投稿画像
投稿者:はっちん
新型コロナのエビデンス 元記事URL⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/ 岡田正彦 新潟大学名誉教授(医学博士)  テレビでは語られない世界の最新情報を独自に分析し日々更新  正しい情報を偏りなく (2022.3.28) NEW! Q18 あやまちを繰り返さないために? ―第1回― A <パート1> 野生動物の怖さ  コロナ騒動の終息に向けて、過去、現在、未来の問題点を何回かに分けてまとめていくことにします。その第1回は、新型コロナウイルスが、どこで、どうして発生したのか、そして問題点はどこにあったのかを考えます。地球上には、人類の生命を脅かすかもしれない未知のウイルスが、無数にいるとされています。新型コロナウイルスの発生源を知ることは、新たな脅威に対処するための必須要件です。 当ホームページでは、すでに2020年5月掲載の記事で以下のように報告しました。つまり新型コロナウイルスの発生には2つの説があり、ひとつは中国・雲南省の大洞窟に生息するコウモリが持っていた、とするものです。コウモリは赤や緑の光を好む性質があるため、およそ1,000キロメートルを飛び越え、大河・長江(揚子江の上流)の畔にあって光輝く湖北省武漢市の海鮮市場にやってきたというのです。 もうひとつは、武漢市にあるウイルス研究所で、コウモリが持つコロナウイルスの遺伝子改造を行っていたのではないか、という説です。研究所に勤める職員が、改造したウイルスに感染し、それが武漢市の市民に広がっていったのではないとの仮説でした。中心的役割を果たしたのは、当時57歳の女性科学者シー・ジェンリーだった、と欧米のメディアは名指しで報じていました。 以下、新たな情報に基づいて、さらなる考察を行ってみます。オーストラリアのウイルス学者エドワード・ホルムズ氏は、2002年に中国で発生した重症呼吸器感染症(SARS)の流行以降、同国内に生息する野生動物のウイルスを調べていました。メディアは彼を「ウイルス・ハンター」と呼んでいます。 SARSの流行のあと、コウモリの体内にいるウイルスが、ハクビシンやタヌキを介してヒトに感染したと報じられたことから、中国当局は表向き、市場での野生動物の売買を全面禁止にしたと宣言していました。 しばらく経った2014年、ホルムズ氏は武漢市の海鮮市場を訪れた際、ヘビ、アナグマ、ネズミ、鳥など生きたままの野生動物がカゴに入れられ食用として売られている現場を目撃し、ショックを受けました。同行した中国当局の職員に気づかれないよう、スマホでこっそり写真に撮っていたのですが、使い道もなく放置していました。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックが起こり、これこそ発生源を示す重要証拠と考え、写真を添えて論文を発表しました(実際の写真は参考文献7)で見ることができます ⇒画像例 https://cdn.rara.jp/dynamic/f1/16/2fc4160a6d4851a1b834be820f9af116w999_1005391982.webp )。 <パート2> 隠ぺい体質  しかし、今となっては海鮮市場で売られていた野生動物が、どのようなウイルスを持っていたのか調べることはできません。なぜなら、中国当局がすべて撤去し隠ぺいしてしまったからです。ホルムズ氏が公表した写真もフェイクだとしています。 ホルムズ氏は、中国の張永振という研究者の要請を受け、武漢市で多発している謎の肺炎の調査に当たっていました。2019年12月26日、二人は、武漢中央病院に入院したある患者が謎の病気に特有の症状とレントゲン像を呈していたことに注目し、肺から採取したサンプルを入手しました。未知の病原体の遺伝子配列を確定することに成功したのは、年が明けた2020年1月5日でした。 早速、二人はそのデータを論文にまとめ、2020年1月7日、専門誌「ネイチャー」に投稿しました。ところが、中国側の共同研究者だった張氏は、当局から遺伝子情報の公開を禁じられていて、その禁を破ったことから彼の研究室は閉鎖されてしまうのです。 中国側には、ほかにも複数の研究者が協力していたのですが、その中心人物の肩書が軍の大佐であったことが判明し、話はややこしくなっていきます。「実はホルムズ氏は中国から研究費の助成を受けていた」と一部メディアが報じ、一方、ホルムズ氏が所属するシドニー大学は、「そのような事実はない」と否定するなどゴタゴタが続いています。 <パート3> まとめ  そんな具合で、いまだ話は混とんとしているのですが、マレーシアと米国の研究チームが行った冷静な研究報告も含めて、ここまでの情報をまとめてみます。 