とくに米国では、高齢者施設における感染対策について論じた論文が続々と発表されてきました。 昨年、私が勤務する施設でも集団感染があり、複数の方が亡くなられました。痛恨の出来事でしたが、当然、超高齢者が中心ですから、老衰も進行しており、軽い風邪をひいただけでも命の最後の灯が消えてしまいます。 そのとき感じたことが2つありました。ひとつは行政の方針で、PCRが陽性という理由だけで、すべて「コロナ死」として記録されてしまい、本当の死因、本当の死亡率がわからなくなってしまったことです。 もうひとつは、高齢者施設での感染予防がうまくできさえすれば、新規感染者数も死亡者数も格段に改善するのではないか、ということでした。 「PCR検査を徹底する!」は行政の合言葉のように使われ、反発を感じている人も多いようです。そんな中、東京都では、本年3月から、すべての高齢者施設のすべての職員に対する週1回のPCR検査が開始されました。 結果的に職員の自覚が高まり、高齢者施設での集団感染がほぼなくなったのです。もちろんワクチン接種が始まるずっと前からの話です。 「ワクチンのお陰で高齢者の死亡が減少した」との政府や専門家の説明は間違っています。 (8) インフルエンザ・ワクチンに学ぶこと  → 1962年から1987年の26年間、日本では学童に対するインフルエンザ・ワクチンの集団接種が行われていました。覚えている人も多いと思います。この間、肺炎による高齢者の死亡数が激減し、年間、約4万人の命が救われました。それ以前、日本では高齢者の肺炎死亡が欧米に比べて格段に多く、開発途上国なみだったのです。 その後、ワクチン接種に対する反対意見の高まりを受けて法律が改正され、集団接種から任意接種へと変わったのですが、その途端、高齢者の肺炎死亡数が急増し、元に戻ってしまいました。 インフルエンザ感染は学校生活で集団発生し、子供たちが家庭に持ち帰って拡大します。当時、日本では三世代同居が普通でしたから、祖父母がまず感染し肺炎になってしまったのです。 以上は、20年前、日米の研究者が共同で発表した論文であかされた話です。当時、インフルエンザワクチンの効果を証明した研究がひとつも存在せず、私自身、その効果について半信半疑だったのですが、この論文を読んで確信に変わりました。2007年に発表した拙著『健康の新常識100』を初め多くの著作物で、このデータを紹介してきたところです。 ときは流れ、2020年、もっとも信頼性が高いとして世界中の研究者が認める組織から、インフルエンザ・ワクチンのメタ分析論文(Q4参照)が発表されました。結果は、「有効率59パーセント」、「重症化を防ぐ効果はない」というものでした。多くの人にワクチンを接種し、また数々の論文を精査してきた私にとって、大いに納得のいく内容でした。 一方、ワクチンに関する論文不正も多く、世の中に誤った情報が流れているとの指摘もなされてきました。 この歴史から学ぶべきは2点、つまりワクチン接種は、(本当に有効なら)高齢者でなく活動性の高い世代から先に行うべきことと、いかなるワクチンも効果は限定的であることです。 【参考文献】 1) Reichert TA, et al., The Japanese experience with vaccinatinf schoolchildren against infuluenza. N Engl J Med 344: 889-896, 2001. 2) Demicheli V, et al., Vaccines for preventing influenza in healthy adults (review). Cochrane Database Syst Rev, CD001269, 2020. 3) Jefferson T, et al., Oseltamivir for influenza in adults and children: systemic review of clinical strudy reports and summary of regulatory commnets. BMJ g2545, 2014. (9) 接種を1回で終わりにしても大丈夫?  インフルエンザ・ワクチンは、その昔、大人も子供も2回接種が原則でした。ところが希望者が予想外に多く、また製造法がアナログ的なため生産も追いつかず、いつの頃からか「成人は1回」と思い込まされてしまった、という歴史があります。 幸い、コロナワクチンのほうはQ10の「疑惑その3」に記したとおり、公式論文のデータを正確に読み解けば、接種1回と2回でほとんど差がなく効果は同じなのです。このことは、当ホームページのQ12で紹介したデータからもあきらかです。 「接種を1回だけでやめると、何か体に悪いことはないか」と心配する人もいますが、インフルエンザ・ワクチンで実証されているとおり、問題は何もありません。 ワクチンを2回接種するのは、免疫システムの記憶力が強化されるはずという発想に基づくもので、昔からブースター効果と呼ばれてきました。ブースターとは打ち上げロケットの2段目という意味です。しかし、その効果について厳密な実証がなされていないことと、2回目の接種で予期せぬアレルギー反応が起こったり、いわゆるADEが生じたりするリスクもあります 当ホームページで紹介しているさまざまな事実から、コロナワクチンを1回だけ接種してやめても、何も問題はないと言えます。 (10) 年をとると免疫はつかなくなるのか?  → 「もう歳だから打つことにした」「いい年齢だから打つのやめた」「打ったら熱が出た!自分も捨てたもんじゃない」「あなたの歳では熱も出ないから解熱剤はいらないと医者に言われ、頭にきた」などなど、世間は訳のわからない会話で盛り上がっています。 やはり誰もが気になっていたのは、年をとると副作用も出ないのか、もしそうなら免疫もつかないのか、ということです。 