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投稿者:はっちん
元記事⇒ 久留米大学医学部免疫学講座 https://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/corona.html 新型コロナ「正しく恐れ、うつさない、うつらない」ー 久留米大学医学部免疫学講座より ー ⇒ https://rara.jp/royal_chateau_nagaizumi/page3352 から 【抜粋】 [(40) 新型コロナウイルスに打ち勝つためのバランスは(全てが諸刃の剣)?] ● デザート:全てにおいてバランスは重要です。免疫力はウイルスに打ち勝つために必要ですが、過度にパワーアップしてしまうと自身の細胞にも攻撃を仕掛けてしまいます。バランスを保ちながら免疫力をパワーアップすることが重要で、食物繊維が手助けしてくれます。甘味は免疫強化に必要ですが、食べ過ぎて太りすぎてしまうと免疫力が逆に落ちてしまいます。BMI が 30 を超えると重症化の危険性が増すので注意が必要です。肥満予防、そして甘味から得たエネルギー源を免疫細胞に効率よく取り込ませるため、食後の運動はお忘れなく。 ● 運動:適度な運動は免疫力強化につながりますが、過度な運動は免疫力を逆に落としてしまいます。 「適度とはどれぐらい」とご質問をよく受けますが、個人差が非常に強いと思います。例えば、いつもジョギングされている方が 3 キロ走っても朝飯前と感じます。すなわち適度な運動です。一方、普段走った事が無い方が 3 キロ走ると翌日は「足が棒のよう」と感じられると思います。これは疲労を蓄積した過度の運動です。 ● 入浴:お風呂は免疫力を強くしてくれます。しかし、熱いお風呂に長くつかり、体が「ゆでダコ」のように赤くなった場合は、血管の拡張により免疫力の低下をまねきます。 ● マスク:予防面でも同様です。マスクは感染予防には重要ですが、マスクをして激しい運動をすると熱中症や低酸素血症といった危険な状態を招いてしまいます。特に近年は高温多湿のため、熱中症は昨年だけでも本邦で 1,581 人の命を奪っています。屋外でヒトとの距離がとれるところではマスクを外す習慣が必要かもしれません。また、高齢者の熱中症は屋内での発症も多いため、屋内の熱中症対策も急務かもしれません。総務省消防庁の速報値によると、8 月 3 日から 8 月 9 日の間に熱中症で救急搬送された方は 6,664 人です。一方、同期間に新型コロナウイルス感染が確認された方は約 8,200 人です。新型コロナウイルス対策をとりながら、熱中症も予防しないといけない大変な状況と思います。しかし、多くの皆さんは、各自で対策をとられこの難題を克服されているようで、感銘を受けています。なぜなら、2019 年 8 月 3 日から 8 月 9 日までの熱中症での搬送者は 15,299 人で、今年は昨年よりも劇的に減っています。 ● 次亜塩素水:「次亜塩素酸」は新型コロナウイルスを殺すためには有効ですが、誤って使うと肺炎を起こしてしまいます。事実、新型コロナウイルス対策のため、窓を締め切り頻繁に次亜塩素酸で部屋を消毒していた姉妹 2 人が、新型コロナウイルス感染ではなく、次亜塩素酸による肺炎で入院となった症例もあります。また、「次亜塩素水」ですが、空気中の低濃度散布は健康被害を引き起こす可能性があります。次亜塩素水のウイルス除去に対する有効性もアルコール等に比べて低く、使用に関する注意点が 6 月 26 日に経済産業省から通達されました。要点は、「次亜塩素水は紫外線で壊されるため遮光での保存が必要」、「皮脂などの汚れも次亜塩素水を破壊してしまうため、消毒場所の汚れをあらかじめ除去しておく必要がある」、「表面がヒタヒタになるまで次亜塩素水をたらし、しばらくして拭き取る」です。 蓄積された結果からすると、テーブルなどに触れて感染してしまう可能性は、新型コロナウイルスでは季節性インフルエンザやノロウイルスに比べて低いようです(Lewis D, Nature, News Feature 2021, 1/29, p26、Goldman E, Lancet Infectious Dis 2020, p892, Mondelli MU, Lancet Infectious Dis 2020, 9/29)。 ゼロではないので、こまめな手洗いやテーブルなどの定期的な消毒は必要です。しかし、次亜塩素水やオゾンを常時噴霧したり、紫外線の持続照射などの過剰な対策は必要ないのかもしれません。紫外線は遺伝子変異を起こすため、皮膚がんや失明にいたる眼疾患を将来起こす可能性は否定できません。また、高濃度の次亜塩素水やオゾンも重篤な健康被害をもたらしてしまいます。例えば、害虫をしとめるには殺虫剤は非常に有効ですが、部屋を閉め切り噴射し続ける方はいらっしゃらないのかもしれません。つまり、新型コロナウイルスは殺せても、数年後に皮膚がん、失明、重篤な健康被害を起こししまえば、元も子もありません。 ● 公共対策:外出規制は感染者数を抑制出来きますが、長引くと財政破綻による自殺や犯罪の増加、そして子供達のはかり知れない精神的影響を起こしてしまいます。欧米では、ロックダウンにより、病院受診者や健康診断が減っています。これにより早期発見が遅れてしまい、5 年後には、乳癌での死者が 7.9~16.6%、大腸癌の死者が 15.3~16.6%、肺癌の死者が 4.8~5.3%、食道癌の死者が 5.8~6%増えると試算されました(Maringe C, Lancet 2020 7/20)。癌による日本の死者は、昨年は 37 万人です。欧米の試算が正しく、そして日本がロックダウンを行っていたとすれば、少なくとも 2 万人以上の救えた命を 5 年後には失っていたのかもしれません。フランスやアメリカからロックダウンに伴い、心筋梗塞の患者さんの入院が減った事が報告されました。フランスの病院では心筋梗塞で入院された患者さんは、ロックダウン前の 686 人から 481 人に減少したようです。多くの患者さんが新型コロナウイルスの感染を恐れて、症状があっても受診を控えられているのかもしれません。結果、早期に受診されないため、病院での心筋梗塞の死亡率がロックダウン前の 3%からロックダウン後には 5%へと増加しています(Mesnier J, Lancet Public health 2020, 9/17)。また、精神疾患では 50%以上、心疾患では 43%、糖尿病では 49%の患者さんの診断の遅れもイギリスから報告されています(Williams R, Lancet Public Health 2020, 9/23)。        
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