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ダビデの星を見つめて
雪谷旅人
投稿日:2024年03月07日 20:14
No.2159
寺島実郎著「ダビデの星を見つめて 体験的ユダヤ・ネットワーク論」
(NHK出版,2022年12月刊)
国際政治学者で現・多摩大学学長の著者が,三井物産在職中に多くのユダヤ人と交流し,その体験からユダヤ人の特性を明らかにする。ユダヤ人が陰で日なたで,いかに世界の政治・経済・科学技術を動かしてきたかを分かりやすく解説する。とても面白い。
ユダヤ人は3000年前の出エジプト,2500年前のバビロン幽閉,2000年前のマサダ砦の戦いを脳裏に刻み込み,常にそれをモチベーションとして民族として発展してきた。そのためユダヤ人は「記憶の民」と言われる。ディアスポラで世界各国に離散しても決して現地に融合することなく,ユダヤ教の戒律を守りシナゴーグに通った。離散しながらもユダヤ・ネットワークが生かされた。80年前のシオニスト運動でイスラエルを建国後もネットワークは維持されている。
ユダヤ人は親譲りの財産などに頼らず,自身の付加価値を高めることが大切と教育されてきた。そのため有能な学者や政治家を多数輩出してきた。世界全体に1500万人しかいないユダヤ人(イスラエルに610万人,アメリカに510万人など)だが,その影響力は大きい。
イスラエルは日本と同じく親米国だが,日本がアメリカにべったり付いているのに対し,イスラエルはアメリカをうまく利用している。そのような知恵を日本はイスラエルから学ぶべきである。
ユダヤのことだけでなく,世界の歴史や国際情勢もよく分かる良書だ。