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特定の人に対する汚染恐怖
あき 投稿日:2021年02月07日 09:38 No.1379
はじめまして
強迫性障害15年です
特定の人に対する汚染恐怖があり(その人に何かされる、等の恐怖は無く、見ただけで汚染された気持ちになる、直接接触が1番怖い)
自分自身で勉強して現在暴露に取り組んでいます
今は 洗浄の簡素化に取り組んでいます
少しずつ綺麗と汚いが混ざってきている感覚はあります


今は その人を目に入れないよう(隣の隣の市にいるので確率は低いですが、万が一近くに来ていたら。との不安で)
人の顔を見るのを避けて回避生活しています

今は、なるべく人の顔は見ていませんが 横目に入ったりするのは避けられず
家に帰ると洗浄する。また家族がその人を見かけているかも、との不安から 家族が触った場所等を洗浄しています
この行為の簡素化に取り組んでいます

1番上は多分本人を見て、更には触れても
強迫行為をしないのが最終だとはわかっています

こちらで消極的な暴露では効果が出にくいと拝読し、自分なりの治療法に迷いが出ています

今は 受け身の汚れに対してが限界です
消極的な暴露をどんどんレベルを上げていけば積極的な暴露になりますか?(例えばたまたま人の顔を見てしまった際手洗いを止めるのができてから自ら人の顔を見て洗浄を止めるとか)
それとも今の簡素化は全く意味がないのでしょうか?

そして その人に直接遭遇する場合、探し出さないといけないので 難しい可能性があります

しかし 偶然遭遇する状況も無くはないので
その状況を想定して克服しておかないと、と思っています

私の知るところでは
・最悪のシナリオを描いて繰り返しテープ等で聞く
・人とすれ違った時に この人がその恐怖の対象の
人と仮定し恐怖感を自ら煽る

等があります
しかしなかなか 意図的な想像だけで恐怖感を上げるのが難しいのが現状です(意図的じゃ無い想像だとものすごく恐怖を感じるのですが)

やり方が何か違うのでしょうか?コツ等がありますか?
またその他に実際遭遇した時を想定した取り組みはありますか?


矢野 投稿日:2021年02月08日 03:27 No.1381
よく勉強をされて、とてもよく治療に取り組んでいらっしゃると思います。

強迫症を治療する目的は、生活上の制約を解消するためです。
人とすれ違う際に、「顔をみないように気をつける」というのは、生活に制約が出てきます。外出すると疲れます。また、家族がみているかもしれないという不安によって生活に支障が出ていると思います。この部分を解消するために、どういう治療をしたらよいか?と考えると良いと思います。

消極的な曝露のレベルをあげても、積極的な曝露にはなりません。ほんの少しでも良いので、積極的な曝露に挑戦するほうが良いです。

「強迫行為を我慢するだけ」だと、『強迫観念をコントロールして、強迫行為を止めようとする』という形になりやすいのです。そうすると、思考抑制という現象が起こってしまい、「がまん」をしているのに、「頭に強迫観念が浮かびやすい」という状況になります。
『これだけ我慢しているのに、なんで良くならないのか?』と思う場合に、曝露を見直したほうがいいという意味で、「消極的な曝露」と表現しています。
私の所に来る方で、すでに認知行動療法を受けられて改善していない方で、この「消極的な曝露」のみを治療課題として与えられている方はとても多いです。
曝露をすることで、強迫観念に耐えられるようになり、強迫行為を止められるようになります。しかし、曝露をしなければ、強迫観念に耐えられるようにはなりませんし、強迫行為を止められるようにはなりません。(強迫症がごくごく軽症であれば、このような対応でも改善は見込めますが、それは本当に少数の方です。)

私であれば、最終的には、その人の写真をみるとか、隣の隣の市を歩くとか、それくらいは曝露ですると思います。

『たまたま人の顔をみてしまった際に手洗いを止める』という対応がなぜいけないのかというと、①強迫観念がすでに出てしまっているので、強迫行為が止められない、②強迫観念がすでに出てしまい、強迫観念を無視する・コントロールしようとするという形になってしまう、③反復回数が少ない、④自分が心の準備をする前に課題が始まってしまう。
というところです。

強迫症とはどんな病気か?と言われると、「強迫行為が我慢できない病気」と説明します。これは、実際にそうですね。おそらく、嫌というほど、このことはわかっていらっしゃると思います。さらに言うなら、「強迫観念が無視できない病気」です。この課題だと、この最も苦手な所に挑戦しているのです。そして、③にあるようなことがなかなか慣れないという状態になります。そして、意外と大事なのが④です。通常、曝露は、自分でやると決めて取り組みます。その方が、心の準備ができていますし、曝露の開始の時点では強迫観念が浮かんでいません。ちょっと専門的なので、詳細は省きますが、曝露によって活性化する脳の部位(内側前頭前野)と、強迫観念が生じることによって活性化する脳の部位(扁桃体)は違います。

『自ら人の顔をみて洗浄行為を止める』というのは、自分でやろうとしているので、積極的な曝露として考えて良いです。そして、この際、反復が多いほど、強迫行為への衝動は止まっていきます。きっと、「自ら人の顔をみても大丈夫」ということを学んでいきます。これが制止学習の本質になります。

