掲示板


| トップに戻る | 検索 | アルバム | 管理用 |

執事
リワキーノ 投稿日:2022年10月26日 18:23 No.166
萬凛さんはリーダースダイジェストという雑誌をご存じですか?
アメリカで発売されて全世界で各国版が刊行されている雑誌です。
私の父がアメリカの写真雑誌「ライフ」と一緒に定期購読していたのですが、その内容
が面白く、私は欧米の社会におけるいろんなエピソードやユーモア精神をこの雑誌でか
なりの量を学んだと言っても過言では無いくらい、影響を受けました。

以下の執事の話はそのリーダースダイジェストで読んだのです。

アメリカ人青年が英国のケンブリッジだったかオクスフォードだったから忘れました
が、留学したときの想い出を記した手記です。
読んだのは私が実家に居たころのことですから、高校卒業するまでだったと思われ、今
から60年前の記事です。

そのアメリカ人はカレッジの寮に入るのですが、何と、その寮では学生たちに執事がつ
いているのです。
手記の内容を覚えている限りでは、学生一人一人に専任の執事がいるような感じだった
のですが、実際は多分、執事一人が複数の学生達を世話していたのだろうと思われます。

アメリカ人学生を受け持った中年の執事は礼儀正しいのですが、決して馴れ馴れしくな
ることが無く、学生が椅子に腰掛けるように勧めても決して着席せず、常に立ったまま
の状態で対応するのです。
陽気でフレンドリー精神を好むアメリカ人の気質をもつその学生は、執事が心から打ち
解けてくれないことを最初のうち物足りなく思うのですが、執事の自分に対する対応の
中に自分のことをとても気に懸けてくれていることに気づくのです。

その学生はタバコを常飲していたのですが、あるとき自分のデスクの上に喫煙の害を説
いた記事が載っている本をそのページだけ見られるように開いて置いてあるのです。
その学生は気に留めず、喫煙をやめなかったのですが、執事は違った本や雑誌類なども
同じようにデスクの上に置くことをやめません。
結局、学生は喫煙をやめたのです。

そしてあるパーティでその学生は酒をしたたかに飲んで酩酊してしまい、学生仲間たち
に部屋まで運ばれるということがあったのです。
欧米の上流社会では衆人環視の中で酩酊することはもっとも恥ずべきこととされていた
らしく、その学生はひどく落ち込むのです。

そしたら執事は「一生に一度は前後見境無く酩酊した経験を持つ紳士はたくさん居ま
す」と言ってその学生を慰めるのです。
一生に一度だけ、と釘を刺しているところが実に効果的ですね。

後に実業家となって成功した学生は、その執事のことをいつまでも忘れなかったことが
その手記から解るのです。

私も萬凛さんのおかげで今、こうやって思い出してもほのぼのとした気持ちになります。




お名前
メール
画像添付


編集キー ( 記事を編集・削除する際に使用 )
文字色