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『惑星ソラリス』(タルコフスキー) ( No.43 )
日時: 2021年05月07日 01:02
名前: SSK [ 返信 ]
 聞いて分かるロシア語は多くはないけれど、"Человек"という言葉が印象に残る映画だった(書かれた文字も劇中に登場)
 人間の存在する意味とは何か、という重厚な問い。主人公クリスは、宇宙船の中で「海」が作り出した妻ハリの幻覚的な存在と一緒に生活するようになる。幻覚の彼女は主人公に対して愛情を見せるが、実際の彼女は自殺している。つまりこの幻覚は、彼女の幽霊ではなく、主人公の「こうありたかった」が形になったものなのだ。幻想の彼女と暮らすことは、自分の中に作り出した都合のいい過去だけを見て生きることを意味する。
 「愛とは何か」という問いも劇中で投げかけられていたが、この映画の中での愛は、自分の見たいもの、思い出したいものだけを対象に見る、というような不安定なものとして描かれる。鏡に映る、会話する2人の姿が印象的だ。幻想との会話に没頭している時、主人公は満たされているが、たまに幻想に溺れる自分を客観的に見ている。鏡に映った虚像を見るように。
[https://gyazo.com/e1aa57088a3cfb6f699635cbc0885f5e]
 最後、夢の中に母親が出てくるシーンも興味深い。夢の中で母親はハリと同じ姿で現れる。主人公はこんな感じのことを言う。「どんな顔だったか、あまり思い出せない」「母親」というのは、ここでは概念なのだ。それは幻想のハリと同一の存在ともいえる。自分を愛し、受け入れる(概念上の)存在。その点で、エヴァンゲリオンの綾波レイともちょっと似ている。


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Re: 『惑星ソラリス』(タルコフスキー) ( No.44 )
日時: 2021年05月07日 01:03
名前: SSK [ 返信 ]
 最後の俯瞰シーンはアンドレイルブリョフhttps://note.com/tdeiken/n/n94f43e33e62f
の冒頭の気球シーンにも似ている。人間がちっぽけに思えてくるような神の視点。
[https://gyazo.com/ee25a3f2fc93a5fd5a1c261c71f2cc7b]


 鏡といい俯瞰といい、この監督は、人間を外から(神の視点から)眺めようとしているフシがあるような気がしている。つまり、人間を「出る」ということ。でも出た先にあるのは、「海」のような茫漠とした風景なのだ。
 個人個人の頭の中に存在している概念・イメージは、空想、虚像として切り捨てられるべきものではない。私たちは自分自身というフィルターを通して物事を見ているわけなのだから、五感で感じたものも、想像が生み出したイメージも(その人の中では)同じくらい実在性を持っているんじゃないか。だから、「出る」だけではなくて、「入る」ことも忘れないようにしたい。自分の中に入ること、映画の中に入ること。


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