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7月記 K野 投稿日: 2020年08月03日 08:10:19 No.13 【返信】

今、私ができる最小単位の文学、日記という形式で掲示板に取り組みたいと思います。
ただ、日々を連ねるのではなく、月1のトピックを抜粋して。


7月下旬、奥さんと私、例の如く些細な言い争いから
「お互いを理解しようとする努力を怠っていないか?」という、
昨年からの私の常套句を彼女へと突きつけると、
過去15年間を振り返りながら、私がいかにいい加減な人間で、いかにいい加減な事を言ってきたのか、
という人間性否定へと話が転がり、その後、互いに罵詈雑言。
やがて、精魂尽き果てたところで、沈黙。
梅雨明け待ち遠しかった7月下旬、家の中に二人の話声はなく、
築55年の我が家を倒壊させるほどの激しい雨音だけ。

そして会話を交わすことなく数日、
確かに火種は抱えているものの怒りや悲しさが次第に沈静化しつつある中、
私が外出する際、玄関前ですれ違う際に横目で彼女を見るとシクシク泣いている。
「ああ、これ以上は限界だな」と感じた私は「‥‥何?」とぶっきらぼうに尋ねた。
「もうイヤだ‥‥」「‥‥何が?」「‥‥いろいろ、ある」
彼女の言い方に、争う事の虚しさ以外の何かを感じ取った私は、
腰を据えて話を聞くことに。


と、彼女の話を書く前に、まず二人の人物、A嬢とB嬢を紹介。


A嬢は40歳。職業、ヨガインストラクター。
6歳と10歳の娘がいて、高円寺のお店にも度々来ていて私とも面識有り。
特に、6歳の娘は私の事が大好きという間柄。
そして奥さんと私の共通の知り合いの中で、このA嬢が一番カワイイ。
さらに、驚くほど気配りができる人であり、表層的にはほぼ満点という人間。

ひとつ、A嬢がどれほど気配りできる人なのかというエピソードを。
私も高円寺の店にいた6月27日、A嬢と6歳の娘が来店。折しも6月27日は、私の誕生日。
その事を知らなかった二人は、プレゼントを持参しなかった事を後悔。
しかしそれから10日ほど経ったある日、A嬢と6歳の娘が誕生日ケーキを持参して私を祝福。
しかもこの行為を、こちらに何の打算を感じさせる事なく、
物凄くナチュラルにやってのける力量の持ち主。
その時は、6歳の娘が私にケーキを渡したいという建て付け方でしたが。

唯一の欠点は、旦那さんとの関係性があまり良好でないという点。


一方、B嬢。44歳。独身。彼女もまた、高円寺のお店に度々来ていて私とも面識有り。
「キルフェボン」というケーキ屋さんで20年以上働いており、現在はそこそこ偉い立場。
だいぶ内気な所もあるが、悪い人ではない。
来店して私と顔を合わせて話をする際、流暢に話す日と、たどたどしい日がある。
当初、この違いを不思議に思っていた私だったが、
店に来る前に酒をひっかけている時は流暢、そうでない時はたどたどしいと言うことが分かり、合点。
「キルフェボン」という職場の95%は女性で構成されていて、
また女子校育ちということもあり「時々会うレベル」の私の前では、
まだまだ彼女の言葉が自然なフローにならないのだな、と共感を持って接していた。

嬢二人、紹介は以上。

そして夫婦沈黙の最中のある夜、酔っぱらったB嬢から奥さんにビデオコールが掛かってきた。
B嬢は出張で仙台にいて、C嬢と一緒。(C嬢も奥さんと知り合い)
B嬢とC嬢はすでに酔っている状態で、そして主にB嬢の誘導だと思われるが、
「女と、そういう関係になったことがあるか?」という話の流れから、
奥さんに電話がかかってきた。C嬢が言う

「B嬢は、女の人とそういう事したことあるんだって」
「え!?」
「しかも、なっちゃん(奥さんの呼び名)の知ってる人だよ」
「‥‥誰?」
「‥‥A嬢」

奥さんからその話を聞かされた時、
私も本当に腹の底から「え‥‥」とだけ発せられる絶句状態。
(ちなみにB嬢のそういう要素は以前から感じ取っていたが)
そして奥さんは、夫婦喧嘩の生傷癒えぬままその話を聞かされ、
身近な二人がまさか、そういう関係にあることを知りひどく混乱していたのでした。

ただ私は絶句の後すぐに、A嬢の思い遣りに触れる度に感じていた小さな違和感の謎が解けたような気がしました。
それは、A嬢の思いやり、優しさの「深さ」は、背徳行為を経てこそ辿り着ける領域だと感じたからです。
夫と二人の娘がありながら、快楽に身を委ねてしまう自分及び、自分という「人間の愚かさ」を身をもって体験しているからこそ、
人間に優しく手を差し伸べる事ができるのではないかと思えたからです。




また、先月読んだ本に三島由紀夫『夏子の冒険』があります。
主人公の夏子は、自分の身の回りにいる男たちの退屈さに呆れてこう言います。

『ああ、誰のあとをついて行っても、愛のために命を賭けたり、
死の冒険を冒したりすることはないんだわ。
男の人たちは二言目には時代がわるいの社会がわるいのとこぼしているけれど、
自分の目の中に情熱をもたないことが、いちばん悪いことだとは気づいていない。‥‥』

今回のA嬢の行動はもちろん、特に幼い娘二人の立場から批判可能なのですが、
何もかも失ってしまうかもしれないリスクを抱えながら不貞へと邁進する姿に、
夏子のような“熱”をA嬢の中に見出してしまい、どこか彼女に敬意をも抱いてしまうのでした。

