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投稿者:はっちん
元記事⇒ 久留米大学医学部免疫学講座 https://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/corona.html 日本人の優越性を信じて 2020年初期には、新型コロナウイルスは未知であったため、多くの国々が行動制限などで感染拡大を抑制することにより時間稼ぎをして、その間にワクチン接種の普及さらには医療体制の整備を行い、季節性インフルエンザのように多くの感染者が出ても重症化が抑制できるように「ロードマップ」が作成されたと思います。そして、このロードマップが正しかった事を世界の多くの国々が今教えてくれています。事実、「アルファ株」の流行時には野戦病院の設立が必要なほど医療逼迫していた欧米諸国では、「デルタ株」からは医療逼迫はなくなり、現在の「オミクロン株」では昔の生活を取り戻されています。日本も同様の方針であったと個人的には信じていますが、「石橋を叩いて渡る」慎重さや、その他の様々な要因で1年以上も世界から遅れをとっているような気がしています。新型コロナウイルスに対して、外国人に比べ日本人は以下に示すような多くの優越性を持っています。感情ではなく既に示された科学的根拠に基づき、できるだけ早く世界に追いつく必要があるのかもしれません。 [思いやりのマスク文化]:感染を完全に予防するためには「不織布マスク」では不十分で「N95」と呼ばれる特殊なマスクが必要となります。また、眼薬をさして苦いと感じる方は多いと思いますが、眼は涙管を介して口腔内につながっています。よって、マスクだけでは「頭かくして尻隠さず」状態で、眼から感染してしまいます。よって、完璧な感染予防のためには「N95マスク」と「ゴーグル」が必要となります。このように、マスクだけでは完全な感染予防にならないため、欧米ではマスク着用の習慣はありません。一方、マスクは飛沫を防ぐために、ヒトにうつす可能性を下げてくれます。日本では、自身を守る感染予防でなく、ヒトにうつさないための「思いやりのマスク文化」が浸透しています。これにより世界に比べて日本は人口当たりの感染者数が著名に抑えられていると個人的には信じています。札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門のホームページによると、2022年8月11日時点の人口100万人あたりの累積感染者数は、アメリカの27.9万人、韓国の34.2万人に対して日本は6.4万人です。また、日本ではBA.5株の爆発的感染拡大を8月に認めていますが、それでも2022年8月31日時点の人口100万人あたりの累積感染者数は14.9万人でアメリカや韓国の半数です。 【挿入画像⇒ https://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/20220907.fld/image006.png 】 [ファクターX]: 山中伸弥先生が早期より「ファクターX」として提唱されたように、何らかの要因により、新型コロナウイルス感染による死にいたる重症化から日本人が守られていることは蓄積された結果からも明らかです。事実、人口100万人あたりの死者数は2022年8月11日時点でアメリカの3,112人に対して日本は274人です。また、BA.5株の爆発的感染拡大を起こした後の2022年8月31日時点でさえ314人でアメリカの「十分の一」です。 ファクターXについては未だ明らかとなっていませんが、様々な要因が関与していると考えるのが妥当かもしれません。新型コロナウイルス感染による重症化リスクの一つは「肥満」です。肥満者の割合は日本では4.5%に対して、アメリカは31.8%、イギリスは24.9%と大きく異なります。肥満者の少なさが新型コロナウイルス感染による重症者の抑制に貢献しているかもしれません。(委細は「(40) 新型コロナウイルスに打ち勝つためのバランスは(諸刃の剣効果)?」の「長期間の行動制限による健康被害」を参照)。また、キス病として知られるエプスタイン・バー(EB)ウイルスに対する交叉免疫が重症化予防に寄与している可能性が報告されています。欧米人に比べて、日本人の殆どの方は乳幼児期にEBウイルスに感染し無症状で済んでいます。よって、可能性としては否定はできない仮説かもしれません(委細は「(19) 再感染は?」の「交叉免疫」参照)。 個人的に興味を持っているのは「免疫訓練」と呼ばれる新たな概念です。アフリカの子供達の結核を予防するためBCG接種が行われ、結核ばかりでなくウイルス性肺炎による死者数も半減したため研究が進みました。結果、「BCGが自然免疫細胞に効果的な敵との戦い方を覚えさせ、これによりウイルス性肺炎の重症化が予防できる」という「免疫訓練」仮説が2011年に提唱されました(Netea MG, Cell Host Microbe 2011, p355)。また、BCGには牛由来の結核菌が用いられますが、新型コロナウイルス同様に結核菌も変異するため、一概にBCGと言っても用いられる結核菌株は各国で異なります。非常に興味深い事に、2021年3月3日時点で、日本株BCGを用いられている国々では人口100万人あたりの死者数が少ない傾向を認めていました(「(14) 新たな免疫学的概念は?」の「BCG」参照)。すでに、新型コロナウイルス流行も世界的に「エンデミック」に入ったため、BCGと死者数の関連性を再度確認してみました。2022年8月11日時点の人口100万人あたりの累積感染者数と累積死者数は「札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門」から引用させて頂いています。やはり、日本をはじめ、「日本株BCG」を用いている国々では新型コロナウイルス感染による死者数が低く抑えられている気がします。ファクターXは未だ明らかとなっていません。しかし、間違いなく言える事は「外国人に比べて、日本人は新型コロナウイルスによる重症化から守られている」という事です。          
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