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投稿者:はっちん
新型コロナのエビデンス 元記事URL⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/ 岡田正彦 新潟大学名誉教授(医学博士)  テレビでは語られない世界の最新情報を独自に分析  正しい情報を偏りなく 今週の新情報 前回のテーマ『厚生労働省の死亡データは何を語っているのか?』について、ご意見募集中です。直感でかまいませんので、ぜひお便りをお寄せください。 (2023.4.10) Q これからは何に気をつければよいのか? A すでにポストコロナの時代に入ったかのような雰囲気が漂い、世の中が浮かれています。マスクを外して大丈夫なのか、どんなところに気をつければよいのか、改めてまとめてみました。新型コロナウイルス、とくにオミクロン株が、どのように人から人へと伝染するのかに関する最新情報です。 ヒトの口や鼻から排出される微粒子には、さまざまな種類があります。比較的大きいのは「水滴(または液滴)」と呼ばれ、咳、くしゃみ、おしゃべりによって口や鼻から出てくるもので、サイズが100μm以上と定義されています(μmは1ミリの1,000分の1を表わす単位)。たとえば毛髪の太さが50~100μmです。 感染した人から排出される水滴には、粘膜細胞などと共にウイルスが含まれていますが、通常の会話では0.2メートル以内の床面に落下します。 これより小さなものは「エアロゾル」と呼ばれ、サイズは0.1μmから100μmとさまざまです。小さなものは肺の奥から、また大きなものほど肺の入り口に近いところから排出されます。通常の呼気中には、1リットル当たり7,200個ほどが含まれています。かなり長時間、空中に漂うことから、エアロゾルによる伝染は「空気感染」とも呼ばれます。 1回の咳で排出される水滴よりも、普段の呼気に含まれるエアロゾルのほうが、総量としてウイルス量が多いこともわかっています。つまり1回の咳よりも、長時間の会話のほうが感染リスクは高いのです(文献1)。次の図(画像⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/airborn.jpg )は、さまざまなサイズの微粒子が地上1.5メートルから床面に落下するまでの時間を示したものです。 では、微細なエアロゾルだけで、実際に感染が起こったりするものでしょうか。 この問いに明確に答えてくれた研究が2つあります。一つは、実験動物を2つのケージに分けて飼育し、感染の様子を観察したという研究です(文献2)。実験の方法は、以下の動画(GIF動画⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/aerosol.gif )でご覧ください。 二つ目は、韓国からの報告です(文献3)。ヒトでも空気感染が起こった証拠とされるデータで、古い高層アパートに住む267家族の437人が調査に協力しました。このアパートは構造が複雑で、6つの棟がコの字型につながっています。換気の仕組みも旧式で、各棟に排気ダクトが1本ずつあるだけで、古いタイプの換気扇が使われたり、使われなかったりしていました。 最初の感染者は、10階の住人です。その後、9人が次々に発症したのですが、ほとんどが同じ棟の下のフロアの住人でした。この大きな複合アパートには2基のエレベータがありますが、それを共同利用している他の棟の住人から感染者は出ておらず、かつ感染したうちの2人はエレベータをいっさい使っていないと証言していました。またすべての感染者は、外出時にマスクを必ず着けるなど予防対策はしっかりとっていたとのことです。 以下の動画(GIF動画⇒ https://okada-masahiko.sakura.ne.jp/korean_apartment.gif )は、感染者が集中した棟を側面から見た様子です。 2020年2月、豪華クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号で、次々に乗客・乗員が感染したという出来事がありました。当時、テレビ報道を見ながら直感したのは、船内の空調が、適切なフィルターを通さないまま空気を循環させる方式だったのではないか、ということでした。その後、さまざまな検討がなされ、やはり船内の空調システムに重大な欠陥があったようです(文献4)。ただし研究者の問合せに対し、同船を管理している会社は明言を避けたとのことです。 幸い日本では、2003年に建築基準法が改訂され、「24時間換気システム」の設置が義務づけられています。室内からの排気や給気を強制的に行うもので、「1時間で室内の空気の半分が入れ替わること」が求められています。もともとシックハウス症候群などを防ぐための法律でしたが、今となっては感染対策に大いに役立っていて、韓国からの報告例のような出来事は日本で起こっていません。 国内で行われた研究によれば、デルタ株に比べて、オミクロン株のほうが水滴中により多く残っていることも確かめられました(文献5)。つまりオミクロン株では、いっそうエアロゾルによる空気感染に気をつける必要があるのです。 また、見慣れた光景となった飲食店や食堂でのアクリル板は、換気を妨げ、同時に空気が巻き込まれて停滞するため、感染リスクがむしろ高まってしまうことも実証されました。 これからしばらくの間、守るべきは以下の5点です。 (1) 24時間換気システムは決して止めない (2) 2003年以前の建築物で人々が密集している場所はなるべく避ける (3) そのような場所に長時間いるときはマスクを着用する (4) アクリル板は廃棄する (5) いかなる理由があっても新型ワクチンはもう打たない 【参考文献】 1) Wang CC, et al., Airborne tranmission of respiratory viruses. Science, Aug 27, 2021. 2) Kutter JS, et al., SARS-CoV and SARS-CoV-2 are transmitted through the air between ferrets over more than one meter distance. Nat Commun, 12: 1653, 2021. 3) Hwang SE, et al., Possible aerosol transmission of COVID-19 associated with an outbreak in an apartment in Seoul, South Korea, 2020. Int J Infect 104: 73-76, 2021. 4) Almilaji O, Air recirculation role in the spread of COVID-19 onboard the Diamond Princess cruise ship during a quarantine period. Aeroso Air Qual Res, 21(4), 200495. 5) Imai K, et al., SARS-CoV-2 omicron variant in human saliva in cell-free form. JAMA Netw Open, Jan 3, 2023. 
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