(ちなみに『夏子の冒険』の夏子は、元カノを熊に殺され、敵討ち(熊殺し)に燃える男に惚れて、
熊殺しの旅に夏子が同伴するという、たいへん愚かなトンデモ小説です。
ただ、愚かさと尊さは紙一重であることも、また実感することができた7月でした)


【余談】
B嬢はA嬢が「快楽」に辿り着く姿やその過程を見て「喜び」を感じたものの、
B嬢自身は行為の過程で「快楽」を見出せなかったとのこと。
旅行か何かで二人できりでホテルに泊まった際、冗談半分で戯れあっていた中「キスしてみようか」というB嬢の申し出及び行為により、
A嬢の情動が発動。B嬢は、女性同士じゃれ合う程度の事は今までにもたくさんあったが「ここまでの事」は生まれて初めてとの事。
それ故一人では抱えきれず、奥さんに吐露したと思われます。A嬢の経験値は不明。

こんな関係を続けていたら、友達皆で会う際に気まずくなってしまうのではないか、と、
B嬢はこの関係性の今後に関しては及び腰。一方A嬢は、B嬢へ連絡を続けるなどして、この関係を発展させたいような感じ。
旦那有り、娘二人有りの中、どこまで目の中に情熱を持ち続けられるのであろか。


【今回の話からずれてしまうので、保留にしてある問い】
夫婦喧嘩における「お互いの理解を行っていないか?」という問題提起の一因には、
彼女の抱いている「私の像」があまりにも陳腐で、しかしながらその陳腐な私はある種の真実にも関わらず、
そんな陳腐な自分を受け入れられない私の狭き心に起因しているかもしれない、という角度から検証可能だと思っています。


無題 賀来治 投稿日: 2020年07月15日 21:05:35 No.12 【返信】

「ジョージ・フロイド氏の死をめぐるデモに寄せて」


そこに流れた血糊を
アスファルトは記憶しない
耳の穴からどくどくと血が流れた
アスファルトに後頭部を強打した白髪の老人
過去の幾多の経験から
彼は話し合えると思ったのだ
何人もの年若い警察官が物々しく武装して
老人の言葉に耳をかたむけない
そのとき
ひとりの警察官の手が老人を突き飛ばした
そこに流れた血糊を
アスファルトは記憶しない

そこに流れた血糊を
警察官の手は記憶しない
老人に刻まれた皺の悲しみと喜びを
警察官の手は知らない
制服に身を包まれた人間の心の眼がみひらき
そして深く怯えて閉じた
その手は俺の手じゃない
警察官の手だと呻きながら

閉ざされた心の眼だけが
そこに流された血糊を記憶している




「カエル」

わたしはカエルです
シュレーゲルアオガエルと呼ばれています
わたしはまた、カエルではありません
わたしは水です
わたしは水に浮かぶはっぱです




「のっぺりと・・・」

のっぺりとした顔でごあいさつ
にっこりわらい
あらどうも
のっぺりとしたことばが
すべっていき
あなたのむこうに落ちていく

のっぺりとしたことばは
誰のもとにもとどまらず
みんなの上をすべっていく
にっこりわらい
さようなら


「耳をすまして」

耳をすまして
遠くの声を聴いた
その声はずっと前から届いていたのかもしれない
わたしの胸にひびいているのは
たぶんその声
むかし聴いた雨音みたいに
今日の雨音みたいに
わたしの胸にひびいている声
そこかしこのうめき声
雨音の向こうで声なき声がうめいている
耳をすますといつでも聴こえる
そこにある
届かない声



「耳をふさいで」

わたしは耳をふさいで
うずくまった
なにも聞こえないように
ところが
ふさがれた耳に
不思議にしみいるおとがあった
ララララ
ルルル

わたしは耳をふさいで
さけびつづけた
なにも聞きたくなかったから
ところが
さけびごえを
不思議につきぬける
こどくがあった
ララララ
ルルル



「ことりがなく」

すみきった青ぞらに
風がふき
木々の葉がゆれる
ここは宇宙です

すみきった青ぞらに
風がふき
ことりがなく

ことりのなき声が
あおあおとした深みに
吸いこまれていく

わたしはその朝
ことりのなき声が
宇宙に吸いこまれていくのを
聴いたのでした

ここは
あおあおとした
風のふきぬけるところ


「私のいのちについて語ろうか」 賀来治 投稿日: 2020年07月13日 21:06:56 No.11 【返信】

「私のいのちについて語ろうか」

私のいのちについて語ろうか
まだ、温かいいのちについて

それは太陽に灼かれて
かさかさした
いやされない乾き

置いていかれた子ども
叫び続けてかすれた声
忘れた母

それは私を通り抜けていった
たくさんのわたし

ノスタルジックな夕焼け
その美しさを
心の底に
押し隠せない

私を抱きよせる海
私は溶けて
もういないのだ

それは病気の都市の片隅で繰り返される
女たちの嘔吐
わたしはいつしか
その吐瀉物だった

崩れ落ちる死んだ人の顔
ゆきまどう心
魂とよばれるものが
見えないドアを探している

わたしはあなたのことば
その吹きだまり

それは裸足で家を出る祖母
いつまでも
安息の地にたどりつけない

わたしを抱きしめる子ども
そのうでのぬくみ

いつまでも
ゆきまどう心

あなたのやさしさ
降りそそぐ雨

不器用なことばでいつまでも
いのちについて語ろうか
まだ温かいいのちについて


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