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投稿者:滝 敏美
プッシャー形態の機体の3次元運動解析を試行しました. 興味深い結果が得られたので報告します. まず,Zaic年鑑 1964-65年,p.195に載っているカナード形態のプッシャー機の図面を示します. カナードも主翼も左翼のほうが長いことに注目してください. このため,最初から右旋回するようになっています.右ロールするようにエルロンを操舵していることと同じになります. プロペラは市販プロペラを逆にして使っています.したがって後ろから見て時計回りに回転します.ゴムのトルクは機体を左にロールさせる効果があります. 図の左下の注記と左端の図を見てください.真上に向けて発進すると,らせん状に上昇すると書いてあります. 運動解析は次のように行いました. 機体の空力微係数と慣性データは翼幅328mm,ゴムを含む重量15gの通常形態の機体のデータをそのまま使い,プロペラだけをプッシャータイプに変更しました.ゴムはFAI TAN Super Sport 3.2mm幅,2条で,740回巻きです. この条件で解析すると,どうしても機体が上昇しないことがわかりました.そこで,カナード図面を参考にして,上反角効果を50%増,方向安定を40%減にし,エルロンを右ロールにとりました.スラスト角はダウンスラストをゼロ度(機体重心とプロペラ中心を結ぶ線を基準),サイドスラスト右1度にしました.発進角度は80度とほぼ真上に向けました. この条件で解析した結果を図に示しました. この図からわかるように,図面に書いてあるとおり,らせん上昇していることがわかります.獲得高度はトラクタータイプと同等です. なお,エルロン舵角をとる代わりに,ラダー舵角で代用しても同じような結果になります. 以上,プッシャータイプにすると,上反角を増し,垂直尾翼を縮小する必要があることがわかりました.また,発進角度はトラクタータイプに比べて上に向ける必要があります. Zaic年鑑に書いてあることと解析が合っていることがわかりました.
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