ひろば
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八ヶ岳南麓から
雪谷旅人 投稿日:2024年03月20日 16:48 No.2166
上野千鶴子著「八ヶ岳南麓から」(山と渓谷社,2023年12月刊)

東大名誉教授で社会学者の著者が50代から20年間住み続けた別荘と二拠点生活を語る。別荘は北杜市大泉にあり,標高1000mの山林を切り開いたものだ。南麓を選んだのは,東麓では夕日が見えず,西麓では朝日が見えないためという。南麓は日本でいちばん日照時間が長く,素晴らしい自然がある。

南麓の美しさや別荘生活の喜悲こもごもよく描かれている。都会と違い苦労が多いが,移住者同士の人のつながりが強く,楽しみも多い。スキーなど,著者のアクティブな生活ぶりが分かる。コロナでリモートの会議が当たり前になり,別荘に住んでも不自由を感じなくなった。最近,医療や介護も充実し,高齢者でも不自由を感じなくなったという。

この本を読むうちに,ヘルマン・ヘッセの「わが心の故郷アルプス南麓の村」を思い出した。同じく挿絵付きの本で,南麓の四季を描いている。いずれも優れたエッセイだ。