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投稿者:はっちん
新型コロナのエビデンス 元記事URL⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/ 岡田正彦 新潟大学名誉教授(医学博士)  テレビでは語られない世界の最新情報を独自に分析  正しい情報を偏りなく (2023.1.23) Q 繰り返しのワクチン接種が免疫機能を破壊する?  第5回 ワクチンを打つと悪性腫瘍に?  「悪性腫瘍を患っている知人がワクチンを打ったら、急に悪化した!!」。当ホームページには、こんな内容のお便りがよく届きます。新型コロナのワクチンに遺伝子が使われていることを知り、自分の体に組込まれて、がんになったりしないのかと心配する人も少なくありません(悪性腫瘍は狭義の癌以外にも命にかかわる増殖性の病気を含む言葉。以下「がん」と記す)。今回のテーマは、ワクチンとがんの問題です。 もし新型コロナワクチンでがんになるとすれば、以下のようなメカニズムが考えられます 1.メッセンジャーRNA(mRNA)がDNAに逆変換されて自分のゲノム   に組み込まれ、がん遺伝子を傷つける 2.インターフェロン(第1回で紹介※1)が抑制されて、免疫力が低下し、   発がんの抑制が効かなくなる 3.G4構造(第2回で紹介※2)のせいで異常物質が発生し、がん化が   促進される 4.DNAのコピーミスを自動的に修復する酵素が、トゲトゲ蛋白によって   破壊されてしまう (※1:記事⇒ https://rara.jp/royal_chateau_nagaizumi/page3708#3837 ) (※2:記事⇒ https://rara.jp/royal_chateau_nagaizumi/page3708#3853 ) まずmRNAがDNAに逆変換されるのかどうかです。この点は、当ホームページのQ11(4)※3で報告したように、動物実験で実際に起こることが確認されています。DNAに逆変換されると、自分のゲノム(遺伝子の全体のこと)のどこかに組込まれる可能性が高まります。実際に組込まれたことを示すデータは、まだありませんが、そのメカニズムを考慮すれば、すでに誰かの体内で組込みが起こっていると推測されます。 (※3:記事⇒ https://rara.jp/royal_chateau_nagaizumi/page2944#2945 ) 次に、健康の守護神のようなインターフェロンが抑制されて、がんになるかどうかです。この物質を巡る体の仕組みは非常に複雑ですから、かりに、そのようなことが起こっているとしても、その証明は難しいでしょう。 3つ目は、人工のmRNAに含まれるG4という立体構造が、何か「異常なたんぱく質」を作っていないか、そしてその中に発がんに関わる物質が含まれたりしていないのか、ということです。ヒトの血液には、無数ともいえる種類のたんぱく質が流れていますので、存在を証明するのも、やはり容易なことではありません。 4つ目の点は大いに気になるところです。スウェーデンの研究者の報告によれば、遺伝子のコピーミスを修復する酵素の働きを、トゲトゲ蛋白が止めてしまうということでした(1)。細胞のがん化はDNAのコピーミスによって起こるものですから、もし自動修復がなされなければ、がん化した細胞が見逃され、どんどん増殖していってしまうことになります。 この論文は注目を大いに集め、2つのエピソードが続きました。ひとつは、科学専門誌「サイエンス」が、読者からの問い合わせに対するコメントを掲載したことです(2)。内容は「実際に起こる確率は低い」、「mRNAはすぐ分解されるので、起こったとしても一時的」というものでした。もう一つは、実験方法に不備があるとの非難が殺到し、7か月後、投稿者自らが論文の取り下げを申し出る、という異常事態に発展したことです。 しかし、理論的にはありうるメカニズムであり、(サイエンス誌のコメンテーターの理解と異なり)ワクチン中のmRNAは4ヵ月以上体内に残りますから、可能性の一つとして記憶に留めておく必要があります。 ワクチンとがんの問題を取り上げた研究で多いのは、すでに悪性腫瘍を患って治療中の人たちが、新型コロナワクチンを打っても大丈夫なのかを調べたものです。最近は、古典的な抗がん剤(化学療法剤)は使われなくなり、分子標的療法・免疫療法が主流で、とくにPD-1阻害剤と呼ばれる薬を使っている人たちが対象となっています。 治療中にワクチンを接種した人たちと、しなかった人たちを比べたところ、治療効果に差はなかったと結論した研究発表もありますが(3,4)、ワクチン接種後に炎症や発熱などを起こす危険な物質(IL-2、IL-6など)が異常に分泌されるという点でデータは一致しています(5,6)。 特記すべきは、ワクチンと免疫療法剤の両者によって活性化された免疫細胞(B細胞やT細胞)が、がん細胞の塊りを刺激し、増殖させてしまうとの研究報告があったことです(7)。説得力があり、無視できない内容となっています。 やはり気になるのは、ワクチン接種によって新たながんが発生したりしないか、ということです。がんは潜伏期が非常に長い病気です。以下の図(画像⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/cancer.jpg )は「胃がん」の場合ですが(8)、真相を知るには、これだけの年月をかけた追跡調査が必要だということになります。    一方、「ワクチンでがんになる」は全部フェイクニュースだと言ってはばからない論文もあります(9)。70年も前から言われている反ワクチン派定番の主張なのだそうで、当ホームページでも紹介した論文をいくつか取り上げ、「素人が書いているようだ」などと決めつけています。反対派に反対する人たちは、とかく過激でヒステリックなのは世の常です。 「ワクチンとがん」の関係は証明が難しく、現時点で結論を出すことができません。しかし、さまざまな研究データや主張を冷静に評価すれば、因果関係を否定することはできず、生命にかかわる重大問題として注視していく必要があるでしょう。 【参考文献】 1) Jiang, et al., SARS-CoV-2 spike impairs DNA damage repair and inhibits V(D)J recombination in vitro. Visuses, Oct 13, 2021. その後、撤回 2) Lowe D, Coronavirus vaccines and cancer. Science, Nov 19, 2021. 3) Walle T, et al., Cytokine release syndrome-like serum responses after COVID-19 vaccination are frequent and clinically inapparent under cancer immunotherapy. Nat Cancer, Sep, 2022. 4) Mei A, et al., Impact of COVID-19 vaccination on the use of PD-1 inhibitor in treating patients with cancer: a real-world study. BMJ, 10: e004157, 2022 5) Au L,, et al., Cytokine release syndrome in a patient with colorectal cancer after vaccination with BNT162b. Nat Med, Aug, 2021 6) Sumi T, et al., Cytokine release syndrome in a patient with non-small cell lung cancer on ipilimumub and nivolumab maintenance therapy after vaccination with the mRNA-1273 vaccine: a case report. Transl Lung Cancer Res 11(9): 1973-1976, 2022. 7) Brest P, et al., COVID-19 vaccination and cancer immunotherapy: should they stick together? Br J Cancer, Nov 19, 2021. 8) 藤田哲也, 癌の自然歴, 現代病理学大系9c, p. 225-243, 中山書店, 1984. 9) Gorski D, Do COVID-19 vaccines cause "turbo cancer"? Science-Based Medicine, Dec 19, 2022.        
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