投稿者:リンドホルム伯パウル
・¥月#日
私は視察がてら、地中海沿いのリゾートに来ている。
ナディアも連れてきた。
ターゲットの確保に失敗したどころか、損失を出した阿呆が居たので、そいつの処断を行った後、私は海を見ながら酒を飲んでいた。
「おい、ナディア」
「どうしたの?」
「何か飲むかね」
「……お酒は好きじゃないの」
「そうかい」
「あなたはどうなの」
「別に好きじゃない。私は味覚が壊れているんだ」
「あら、そう」
「なあ、ナディア。私はな……物事を楽しいと思ったことがないんだ」
「そうなの」
「ただ、誰かを殺したり、出し抜いた瞬間には、何かしてやったというか、何となく気持ちがすっとするんだ。だが、それがない時はいつも重苦しい何かが喉の奥に常に詰まっている」
「……」
「生きるとは苦しいことだ。だから私は、殺すことに罪悪感を覚えることはない。これは解放だからだ。そう思ってきた。私もそうなりたかった」
「……そう」
「でもな、ナディア」
「なあに?」
「何となく、今は気持ちが軽いよ」
私がそう言うと、ナディアは微笑んだ。
「そう。ならよかった」