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想像エクスポージャー
心理士 投稿日:2019年07月29日 10:37 No.828
矢野先生

お世話になっております。以前,介入プロトコルの一覧について質問させていただいた心理士です。

掲示板で質問させていただいても良いことなのか迷いましたが,質問させていただきたく思います。

想像エクスポージャーを行う際,文章を作って,それを読んでもらうエクスポージャーを計画しており,Clと文章を作成しておりますが,SUDが上がりません。

想像エクスポージャーのための文章を作成する際のコツのようなものを教えていただけないでしょうか?


矢野 投稿日:2019年07月29日 16:39 No.829
まず、現実エクスポージャーできないか再検討するのが必要でしょう。
現実場面に暴露するほうが、想像エクスポージャーより効果があります。

次に想像エクスポージャーがなんで、怖いのか?を知っている必要があります。
強迫症の認知的な特性として、「思考と行動の混同」があります。
強迫観念が浮かぶと、それが本当に起きるような気がする、事実のような気がするという感覚のことです。
この症状があるために、想像することが怖くなるのです。
ただ、この症状がない強迫症の方もいます。
その時は、想像エクスポージャーだけでは難しいいので、現実エクスポージャーを用いる必要があります。


心理士 投稿日:2019年07月30日 10:57 No.830
矢野先生

ご回答ありがとうございます。

現実エクスポージャーを検討したのですが,本症例はPTSDであり,現実場面ではなく,フラッシュバックに苦痛を感じている症例でした。情報が少なく申し訳ありません。

しかし,「強迫観念が浮かぶと,それが本当に起きるような気がする,事実のような気がするという感覚」は重要なヒントになりました。

ご教授していただき,ありがとうございました。


矢野 投稿日:2019年07月30日 12:23 No.831
PTSDだと話はかなり変わってきます。

まず、本当にPTSDの診断基準を満たすのかをチェックしてみて下さい。
http://www.amel-di.com/kyowa2/files/handbook/PTSD_handbook2.pdf
ここにDSM-5の診断基準があります。
特に基準Aに該当するトラウマであるか、基準Dに該当するようなPTSDに特有な認知があるかを見てみて下さい。

よくあるのが、恫喝などのパワハラ、いじめなどですが、これらでは暴行がなければPTSDの基準を満たさないことが多いです。また、基準Dがなければ、フラッシュバックがあるという症状と矛盾します。基準Dがあるので、フラッシュバックが継続することがほぼほぼです。

また、フラッシュバックが本当にPTSDであるかは慎重に吟味する必要があります。ときに、いじめの経験などから強迫症が発症する場合、強迫観念としていじめた人の顔が浮かぶ、強迫行為として反芻という目に見えない強迫行為を行っている場合があります。このような強迫症である場合は、PTSDとして治療すると失敗します。

PTSDの診断を確定させるための補佐的情報として、解離症状の程度を聞いておくとよいです。PTSDやトラウマの場合は何らかの形で解離症状が出ていることが多いです。特に、夢がリアルに見える、夢と現実が区別が薄くなる夢うつつ体験などはPTSDではほぼ必発します。

仮にPTSDの診断がついて、想像エクスポージャーでSUDが上がらない場合は、重症な解離が起こり、トラウマ記憶にアクセスできていないことが考えられるでしょう。もしくは、PTSDなどに満たないトラウマの場合や身体感覚のみがフラッシュバックしてくるようなタイプでは、SUDが上がらないことがあります。その場合は、個人的には通常のCBTでは難しいと思います。

ちなみにPTSDの想像エクスポージャーは、文章を作るのではなく、フラッシュバックしてくるトラウマ記憶を最初から最後まで何度も話してもらうというやり方をします。その際は、閉眼で語ってもらうという形です。さらに、SUDを下げるといういわゆる馴化ではなく、記憶の再構成が治療の中心になります。PTSDの人が、トラウマ体験を一つのストーリーとして話すことができ、自分がなにに苦しんだかを話せ、トラウマ体験によって生じた罪悪感から開放されたとき、PTSDの症状はほぼ消失します。なので、通常は想像エクスポージャーと認知再構成法をセットで行います。このあたりの、トラウマ焦点化した認知行動療法はいくつかあるので、できればこれらのどれかの研修を受けてからチャレンジするほうが良いと思います。ただ、シンプルなPTSDであれば、丁寧に傾聴すれば特に何もせずに良くなります。


