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新人世の「資本論」
雪谷旅人
投稿日:2024年01月05日 09:15
No.2049
斎藤幸平著「人新世の『資本論』」
(集英社,2020年9月刊)
お正月にちょっと堅い本を読んだ。人新世とは,人間の経済活動が地球を破壊する時代ということ。地球温暖化が進めば,人類が生き延びられないのは目に見えている。ではどうするか。著者は温暖化の原因は資本主義にあるという。エコバッグを使ったり,PETボトルの代わりにマイボトルを持ち歩く程度では温暖化を止めることはできない。
資本主義は利益優先で,成長しなければやっていけない。先進国の経済活動がブローバルサウスの資源を食い尽くし,新たな成長のために新たな資源を開発する。電気自動車の電池に使われるリチウムがその典型だ。(中国はウユニ塩湖の採掘権を獲得した。)このまま資本主義を継続しても格差は広がるばかりでごく少数の富裕族が栄えることになる。地球温暖化で住む場所が希少になり,ますます格差が生じる。
ではどうするのか。著者はカール・マルクスの著作の研究から晩年のマルクスの思想である「脱成長コミュニズム」しかないという。ソ連のような成長を伴う専制主義でなく,限られた資源をコモン(共同)で使う社会システムが必要。そのような「コモン」のグループが世界各国に現れており,希望がもてる。
著者の主張は正しいのだろう。でも,資本主義をどのように転回するのか,その道程は示されていない。資本主義が変わる兆しもなく,GAFAのような超大企業が支配する世界では,望みが持てない。戦争は無駄な資源を使い,多くの一酸化炭素を放出する。一体,どうすればいいのか。読み終わって無力感だけが残った。