その答えがやっとわかりました。米国でワクチン接種を2回受けた50人の血液を調べ「年齢別に中和抗体の量を比べた」という、有難い研究が行われたのです。使ったワクチンはファイザー社製で、「従来の新型コロナウイルス」と「ブラジル型変異ウイルス」のそれぞれに対する中和抗体を同時に調べたものです。 データは、「年齢が高い人ほど、若い世代に比べ極端に免疫がつきにくい」ことを示しています。研究対象となった50人には個人差もありますから、そのバラツキの範囲を楕円で表示(画像⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/m_image21.gif )しました (グラフは、著作権を侵害しないよう、発表データをもとに筆者が作図したもの)。 それにしても、かなりショッキングなグラフですから、気が弱い人の目に入らないよう、表示は止めてあります。ショックを受けても大丈夫な方だけ、点線の枠内にカーソルを合わせてご覧ください。 【参考文献】 1) Bates TA, et al., Age-dependent neutralization of SARS-CoV-2 and P.1 variant by vaccine immune serum samples. JAMA, Jul 21, 2021. (11) ワクチンはどれくらいの間、効いているのか?  待望のデータが7月31日に発表されました。ワクチンの効果がどれくらい続くのかを実証した、初めての報告です。中和抗体量ではなく、接種後の時間が経つにつれ、感染率がどれくらい悪化していくのかを実測したものです。 その方法が見事です。場所はイスラエル。早い時期から接種が行われていましたが、そのうち今年の「2月に接種を受けた人」と「4月に接種を受けた人」に限定して、比べたものです。対象は2回接種を終えた50万人ほどです。この2つのグループの全員に対して、6月1日からの約2ヶ月間で、いっせいにPCR検査を実施しました。 その結果は明快でした。感染した人の割合は、「2月に接種を受けた人たち」が「4月に受けた人たち」に比べて2.0倍も高くなっていたのです。ワクチンの効果は、そもそも世間で言われているほど大きくありませんから(Q10、Q12参照)、接種して2ヶ月もすると効き目は、ほとんどなくなるということになります。 この調査が優れていたのは、2つのグループを設定する際、年齢、性別はもちろん、居住地や収入、さらには肥満度、高血圧、糖尿病、心臓病、腎臓病、自己免疫疾患などを徹底的に調べ上げ、偏りがないようにコンピュータで調整していたことです。そのため対象から外されてしまう人も少なくありませんでしたが、設定としてはほぼ完ぺきだったと言えるでしょう。 このデータから言えるのは、2ヵ月前に接種を終えた人たちは、すでに効果が完全に切れてしまっている、ということです。ただし前項で述べたとおり、あくまで50歳以下の人たちに限る話であり、それ以上の年齢層では最初から免疫はついていなかったでしょう。 【参考文献】 1) Mizrahi B, et al., Correlation of SARS-CoV-2 breakthrough infections to time-from-vaccine; preliminary study. medRvix, Jul 31, 2021, in press. (12) ワクチン接種後に感染すると回復が遅れる!  コロナに関する新語が、またひとつ生まれました。ロング・コゥヴィド(long Covid)、直訳すれば「長引くコロナ感染症状」です。ワクチン接種を2回受けた人がコロナに感染すると、症状が長引いて回復が遅れてしまう、という状態を指しています。 きっかけは、7月28日に発表されたデータでした。イスラエルでワクチン接種を2回受けた1,497人を対象に、接種後の感染率を確認するための調査を行ったところ、未接種の人が感染した場合に比べて、回復があきらかに遅れ、6週間経っても嗅覚異常や咳、倦怠感、呼吸苦、筋肉痛などが残っている、という意外な事実が判明したのです。 その後、多くの研究者が、この点を確認するための研究を開始していますが、まだ十分なデータが集まっておらず、立証できないままとなっています。中には、フェイスブックを利用して個人レベルでデータの登録を呼びかけている人もいて、現時点で24名がロング・コゥヴィドになったことを確認しているそうです。 なぜ、このようなことが起こるのかは解明されていませんが、Q7(6)で説明した抗体依存性感染増強(ADE)が起こっているのかもしれませんし、あるいはワクチンと感染の両方で体内に生じた大量のトゲトゲ蛋白が、ダブルパンチで悪さをしてしまうのかもしれません。 ワクチン接種の問題点が、またひとつ浮き彫りになったようです。 【参考文献】 1) Parker-Pope T, Can vaccinated develp long Covid after a breakthrough infection? New York Times, Aug 17, 2021. 2) Bergwerk M, et al., Covid-19 breakthrough infections in vaccinated health care workers. N Engl J Med, Jul 28, 2021.   ---------------------------------------------------------------------------------------------------- 【挿入図3枚】 (5) 変異ウイルスは・・   (6) 抗体依存性感染増強(ADE)って・・   (10) 年をとると免疫は・・     
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