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投稿者:はっちん
新型コロナのエビデンス 元記事URL⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/ 岡田正彦 新潟大学名誉教授(医学博士)  テレビでは語られない世界の最新情報を独自に分析  正しい情報を偏りなく 今週の新情報 (2023.5.29) Q ポスト・コロナで気をつけたいのは大気汚染? A ポスト・コロナのときを迎え、人々の気持ちがすっかり緩んでしまっているようです。そのせいか、ウイルス性の風邪と胃腸炎が大流行しているのをご存知でしょうか? さて気持ちの緩みで心配なのは、感染症ではなく「大気汚染」のほうです。かつてPM2.5という言葉が流行しましたが、コロナ禍のせいで、すっかり忘れ去られた感があります。これは大気汚染の程度を表わす指標のひとつで、空中に浮遊する微粒子のうち直径が2.5マイクロメートル以下のものを指しています(毛髪の直径が50~100マイクロメートル)。PM2.5の濃度は、マイクログラム/立方メートルという単位で表します(以下、単位と略称)。 米国東海岸にある大学の研究者たちが、このPM2.5と死亡率との関係を大規模に調べ、結果を発表しました(文献1)。対象は、米国の公的医療保険制度に加入している65歳以上の男女、約7千万人です。 まず全米を地図上で1キロ平方メートルずつに区切り、各地域で刻々と発表されているPM2.5値から、その年間平均を求めました。次に、各健康保険加入者を、居住地域の郵便番号をもとに、地図上に描いた区画とひもづけし、死亡率との関係を16年間にわたり調べたという研究でした。 結果は、「16年間で全米のPM2.5が12から6単位へと半減していた」ことと、それによって「住民の死亡率が7パーセント減少していた」という事実でした。もちろん、年齢や性別、収入、環境など14項目におよぶ背景因子を調べ、それらの影響を取り除く統計処理が行われていましたので、因果関係は正しく証明されたものと判断されます。 実は、大気汚染と死亡率の関係については、以前から膨大な調査・研究が行われていて、以下のようなことがわかっていました(文献2など)。  ・ PM2.5が10単位、高まると肺がんが8パーセント増える  ・ 建物の外で働く人は、中で働く人より肺がんが多い  ・ PM2.5より粒の大きいPM10.0も肺がんの原因になっている  ・ すべてのがんの3パーセントは大気汚染が原因  ・ 幹線道路の近くに住む人や、車を長時間運転する人にがんが多い  ・ 大気中の一酸化炭素、鉛、二酸化窒素、オゾン、二酸化イオウ、煤(すす)なども有害 では、日本の現状はどうなのでしょうか? 各地域の詳細な測定値が公開されており、各自治体のホームページで見ることができます。たとえば東京都の場合、リアルタイム時報 (tokyo.lg.jp)に測定値が刻々と表示されています。全国には、PM2.5が16単位を超える地域がかなりあり、中には51単位を超えているところもあります。 次の写真(画像⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/filter.jpg )は、人口密集地のマンションに設置されている「空気取り入れ口のフィルタ」(当ホームページの2023年4月10日付記事※1参照)です。左は使用前、右はフィルタを装着して2ヵ月後の写真です。PM2.5は目で見えないものですから、フィルタに付着して見えるのは主に、排気ガス中のスス、解体工事による粉塵、車のタイヤとアスファルトの摩擦によって舞い上がるホコリです。とくにススは、強力な発がん物質として知られています。 (※1:記事⇒ https://rara.jp/royal_chateau_nagaizumi/page4054#4106 )    感染症予防の目的でマスクを着けるかどうかは個人の判断、であることが強調されています。しかし、交通量の多いところに出かける際、私は昔から大気汚染対策としてマスクをしていましたし、これから続けるつもりです。 【話 題】  当ホームページ宛に届いた話題から。こんなツイッター投稿があったので読んでみてください、とのお便りでした。内容は、「ワクチン接種後に身内が亡くなり、接種した医療機関に情報を伝えようと電話をしたところ、『わかりました。では2回目の接種はキャンセルしておきますね!』と言われた」というものです。うそニュースのような気もしますが、もし本当だったのならブラック・ユーモアで済まされない話です。 【参考文献】 1) Josey KP, et al., Air pollution and mortality at the intersection of race and social class. N Engl J Med, Mar 24, 2023. 2) Kim H-B, et al., Long-term exposure to air pollutants and cancer mortality: a meta-analysis of cohort studies. Int J Environ Res Public Health, Nov 21, 2018.        
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