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投稿者:はっちん
元記事⇒ 久留米大学医学部免疫学講座 https://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/corona.html 夏風邪になってくれることを願って 感染症で犠牲になりやすい免疫弱者は、「免疫が発達していない乳幼児」と「免疫力が低下した高齢者」です。また「肥満者」と「痩せすぎの方(栄養不良)」も重症化の危険性が高くなります。しかし、新型コロナウイルスで重症化を起こし易いのは高齢者と肥満者です。事実、厚生労働省発表の2022年8月24日の結果によると、新型コロナウイルスの致死率(全ての変異株を含む)は80歳以上の3.35%に対して、10歳未満は0.0007%と「5,000倍近い差」があります。また、新型コロナウイルスの重症化リスクに「肥満」は入りますが「痩せ」は入りません。この違いが、新型コロナウイルスの謎を解いてくれると思います。つまり、乳幼児と痩身(痩せすぎ)の方は免疫弱者でありながらも、重症化リスクが低いという事は、免疫学的にみて新型コロナウイルスは弱いウイルスと考えるのが妥当と思います。また、高齢者や肥満者は血栓が起こり易く血管が詰まり易い状態です。新型コロナウイルスは血管内皮細胞に発現するアンギオテンシン変換酵素2に引っ付くため、テロ行為として血栓を起こし、血管を詰まらせる事により死に至る重症化を起こしていると考えるのが科学的に妥当と思います。事実、新型コロナウイルス、特に「アルファ株」では、虚血性疾患の特徴である「突然死」や「急激な悪化」が多く認められています。さらに、重症化リスクが高い疾患は、高血圧などの動脈硬化に関連する疾患や、鎌状赤血球症や自己免疫性血管炎など血栓を合併しやすい疾患です(委細は「(45) 重症化しやすい基礎疾患は?」を参照)。 【挿入画像⇒ https://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/20220907.fld/image007.png 】 新型コロナウイルスは弱いウイルスでありながら、血栓症という「テロ行為」を得意としていたため「血管が詰まり易い」方に死につながる重症化を起こしたと個人的には強く信じています。しかし、このテロ行為が特異だったのは「アルファ株」で、「デルタ株」さらに「オミクロン株」ではテロ行為はあまり認めなくなっています。つまり、「オミクロン株」は普通の弱いウイルスになったと思います。また、Lavine先生らは数理解析を用い「子供達に重症化を起こし易い変異株が発生しなければ、子供達に自然感染による強固な集団免疫が獲得され、新型コロナウイルスは数年後には夏風邪程度の風土病になる」という可能性を2021年1月に報告されています(Lavine JS, Science 2021, 1/21)。子供達の重症化率は季節性インフルエンザより未だ遥かに低いため、新型コロナウイルスは夏風邪程度に早期になってくれると信じています。また、京都大学の西浦先生が「新型コロナウイルスは、今後季節性インフルエンザに比べて約10倍の感染者を出す」との数理解析の結果を2022年8月23日に報告されました。この結果も、「新型コロナウイルスが今後夏風邪になる」可能性を支持しているのかもしれません。なぜなら、厚生労働省の厚生科学審議会の報告によると、季節性インフルエンザの感染者は毎年991万人から1,451万人です。⇒ https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/flu/levelmap/suikei181207.pdf つまり、その10倍となれば国民全員が1シーズンで感染する事になり、この様な感染症は夏風邪以外にありません。 2022年9月1日の読売新聞オンラインで、厚生労働省発表の2022年7月6日から8月23日の第7波(BA.5株)での年齢別死者数が発表されました。オミクロン株感染による死者の33.2%は90歳以上、40.5%が80歳代、16.7%が70歳代です。BA.5株による死者の90.4%は後期高齢者に集中しています。 また、厚生労働省の「2022年8月版、新型コロナウイルス感染症の「いま」に関する11の知識」⇒ https://www.mhlw.go.jp/content/000927280.pdf によると、2022年1月5日から4月5日の期間、つまり第6波(BA.2株)で新型コロナウイルス感染により亡くなられた年齢別割合は、90歳以上が30.9%、41.8%が80歳代、19.02%が70歳代です。BA.2株いおいても、死者の91.8%は後期高齢者に集中しています。 よって、オミクロン株はBA.2株とBA.5株のどちらも、健常人では夏風邪程度であるが、免疫力が顕著に低下した後期高齢者に対しては命にかかわる重症化を起こす「日和見感染症」に類似した感染症と考えられます。日和見感染菌の代表は、多くの方、特に子供達の咽頭に常在する「肺炎球菌」です。常在している細菌でありながら、免疫が過度に低下した後期高齢者には致死的な肺炎を起こしてしまいます。このような日和見感染菌による、誤嚥性肺炎で2021年は36,263人、市中肺炎で2019年は95,518人の命が奪われています。1年間で計算すると、新型コロナウイルスの10倍以上の尊い命が新型コロナウイルス以外の日和見感染菌により奪われているのは事実です。よって、65歳以上から肺炎球菌のワクチンが国の一部補助で接種可能で、多くの高齢者の命を救っています。オミクロン株においても、ワクチンが多くの高齢者の命を救っているようです。第6波(BA.2株)で亡くなられた方のワクチン接種率は「2022年8月版、新型コロナウイルス感染症の「いま」に関する11の知識」に示されています。90歳以上では、ワクチン3回接種者に比べて、ワクチン未接種者では10倍近い方が亡くなられています。高齢者の方はワクチン接種で命を守られていますので、4回目接種もよろしくお願いいたします。 【挿入画像⇒ https://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/20220907.fld/image008.png 】 【挿入画像⇒ https://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/20220907.fld/image009.png 】 人間は残念ながら不老不死ではなく、加齢と共に免疫細胞も減少し日和見感染菌により命を奪われてしまいます。新型コロナウイルスも、健常人に対しては夏風邪程度ですが、後期高齢者に対しては肺炎球菌のような日和見感染菌として我々と共存していくのかもしれません。また、日和見感染症のような様相を呈している「BA.5株」を2類相当として扱う事に、世界中の多くの科学者や医師達は疑問を抱かれているかもしれません。          
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