心理士 投稿日:2019年08月03日 00:26 No.832
矢野先生

大変詳しいご返信をしていただき,ありがとうございます。
改めて診断基準を確認したところ,基準Aに関しては,暴力を伴うパワハラですが,生命の危険があるかと言われるとそこまで激しい暴力ではないという微妙なラインです。基準Dに関しては,1つは完全にあてはまり,もうひとつは微妙にあてはまるというラインでした。
IES-Rではカットオフ値を超え,PTSDが疑われるという結果になりました。

また,解離症状の程度についてのご教授はとても参考になりました。
DESなどの検査と聴取を合わせて行ってみたいと思います。

先生が教えてくださった介入法は,持続エクスポージャーのことですね。
研修に参加した後にチャレンジしたいと思います。
私にできる限りのことを行いたいので,丁寧に傾聴していく方針を取りたいと思います。


矢野 投稿日:2019年08月03日 02:03 No.833
PTSDの診断は、IES-Rではなく、総合的な臨床判断に基づいて行う必要があります。PTSDの判断は、ときに裁判が絡むと裁判の争点になってしまうので、慎重にして下さい。臨床上はPTSDとしてケースフォーミュレーションをしても、操作的診断上はPTSDにならないケースも非常に多いです。このあたりは、裁判資料など過去の判例などの知識が本当は必要です。ちなみにDSM-5が手元にあるのであれば、DSM-5の細則に、PTSDの臨床判断に関する細かな規定が書いてあります。特にトラウマのケースの場合は、裁判など法的な環境が整っていないためにセラピーが進まないことが特にあるので、このあたりはおさえておいた方がよいです。例えば、裁判中であれば、何をやっても症状が改善しないということもありえます。後は、職場に在籍し続けているのかなど、クライアントの環境的な問題で解離が継続しているためにSUDが上がらない場合もあります。

DESはぜひ取ってみて下さい。DESは、尺度の平均値だけではなく、Taxonも計算してみるとよいです。
https://www.isst-d.org/wp-content/uploads/2019/06/DES-Taxon-scorer.xlsx
にエクセルシートがあります。この表に数値を入れて、Probability of taxon given X の値が、そのクライアントさんが解離性障害である可能性を示すものです。ただ、これあんまり当てにならないので参考値です。。
https://ja.wikipedia.org/wiki/解離性障害
のDES Taxonの項目も参考にして下さい。

持続エクスポージャーのプロセッシングのことです。ただ、トラウマをちゃんとみている人は、トラウマの経験をしっかりと聞く中で、認知再構成法をすれば事足りるってみなさん言いますね。

ポイントとしては、「自分に責任がある」 → 暴力を行う方が悪いと心理教育をしつつ、この部分に認知再構成をするようにする。 「人が怖い」 → 怖い人もいるし、怖くない人もいる (人に馴れるという不安症への馴化とは違い、区別できるようになるという形でよくなる)
というところでしょうか。

この掲示板でもときどき、トラウマの悩みの相談が出てきていますが、トラウマの悩みを持つ方は、自分の苦しみが分かってもらえないという孤独の中にいます。傾聴することでも、十二分な介入だと思います。いい方向に向かうといいですね。


心理士 投稿日:2019年08月04日 00:38 No.834
矢野先生
臨床上はPTSDとしてCFしても操作的診断上はPTSDにならないケースが多いと聞いて安心しました。現場でこのように考えるのは自分だけなのではと心配していましたので…

ミニDが手元にあるので,PTSDの臨床判断に関する細かな規定を確認したいと思います。

DESのTaxonという値の存在を初めて知りました。また,Excelシートのご紹介もしていただきありがとうございます。

認知再構成法のポイントのご紹介もありがとうございます。
トラウマ体験を詳細に語ってもらう方針で介入を考えていたので,介入の方針を変更したいと思います。

自分の苦しみが分かってもらえないという孤独について面接中によく話題にあがります。

詳しくご教授していただき,本当にありがとうございました。




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