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無題
賀来治 投稿日:2020年07月15日 21:05 No.12
「ジョージ・フロイド氏の死をめぐるデモに寄せて」


そこに流れた血糊を
アスファルトは記憶しない
耳の穴からどくどくと血が流れた
アスファルトに後頭部を強打した白髪の老人
過去の幾多の経験から
彼は話し合えると思ったのだ
何人もの年若い警察官が物々しく武装して
老人の言葉に耳をかたむけない
そのとき
ひとりの警察官の手が老人を突き飛ばした
そこに流れた血糊を
アスファルトは記憶しない

そこに流れた血糊を
警察官の手は記憶しない
老人に刻まれた皺の悲しみと喜びを
警察官の手は知らない
制服に身を包まれた人間の心の眼がみひらき
そして深く怯えて閉じた
その手は俺の手じゃない
警察官の手だと呻きながら

閉ざされた心の眼だけが
そこに流された血糊を記憶している




「カエル」

わたしはカエルです
シュレーゲルアオガエルと呼ばれています
わたしはまた、カエルではありません
わたしは水です
わたしは水に浮かぶはっぱです




「のっぺりと・・・」

のっぺりとした顔でごあいさつ
にっこりわらい
あらどうも
のっぺりとしたことばが
すべっていき
あなたのむこうに落ちていく

のっぺりとしたことばは
誰のもとにもとどまらず
みんなの上をすべっていく
にっこりわらい
さようなら


「耳をすまして」

耳をすまして
遠くの声を聴いた
その声はずっと前から届いていたのかもしれない
わたしの胸にひびいているのは
たぶんその声
むかし聴いた雨音みたいに
今日の雨音みたいに
わたしの胸にひびいている声
そこかしこのうめき声
雨音の向こうで声なき声がうめいている
耳をすますといつでも聴こえる
そこにある
届かない声



「耳をふさいで」

わたしは耳をふさいで
うずくまった
なにも聞こえないように
ところが
ふさがれた耳に
不思議にしみいるおとがあった
ララララ
ルルル

わたしは耳をふさいで
さけびつづけた
なにも聞きたくなかったから
ところが
さけびごえを
不思議につきぬける
こどくがあった
ララララ
ルルル



「ことりがなく」

すみきった青ぞらに
風がふき
木々の葉がゆれる
ここは宇宙です

すみきった青ぞらに
風がふき
ことりがなく

ことりのなき声が
あおあおとした深みに
吸いこまれていく

わたしはその朝
ことりのなき声が
宇宙に吸いこまれていくのを
聴いたのでした

ここは
あおあおとした
風のふきぬけるところ




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