新型コロナウイルスの発生源としてもっとも有力な説は、武漢市の海鮮市場、あるいは武漢市を流れる長江の下流(揚子江)にある浙江省舟山市の市場で売られていた野生動物が最初から新型コロナウイルスを持っていて、それらが複数の市民に同時多発的に感染したというものです。 当時、揚子江河口にある浙江省では、タケネズミと呼ばれる動物が食用として流行していました。「華寧兄弟」という人気のユーチューバーが流行らせたもので、最初は自家繁殖でしたが、人気に便乗して野生のタケネズミも売られていたようなのです。 これまで多くの研究者が主張してきたのは、すでに紹介したとおり雲南省の大洞窟に生息するコウモリから感染が広がったとする説です。しかし前出のホルムズ氏の分析では、コウモリの体内にいるウイルスの遺伝子配列は、新型コロナウイルスとはかなり異なっていて、直接の原因ではなさそうです。 米国のトランプが最初に主張した「武漢市のウイルス研究所で生物兵器として作られたウイルス」との説も、物語としては興味深いものの、あり得ないと思われます。なぜなら、炭素菌やサリンに代表される生物化学兵器は、戦闘現場でのみ殺傷力をもたらしますが、ウイルスはパンデミックを起こしてしまうため、使った側にも甚大な被害が及ぶからです。 いずれにしても中国当局は、武漢市の海鮮市場も、また武漢市のウイルス研究所も、発生源としては認めたくないのです。その一方で、中国の一部医師とウイルス研究者たちが、驚くべき早業で、かつ非常に高いレベルで遺伝子解析の結果や患者の病状を専門誌に発表しており、この点は称賛に値するものです。 私がまだ大学の研究室に在籍していた1980年ころのことです。同僚の一人が突然、高熱を発し、急性腎不全の状態になりました。その後、複数のスタッフが同じ症状を呈し大騒ぎとなったのですが、全国の研究施設でも同様の事例が多発していることがわかり、死者も出ていました。原因は、海外から輸入したラットなど実験動物の体内に生息するウイルスでした。鳥インフルエンザもそうですが、ウイルスの脅威は身近にあります。 次回の第2回は、人々を狂わせた「ワクチン神話」が生まれたターニングポイントを考えます。 【参考文献】 1) Holmes E, Novel 2019 coronavirus genome. https://virological.org/t/novel-2019-coronavirus-genome/319, Jan 10, 2020. 2) Wu F, et al., A new coronavirus associated with human respiratory disease in China. Nature, Feb 3, 2020. 3) Pinghui Z, Chinese laboratory that first shared coronavirus genome with world orderd to close for 'rectification', hindering its Covid-19 research. South China Morning Post, Feb 28, 2020. 4) Sun Z, et al., Potential factors influencing repeated SARS outbreaks in China. Int J Environ Res Public Health, Mar 3, 2020. 5) Andersen KG, et al., The proximal origin of SARS-CoV-2. Nature Med, Mar 17, 2020. 6) Lam T T-Y, et al., Identifying SARS-CoV-2-related coronaviruses in Malayan pangolins. Nature, Mar 26, 2020. 7) Zhang Y-Z, et al., A genomic perspective on the origin and emergence of SARS-CoV-2. Cell, Apr 16, 2020. 8) Markson S, The Covid files: how the red army oversaw coronavirus reesearch. The Daily Telegraph, May 11, 2020 9) Zimmer C, New Research points to Wuhan market as pandemic origin. New York Times, Feb 27, 2022. 10) Zimmer C, 'He goes where the fire is': a virus hunter in the Wuhan market. New York Times, Mar 21, 2022.        
投稿記事
画像を拡大