強迫行為の簡素化は、全く意味がないとは思いませんが、苦痛が多い割に実りが少ないです。

『意図的な想像だけでは、恐怖感を上げるのが難しい』と言うのは、おそらく、このような想像曝露を試していらっしゃるのだと思います。そして、『想像するのは、大丈夫』ということを学んでいるのです。経験的には、似たような症状の方は、『想像しては駄目、連想しては駄目』と進行していき、『顔を想像するのも苦しい』という状態になります。

『意図的じゃない想像だと恐怖を感じるけれど、意図的に思い出すと恐怖感が出現しない』というのは、ちゃんと曝露をしている証拠です。この体験からも、曝露と強迫観念が浮かぶ時は、違う現象が起きているとわかると思います。さらに曝露の強度をあげていくと、意図的じゃない想像でも、恐怖感が出にくくなります。これを制止学習による治験では、「曝露の記憶が、不安の記憶を制止する」と表現します。

また、想像曝露と現実場面の曝露では、現実場面の曝露の方が効果があります。そして、現実曝露の曝露がなければ、想像曝露だけではよくならないです。



制止学習による曝露は、予期の反駁だけではないのです。制止学習による知見を下記に列記します。botからの転載です。


制止学習による知見①:暴露によって生じるネガティブな出来事の頻度と強度の予測を行い。その予測が外れるまで暴露を継続する。暴露中に予測が外れることに驚くほどよい。 例:手を洗わないと100%、未知の病気にかかる。
制止学習による知見②:暴露をすることに耐えられるかどうかの予測もしておいたほうがよい。暴露は想像よりも耐えられることが多い。予想を超えて暴露に耐えられるという体験は自信に繋がる。
制止学習による知見③:様々な種類の刺激、様々な文脈で暴露をした方が、効率が良い。セラピスト、家族、友人がいるとき、いないとき等
制止学習による知見④:暴露課題は、難しいもの、簡単なものをランダムにした方が効率がよい。
制止学習による知見⑤:単一の暴露ではなく複数の暴露を一度に行ったほうが効果が高い。例えば、様々な汚染されていると思う物体をたくさん触り、その手で食事をする等。
制止学習による知見⑥:暴露中に何度も恐怖が高まることを経験したほうが、効果が高い。
制止学習による知見⑦:暴露の目的は、恐怖と不確定性への耐性を身につけることだと考えるほうがよい。
制止学習による知見⑧:暴露中に暴露している刺激・状況、今の感情を声に出したほうが効果が高まる。
制止学習による知見⑨:暴露中に、今の暴露が安全であるという安全信号(例えば、セラピストがいるから安全だという考え)をなくしたほうが効果が高い。
制止学習による知見⑩:暴露中に、手洗いなどの強迫行為、安心を保証してもらうような声掛けなどがないほうが暴露の効果が高い。
制止学習による知見⑪:恐怖刺激に直面した際に、暴露によって学んだことを思い出す方がよい。
制止学習による知見⑫:暴露は最初は毎日のように行い。後に、間をあけて行ったほうが効果が高い。
制止学習による知見⑬:暴露によって不安が減ると予想しないほうがいい。
制止学習による知見⑭:暴露は不安を減らす方法だと思わないほうがよい。
制止学習による知見⑮:暴露はセラピストと一緒に行う暴露や、カウンセリングルーム内で完結すると思わないほうが良い。実生活の様々な文脈での暴露の必要がある。
制止学習による知見⑯:不安階層表を苦痛が少ないものから、苦痛が高いものへと順番にすすめないほうがよい。
制止学習による知見⑰:暴露は単一の刺激の暴露が終わるまで複合的な刺激への暴露をしないほうがよい。
制止学習による知見⑱:不安を減らす方法として暴露を用いてはいけない。(暴露が強迫行為になります)
制止学習による知見⑲:暴露中は不安を下げるためのいかなる行動もとってはいけない。注意をそらしたり、自分で保証したりするべきではない。
制止学習による知見⑳:暴露中に不安が低減しなくても、失敗だと感じるべきではない。暴露は、不安に対する耐性を身につける方法だと考えたほうがよい。
制止学習による知見㉑:暴露中に強迫行為を行ったとしても、それが暴露の失敗だと思わないほうがよい。
制止学習による知見㉒:暴露の記憶を思い出して、安全だと保証するのはよくない。
制止学習による知見㉓:数日や数週間の強烈な暴露のみで治療が完結すると思わない方がよい。
制止学習による知見㉔:暴露は、クライアントのネガティブな予測が外れるまで継続したほうがよい。 例:手を洗わないと明日には病気になると予測する場合、明日まで暴露を継続する。
制止学習による知見㉕:暴露は精神的な耐性を身につける方法であると認識していたほうがよい

私であれば、次に挑戦するのであれば、インターネットなどで人の顔を検索して、たくさん見てみるか、ショッピングモールなどの人が沢山いるところで、集中的に人の顔をみてみるくらいは、提案するかと思います。




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