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投稿者:はっちん
新型コロナのエビデンス 元記事URL⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/ 岡田正彦 新潟大学名誉教授(医学博士)  テレビでは語られない世界の最新情報を独自に分析  正しい情報を偏りなく 今週の新情報 (2023.6.26) Q 討論: コロナ後遺症は存在するのか? A 6月12日付の当ホームページ※1で「コロナ後遺症を巡る議論」について報告した折、ご意見や体験談を募りました。届いたお便りは、「やはり病は気から、ではないか」というものと、「身内が感染後、1年もの間、さまざまな症状に悩まされ、仕事も休みがちだった。これこそ後遺症では?」という、2つの立場にわかれていました。 (※1:記事⇒ https://rara.jp/royal_chateau_nagaizumi/page4054#4201 ) このような疑問は世界的に広がっており、米国ではRECOVER(回復という意味)と名づけられた大規模な実態調査が進行中です。その第1報が発表されましたので、概要をご紹介します(文献1と2)。 データは、政府機関の肝入りで始まったプロジェクトのもと、アンケート調査で集められたものです。対象は全米の34~60歳の男女で、新型コロナに感染した8646人と、感染していないと回答した1118人です。 データを集計したところ、まず両グループを通じて2.5パーセント以上の人たちに認められた症状が全部で37種類あったそうです。代表的な症状は、すでに本ホームページで紹介したものと同じで、「体を動かすと著しく疲れる」、「だるい」、「めまい」、「頭がもやもやする」、「胃腸の具合が悪い」などでした。統計分析の結果、これら37の症状はどれも、「感染しなかった人たち」に比べて、「感染した人たち」のほうで1.5倍以上も多く認められたとのことでした。 この調査の良い点は、感染しなかった人たちと比べていたことでした。この当たり前のことが、これまでの研究報告では、ほとんどなされていなかったからです。一方、この調査では気になる点も多々あります。 そのひとつは、アンケートの記述が自己申告だったことです。本来、調査の対象にすべきは、ある地域の丸ごと全員か、無作為に抽出した人たちであるべきですが、自己申告制では不公平な偏りが避けられません。2つ目の問題点は、「感染した人たち」のうち4分の1以上が、コロナ感染後30日以内に調査を受けていたことです。30日以内の症状は、後遺症と呼ばない、という約束だったはずです。 そのため2つのグループ間には、重大な偏りがいくつか生じていました。ひとつは、対象者が、SNS経由で自から登録した人や、コロナ後遺症の専門外来から紹介された人など、さまざまに混じり合っていて、グループ間でばらばらだったことです。また、すでに悪性腫瘍を患っている人や、肥満がある人の割合もあきらかに違っていました。 (イラスト⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/fukouhei.jpg )   以上のことから、ここで紹介した研究論文は、最初から「後遺症ありき」だったのではないか、という疑惑が浮かんできます。 つまり、研究論文を掲載する専門誌は、「差がなかった」という地味な原稿より、「あきらかな差が・・・」としているもののほうが読者の関心をそそるため、優先的に採用しがちです。論文を投稿する研究者のほうも、そのほうが実績を自慢できるため、ついデータを操作してしまったという歴史が繰り返されてきました。さらに言えば、病気が増えれば増えるほど製薬企業は儲かりますから、研究費の助成を大盤振る舞いしてしまうという背景も理解しておく必要があります。 この論文発表は、「コロナ後遺症を巡る議論」と題した当ホームページの先回の報告を真っ向から否定する形になったわけですが、真否に決着をつけるとすれば、科学的検証の確からしさから、「コロナ後遺症という名の身体的かつ固有の病気は存在しない」とした結論のほうに、現時点では軍配をあげざるをえません。 どちらの研究発表でもコメントされていたのは、コロナ後遺症だとする一連の症状に酷似しているのが、慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎ともいう)だという点です。すでに1980年代から存在が知られているもので、多くの研究がなされ、脳神経に特徴的な変化が認められるとするデータもあります(文献3)。 この慢性疲労症候群は、原因不明で治療法もなく、捉えどころのない存在なのですが、診断されている人は非常に多く、日米での統計によれば、全人口の0.2~0.4パーセントにも達するとされています。年齢では40歳台に、性別では女性に多くなっています。 つまりコロナ後遺症の学術調査をいくら行っても、40年も前から存在が指摘されていた慢性疲労症候群との区別をつけられないため、分析の仕方によって結論がばらばらになってしまうのです。 学術研究の成果と称するデータが発表されたとき、陰で得をするのは誰なのかも考える必要があるでしょう。 【参考文献】 1) Thaweethai T, et al., Development of a definition of postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection. JAMA, May 25, 2023. 2) Gross R, et al., Disentangling the postacute sequelae of SARS-CoV-2, E Unibus Pluram (fron one, many). JAMA, Jun 13, 2023. 3) 倉恒弘彦, 慢性疲労症候群(CFS)と機能性身体症候群(FSS). 日本生物学的精神医学会誌, 24: 222-227, 2013.        
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