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投稿者:はっちん
新型コロナのエビデンス 元記事URL⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/ 岡田正彦 新潟大学名誉教授(医学博士)  テレビでは語られない世界の最新情報を独自に分析  正しい情報を偏りなく 今週の新情報 (2024.4.22) Q&A 人間が有する治癒力とは: 医師の思い? 過剰な医療を加速してきた理由は、いろいろあって複雑です。今回は、その理由として考えられる背景を分析してみました。 ≪背景:その1≫ 医師たちが集まった飲み会での出来事です。ある医師がポケットから薬のシートをいきなり取り出し、私に「飲んでみて!」と言うのです。何かと聞いたところ、そのころ話題になっていたある新薬でした。服用を続けていたら体調が良くなったような気がするから、という説明です。しかし、その新薬については海外で多数の追跡調査が行われ、「わずかながら副作用としてがんが増える」との指摘がなされ始めていた頃でした(文献1)。 多くの医師は心底、最新の医療技術を信頼し、疑いを抱くことなく受け入れています。そこには金銭の授受もなく、誰に対しての忖度もありません。 ≪背景:その2≫ 企業が新しく開発した薬や医療器材の製造承認を得るには「治験」が必須です。著しく手間のかかる治験は、通常、大学医学部附属の病院に依頼することになり、担当した診療科(講座、あるいは医局と呼ばれる)には、その手数料に加えて莫大な寄付金も入ります。たとえばメタボ健診の基準作りに携わった大学教授11人はとくに高額で、最高3億円を超えていたと報じられました(文献2) 治験に限らず、有名医師たちが新製品についての講演会や研究発表を行うたび、見返りとしての寄付金や講演料、旅費なども支払われます。いずれも大学が定めた規則に従ってお金が処理されていれば合法なのですが、当然、忖度も働くため、製品の欠点には目をつぶり、意図せず新製品のPRに加担することになります。 大学病院で研鑽を積んだ若手医師たちは、やがて地域の病院に赴任し、あるいは自分でクリニックを開設して、最新の製品を当然のごとく使い続けることになるのです。 ≪背景:その3≫ 医師の多くは、基本的に新薬や最新の医療器材を真に優れたものと考えているのですが、最大の理由は、それらを評価した医学論文の多くが「有効である」ことを強調したものになっているからです。 たとえば虚血性心疾患の治療法(経皮的冠動脈形成術;PCI)は、ランダム化比較試験で否定的な結論が出されていることを前回の記事で紹介しました。しかし、医師の目に止まる論文の大部分は、信頼性を欠く後ろ向き調査のデータでしかないという共通点があります。この傾向は世界共通で、国内でも心臓の専門家がPCIの有効性を示すデータとして掲げるのは後ろ向き調査で得られたものです(文献3)。 なぜ後ろ向き調査の論文が、そんなに目立つのかと言えば、費用と人手を必要とせずコンピュータで計算するだけでできてしまうため、論文が簡単に書けて、圧倒的に数で勝ることになるからです。 [YouTube:shiAfO0v4lk:R] 後ろ向き調査の無責任 ≪背景:その4≫ 深刻なのは、論文の多くが薬や医療機材の企業から資金援助を受けて行われていることです。論文を発表する際、著者らがどこからお金を受け取ったかを必ず明記することになっておりこれを「利益相反の開示」と呼ぶことは、以前の記事で説明したとおりです。しかし、だからといって、これが免罪符になるわけではありません。 変形性股関節症や骨折などに対し、股関節を金属やセラミックでできた人工関節に置き換えるという治療法があります。この手術を受けた人は過去10年間で2倍にも増えているとされています。 この手術法の効果を報じた68編の論文を調べ、「良くなった」、「かえって悪くなった」、「どちらとも言えない」の3つに分けてまとめたところ、「良くなった」と結論していた論文は、人工関節を製造している企業がスポンサーになっていた論文で2倍以上も多かったということでした(文献4)。意図的なデータ操作が行われていたのはあきらかでしょう。 母親が4歳の次女を薬で殺害したというニュースがありましたが、そのとき使われたのは、母親が服用していたオランザピンという統合失調症の薬でした。この薬については、5つの学術調査が行われていましたが、製薬企業に不利となるデータが隠ぺいされ、都合の良いデータだけが公表されていました(文献5)。 その副作用を知らされないまま服用した人たちに重度の肥満や糖尿病の発症が認められ、1千件を超す訴訟が起こされるという騒動に発展しました。米国の司法は、1千700億円にのぼる賠償金の支払いを製薬企業に命ずる判決をくだしました(文献6)。この薬は、効果においても、昔から使われていた薬に比べ大差のないことが暴露されています。 医師は勉強熱心であり、専門医の資格更新のためもあって、しばしば学術講演会などに参加しています。しかし、そこで講師役を務める有名医師は、製薬企業などから講演料を受け取っていることが多く、話の内容にはバイアスがかかります。 医師たちは製薬企業などの手のひらで踊らされ、そこから逃れることができません。 今回の内容は、当ホームページQ13で紹介した記事(2022年1月31日付)(※1)に準拠しています。当時の記事は、漫画家の小林よしのり氏が『ゴマニズム宣言SPECIALコロナ論5』(扶桑社、2022年)で、刺激的な劇画として再現してくれました。 (※1:記事⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/index_covid.html#PQ13 の(2)参照) 次回は、製薬企業によるデータ操作の手法と実態の核心に迫ります。 【参考文献】 1) Jing H, et al., Impacts of ezetimibe on risks of various types of cancers: a meta-analysis and systematic review. Eur J Cancer Prev 32:89-97,2023. 2) 読売新聞, 平成20年3月30日記事. 3) Uemura S, et al., Primary percutaneous coronary intervention in elderly patients with acute myocardial infarction. Cir J 83: 1229-1238, 2019. 4) Ezzet KA, The prevalence of corporate funding in adult lower extremity research and its correlation with reported results. J Arthroplasty 18: 138-145, 2003. 5) Berenson A, Eli Lilly said to play down risk of top pill. New York Times, Dec 17, 2006. 6) Office of Public Affairs, Eli Lilly and Company agrees to pay $1.415 billion to resolve allegations of off-label promotion of Zyprexa. U.S. Department of Justice, Jan 15, 2009.        
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