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投稿者:小心者
●部分断面補修  コンクリート構造物の「部分断面補修」とは、部分的な浮きなどの変状の対策として用いられるもので、変状箇所とその周辺のコンクリートをはつり取り、ポリマーセメントモルタルなどの断面修復材を用いて直す工法を指しています(図2)。  ●再劣化の状況調査  再劣化の状況を調べるためにコンクリート構造物の現地調査をしました。  調査では、外観・打音調査、鉄筋かぶり(コンクリート表面から鉄筋までの距離)調査と、採取したコンクリート試料を用いた塩化物イオン量の測定などを行いました。また、表層のコンクリートを除去して鉄筋を露出させ、その腐食状況も調べました。  コンクリート構造物の再劣化は主に補修箇所の近傍で認められました(図3)。調査したコンクリートの塩化物イオンの量は1.5~2.3kg/m3と多く、これは海で採った砂から十分に塩分を除かないまま使ったことが原因と考えられます。  はつりによる鉄筋腐食調査の結果、補修箇所と未補修箇所の施工境界近くで鉄筋腐食が認められました(図4)。鉄筋腐食の範囲は、補修箇所側に80mm程度、未補修側に160mm程度の範囲で鉄筋の一部が欠損している状態で、マクロセル腐食と呼ばれる現象が起きている可能性があります。なお、今回の調査では補修箇所の近くで劣化が認められた箇所の多くは、補修後10年程度を経過した箇所でした。 ●マクロセル腐食  マクロセル腐食とは、図5に示すように、自然電位の異なる箇所(自然電位が卑な部分をアノード部(陽極部)、貴な部分をカソード部(陰極部)と呼ぶ)が互いに離れた位置にあり、この間でマクロセル電流が流れ、アノード部で局部的に腐食する現象です。コンクリート構造物において、部分断面補修の施工によりマクロセル腐食が生じると、補修箇所に隣接する未補修箇所で腐食が促進されることが考えられます。 ●劣化を模擬した供試体試験  このような再劣化のメカニズムを探るために、現地調査結果を踏まえた供試体試験を行いました。現地調査から、コンクリート供試体は、塩化物イオンを含むものとしました。また、劣化位置が部分断面補修箇所と未補修箇所の境界付近で生じており、マクロセル腐食の可能性があることから、マクロセル腐食の有無を探るために、鉄筋を分割してリード線で接続し、それぞれの区間に流れる電流を測るようにしました(図6)。作製した供試体は、炭酸ガス濃度5%の促進中性化試験槽に入れて、経年による劣化を模擬しました。この時の鉄筋腐食状態は、例えば次頁図7のように、塩化物イオン量が多いほど腐食が進行する傾向と同じでした。そこで、コンクリート構造物の補修と同様に、供試体の一部をはつり、鉄筋を露出させた後、鉄筋をケレンして、実際に使用されている市販のポリマーセメントモルタルを使用して部分断面補修を模擬しました。
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