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山は輝いていた
雪谷旅人
投稿日:2023年08月06日 10:54
No.1809
神長幹雄編「山は輝いていた---登る表現者たち13人の断章」
(新潮文庫,2023年8月刊)
登山家が書いた山岳文学の短編集。山を愛する人だけが描ける登山の醍醐味と厳しさに溢れている。編者は「山と渓谷」の編集長だけあって,多くの登山家と親交があり,各短編には著者の紹介が添えられていて登山家の人格を際立たせている。楽しい話も多いが,厳しい話もあり,帰らぬ人となった人も多い。私も知らなかったが,「日本百名山」の名著を残した深田久弥氏は登山の途中に脳溢血で急逝したそうだ。「それでも人は山に登る」のはなぜか。この本はそれを語ってくれる。
この本を読んで,自分の単独行を振り返った。私は若いときから山が好きで,単独行も多くあった。若いときはアルプスや八が岳夜行日帰りなど,無茶をしたが,年とってからは低山が多くなった。それでも思い出深い単独行が多い。晩秋の陣馬山。登山道に積もった落ち葉をザックザックと踏みながら考えたことは忘れられない。浅間嶺(せんげんれい)縦走では思わぬグルメ発見。「紅葉ハイキング」の企画のため,下見に訪れた静寂な横谷峡など。一人歩きは自らを省みるよい機会であった。
仲間と行く山もいい。浅間嶺の2回目はSTFの仲間だった。そのような仲間も,自ら会を去る人もいたが,今回のリストラ(会費制)で辞めさせられた人も多い。とてもさみしい。その寂しさは新しい人,山に行かない人には分からないだろう。旅の仲間以上に,山の仲間は思い出が深い。