投稿者:ナイア
「こうして人類はいくばくかの手助けもあって自身の内から生み出された「聖書の獣」を打ち倒し人類は未来を勝ち取りこの星の支配権を得て、人は「神」との決別を果たしましたとさ。めでたしめでたし」
どことも知れない舞台の上に黒子が一人スポットライトの当たる椅子の上で本を語っていた
「これにて戯曲「王権」最終章「戴冠式」は終わりです」
黒子が持っていた本を閉じる
「…さて終わった「物語」はもう不要、どうでもいので適当に放っておきましょう」
黒子は閉じた本を後ろに放り投げる
すると後ろで大量の本が崩れ落ちる音がする
大仰に驚いたように振り返る黒子
「まぁ、全ては終わって打ち捨てられた残骸、意味も価値もない「物語」だけですどうでもいいでしょう」
そう言いながら正面へ振り向き大げさに肩をすくめる黒子
「では観客の皆々様ご清聴ありがとうございました」
観客席に礼をする黒子、だが観客席には誰も居なかった
嘲笑するように黒子が言う
「と言っても観客は既に「封印の筐の中」ですが」
黒子が見上げながら続ける
「…さてそろそろ私も退去の頃合いですかね」
「これから先の未来の物語は忌むべき神、救済の神も天啓も神罰もありません、貴方達人類が自身でのみ綴る物語です。果たしてそれはどのような結末を迎えるのでしょうか?」
「人類…いえ人はこれからもあらゆることに戸惑い、困惑しながらも何かを選び何かを捨て、その結果に歓喜や後悔を繰り返すでしょう。そしてそこに立ちどまっている暇はありませんよ?」
「人類に祝福在れ…では皆々様御機嫌よう」
黒子がもう一度一礼すると黒子は塵のように掻き消える
そして椅子の上に何も書かれていない一冊の本がスポットライトで照らされていた
それは「神」と言う「地平線」を超えた人類の歴史を綴る1冊の本である・・・